『小学館 全文全訳古語辞典』の巻頭「編者のことば」を読むと、この辞書が「全訳」を始めた元祖古語辞典のようです。「編集方針と特色」のページには、この辞書は高校生のための学習古語辞典と位置付けられているようです。

 

このような『小学館 全文全訳古語辞典』が、本当に高校生の学習にとって役立つのか、前回のブログを受けて、手元にある高校国語教科書「国語総合」(高1対象)と「古典B」(高2・3対象)に掲載されている古文教材を、『小学館 全文全訳古語辞典』がどのくらいカバーしているのかを調べてみました。

 

以下、『小学館 全文全訳古語辞典』が全文用例を掲載している古文教材には、行頭にを付けました。なお、和歌(短歌)・俳句については、「名歌鑑賞」「名句鑑賞」コーナーに掲載されているものは、同様にを付けました。

 

--ここから

教科書『国語総合』(第一学習社)の古文教材

 

 児のそら寝(宇治拾遺物語)

 絵仏師良秀(宇治拾遺物語)

 かぐや姫のおひたち(竹取物語)

かぐや姫の嘆き(竹取物語)

 芥川(伊勢物語)

 東下り(伊勢物語)

 筒井筒(伊勢物語

沖つ白波(大和物語)

 つれづれなるままに(徒然草)

 ある人、弓射ることを習ふに(徒然草)

 丹波に出雲といふ所あり(徒然草)

 花は盛りに(徒然草)

 九月二十日のころ(徒然草)

いみじき成敗(沙石集)

刑部卿敦兼の北の方(古今著聞集)

祭主三位輔親の侍(十訓抄)

門出(土佐日記)

亡児(土佐日記)

 帰京(土佐日記)

 祇園精舎(平家物語)

 木曽の最期(平家物語)

 岡本天皇の御製歌一種 舒明天皇(万葉集)

 額田王の歌 額田王(万葉集)

 軽皇子、安騎の野に宿らせる時に、柿本朝臣人麻呂が作る歌 柿本人麻呂(万葉集)

 子等を思ふ歌一首 山上憶良(万葉集)

反歌 巻五(万葉集)

 神亀元年甲子の冬十學五日、紀伊国に幸せる時に、山部宿禰赤人が作る歌 山部赤人(万葉集)

 二十五日に作る歌一首 大伴家持(万葉集)

 東歌 十四(万葉集)

 防人歌 巻二十(万葉集)

 春立ちける日よめる 紀貫之(古今和歌集)

 渚の院にて、桜を見てよめる 在原業平(古今和歌集)

 題知らず よみ人知らず(古今和歌集)

 秋立つ日よめる 藤原敏行(古今和歌集)

冬の歌とてよめる 源宗于(古今和歌集)

唐土にて月を見てよみける 阿倍仲麻呂(古今和歌集)

 題知らず 巻十二 恋歌二 小野小町(古今和歌集)

巻十六 哀傷歌 僧正遍昭(古今和歌集)

 百首歌奉りし時、春の歌 式子内親王(新古今和歌集)

 千五百番歌合に 藤原俊成女(新古今和歌集)

 ほととぎすの歌 藤原俊成(新古今和歌集)

 題知らず 寂蓮法師(新古今和歌集)

 題知らず 西行法師(新古今和歌集)

 西行法師、すすめて、百首歌よませはべりけるに 藤原定家(新古今和歌集)

 摂政太政大臣家歌合に、湖上の冬月 藤原家隆(新古今和歌集)

百首歌奉りし時、よめる 慈円(新古今和歌集)

 百首歌よみはべりけるに 藤原良経(新古今和歌集)

 旅立ち(奥の細道)

 平泉(奥の細道)

 立石寺(奥の細道)

 

教科書『精選 古典B』(大修館)の古文教材

検非違使忠明のこと(宇治拾遺物語)

大江山いくのの道(十訓抄)

 家居のつきづきしく(徒然草)

 応長のころ、伊勢の国より(徒然草)

 名を聞くより(徒然草)

 世に語り伝ふること(徒然草)

 今日はそのことをなさんと思へど(徒然草)

 行く河の流れ(方丈記)

 安元の大火(方丈記)

日野山の閑居(方丈記)

 かぐや姫の昇天(竹取物語)

 初冠(伊勢物語)

月やあらぬ(伊勢物語)

関守(伊勢物語)

つひにゆく道(伊勢物語)

 木の花は(枕草子)

 中納言参りたまひて(枕草子)

 二月つごもりごろに(枕草子)

 九月ばかり(枕草子)

雲林院の菩提講(大鏡)

 競べ弓(大鏡)

花山院の出家(大鏡)

 宇治川の先陣(平家物語)

能登殿最期(平家物語)

羽根(土佐日記)

白波(土佐日記)

あこがれ(更級日記)

源氏の五十余巻(更級日記)

 桐壺(源氏物語)

藤壺の入内(源氏物語)

 若紫(源氏物語)

 額田王(万葉集)

 大伯皇女(万葉集)

 大津皇子(万葉集)

 柿本人麻呂(万葉集)

 山部赤人(万葉集)

 大伴旅人(万葉集)

 山上憶良(万葉集)

 大伴家持(万葉集)

 東歌

 防人歌 玉造部広目

六歌仙 仮名序より(古今和歌集)

 貫之・躬恒(古今和歌集)

 後鳥羽院(新古今和歌集)

 西行法師(新古今和歌集)

 藤原定家(新古今和歌集)

 藤原良経(新古今和歌集)

 式子内親王(新古今和歌集)

梁塵秘抄

閑吟集

 芭蕉・蕪村・一茶

 

源義家、衣川にて安倍貞任と連歌のこと(古今著聞集)

馬盗人(今昔物語)

うれしきもの(枕草子)

 上にさぶらふ御猫は(枕草子)

頭の弁の、職に参りたまひて(枕草子)

 この草紙、目に見え心に思ふことを(枕草子)

をばすて(大和物語)

道真左遷(大鏡)

 三船の才(大鏡)

肝だめし(大鏡)

鶯宿梅(大鏡)

町の小路の女(蜻蛉日記)

薫る香に(和泉式部日記)

和泉式部と清少納言(紫式部日記)

葵(源氏物語)

須磨(源氏物語)

若菜上(源氏物語)

御法(源氏物語)

橋姫(源氏物語)

やまと歌(古今和歌集仮名序)

古今和歌集(真名)序

おもて歌(無名抄)

因果の花(風姿花伝)

不易と変化(三冊子)

師の説になづまざること(玉勝間)

大晦日は合はぬ算用(西鶴諸国ばなし)

夢応の鯉魚(雨月物語)

道行(曾根崎心中)

--ここまで

 

上記のとおり、『小学館 全文全訳古語辞典』の「教科書教材のカバー率」はなかなかのものでしたが、「古典B」の第Ⅱ部の作品になるとカバーされていない教科書教材が目立ちました。

 

もちろん、上記の結果は、手持ちの教科書について調べたことなので、他の出版社の教科書では異なった結果になるでしょう。

 

ただ、「国語総合」と「古典B」の教科書ガイドを揃えるだけで6千円を超えてしまうのに、さらに3千円近い古語辞典を買うとなると1万円近くかかってしまいます。

これでは、古典文学の研究者になりたいと考えている高校生でもないかぎり、教科書ガイドと古語辞典の両方を揃えようと考える高校生はいないのではないでしょうか。

 

以上から、私の個人的な結論としては、教科書ガイドを買って、日々の勉強の友とするのがよろしいか、と、思いました。もちろん高校生の学習を支援してくれる辞書を持つことは素晴らしいことだとも思います。