トイレ中に銃がホルスターごと落ちる瞬間の焦燥感

〜コンシールドキャリー男が油断した日〜


「ガチャッ」

……今、何か落ちた?

いや、明らかに重い音だった。

ズボンの中から、何かが、落ちた。

……あ、あれって……おれのコルトパイソンじゃない?

――これは、銃が“コンシールドキャリー状態で”トイレに落下したという
悲劇なのか、コントなのかわからないエピソードである。


■ 普通の日常、隠された相棒

私はアメリカ・アラバマ州に住む、銃火器メーカー勤務の男である。
偶に**コルトパイソンを腰に差し、コンシールドキャリー(隠し持ち)**で生活している。

シャツの裾でカバーし、目立たない薄型のIWB(インサイド・ウエストバンド)ホルスターに、あの重量級リボルバーを何とか詰め込む。
買い物も、仕事も、庭仕事も、すべての動きが“隠し銃ありき”で組み上がっている。

――そう、トイレに入る時以外は。


■ あの日、油断がドロップキックをかました

トイレで用を足そうと個室へ。
いつも通り、ベルトを外し、ズボンを少し下げる。

この瞬間、ホルスターも一緒に緩むのだが、私はこう思っていた。

「まぁ、内側に挟んでるから大丈夫っしょ」
「今日のパンツも生地しっかりしてるし」
「パイソンって、構造的に落ちてもセーフだし」

……甘かった。


■ 湿布もテーピングも関係ない、“重力の裏切り”

腰回りがゆるんだ瞬間だった。

ガチャッ!!

響き渡る金属音。
私は条件反射で下を見た。
そこには、ホルスターに入ったままのコルトパイソンが、
床で無言の主張をしていた。

「お前が俺を、信じなかったんだろ?」

まるでそんな声が聞こえた気がした。
フルラグバレルの重みが、心にのしかかる。


■ トイレの個室という“密室の裁判所”

銃が落ちる瞬間の音というのは、特別だ。
金属同士の衝突、乾いた響き、なにより**「バレたかもしれない」という焦り**。

隣の個室には誰かがいる。
その人は「コンッ…ガチャッ…」という音を聞いている。
そして今、自分の足元には――

床に横たわる、6連発のステンレス製恥さらし。

最悪である。


■ 気づかれたら最後、“通報”される恐怖

コンシールドキャリーとは、「見せない」ことが前提だ。
州法で合法でも、公共の場でパイソンを床に落とした音がしたら終わりである。

今、この個室を出たタイミングで誰かに見られたら――

「この人、便器の前で銃出してました」

と言われる可能性がある。
※いや、正確には「落ちた」んだけど、その差を説明する余地はない。


■ 静かに拾うという“人生最も緊張する3秒間”

音を立てないように腰を屈め、
ゆっくりとホルスターごと愛しのコルトパイソンを手に取る。

  • ハンマー:下がってる、OK

  • シリンダー:閉じてる、OK

  • トリガー:触れてない、OK

  • ダメージ:精神に極大

そして最後に気づく。

パンツ……下がってる。

尊厳という名の銃口が、自分に向いていた。


■ 落ちたのは銃か、信頼か

この一件を同僚に話したところ、彼は苦笑いしてこう言った。

「あー、俺も一回やったわ。
 パイソン落としたら床に凹みできてな、上司にバレた」

全国にいる。同志たちが。


■ 対策?もちろんある。だが、守らない

この事件の後、私はネットで「concealed carry bathroom drop revolver」で検索した。
ヒットしたのは**“リボルバー使用者の嘆き”**と、山ほどの対策。

  • ホルスターを一時的に太ももに固定する

  • ズボンを足首あたりで折りたたんで銃が落ちないようにする

  • 膝の上にそっと置く(ただしうっかり蹴り飛ばすリスクあり)

  • そもそもトイレでは外す勇気

……うん。全部わかってる。
でも結局、「落ちたときしか学ばない」のが人間という生き物だ。


■ 結論:銃は落としても、信用を落とすな

コルトパイソンは美しい。
重く、力強く、そして落ちた時に一番響く銃でもある。
音もショックも大きい。でも、一番痛いのは――

「自分の油断」への後悔である。


次から私は、トイレに入る前に心の中でこう誓う。

「今日は落とすなよ、俺」
「パンツを下げても、お前(コルトパイソン)は下げるな」