ぼくがコルト・パイソン2020の4.25インチモデルを手に入れたのは、べつに運命的な出来事があったからじゃない。ただ、なんとなくそういう流れになってしまったのだ。気づけば、ぼくの手元にはリボルバーがあり、ピカピカのステンレス鋼の輝きがぼくの部屋の照明を跳ね返していた。それを眺めながら、ぼくはミネラルウォーターをひと口飲んだ。なぜか、いつもより少しだけ硬質な味がする気がした。
「まあ、こういうのも悪くない」と思った。コルト・パイソンは古いタイプのリボルバーだ。今どきのオートマチックとは違い、シリンダーを手で回して装填する。その動作が、なんというか、異様に整然としている。完璧なメカニズムが目の前にあり、それが何の気負いもなく作動している。そのことに対して、ぼくはなんとなく静かな敬意を抱く。世の中には無駄なものがたくさんあるけれど、この銃に関して言えば、無駄なものは一切ない。ただ、必要なものだけがそこにある。そういうものは珍しい。
試しに撃ってみた。トリガーの感触は、驚くほど滑らかだった。まるで、長い間ぼくの手がそれを待ち望んでいたかのように、自然に指が動いた。そして、銃声が響いた。乾いた、理知的な音だった。どこかでビリー・ホリデイが歌っているような気がした。もちろん、そんなはずはないのだけれど、それでもぼくの脳のどこかで『Strange Fruit』が流れていた。「こういうこともあるんだな」と思った。
それからしばらく、ぼくはコルト・パイソンを机の上に置いたまま、その存在について考えた。そもそも、この銃はぼくに何を教えてくれるのだろう?銃というものは、それを持つ人間に何かしらの役割を与える。たぶん、ぼくはコルト・パイソンを通して、何かを探しているのかもしれない。それが何なのかは、まだわからない。でも、そういうものは時間とともにじわじわとわかってくるものだ。焦る必要はない。
夜が更けてきたので、ぼくは銃をケースに戻し、ランプのスイッチを消した。暗闇の中でぼくは思った。おそらく、ぼくはこの銃と長い時間を過ごすことになるだろう。そして、それは悪いことではない。