耳栓つけてるのにずっと話しかけてくるおじさん

〜その声、もはや銃声より貫通力がある〜


銃の世界には、いろんな種類の「音」がある。
バン!ドン!パァン!という銃声。
ジャキン!という装填音。
チキ…というトリガーのクリック音。
そして、忘れちゃいけない――

「兄ちゃん、それ9mm?ほら、俺の.45ACPのがパンチあるでしょ?」

……**“耳栓貫通型おじさんボイス”**である。


■ 射撃場にて、私の耳に忍び寄る“違う音”

この話は、ある晴れた土曜日の昼下がりに始まる。

私はいつも通り、愛用の1911を持って地元の屋外シューティングレンジへ。
アラバマ州の乾いた空気と陽気な鳥の鳴き声の中、
耳栓とイヤマフを重ねる“二段防御スタイル”で準備を整えた。

ちなみにこの日はレビュー撮影も兼ねていて、真剣勝負の気持ちで臨んでいた。

防音対策:完璧
集中力:最高潮
気合い:MAX

……だったのに。

「兄ちゃん、それ9mmか?」

来た。


■ まず、なぜ“耳栓を無視する”という選択肢が生まれるのか?

このおじさん、なぜか**“こっちの耳栓が見えてない”ふり**をするプロである。

イヤマフを上げる素振りを見せない私に対し、
彼は顔を近づけてくる。
めっちゃ近い。
銃のゼロインより正確に“私の鼓膜”を狙って話しかけてくる。

そして言うのだ。

「あのさぁ、これ弾道どこで落ちる?俺ちょっと上に外すんだよね〜」

いや、知らんがな。
ていうか、見えてるやろ、私イヤマフ二重やぞ。
フル装備やぞ。見てわかるやろ?


■ 人はなぜ、耳栓をしてる相手に喋りかけるのか?

私は静かに首を傾けた。
「え?」のポーズである。

すると彼は、さらに声量を上げてくる

「これ9mmやろ⁉ ワシの.357と比べたらそら、リコイルちゃうわな!」

いや、だから聞こえてへんねんて。
なんなら聞こえたら困るねんて。

こちとら、YouTubeで撮影中やぞ。
マイクがその大声拾ったらNGになるんやぞ!


■ 貫通力:.45ACP<おじさんの声

ここで一度、科学的検証をしてみよう。

  • .45ACPの銃声:140〜160dB

  • 耳栓:-30dB

  • イヤマフ:さらに-25dB

  • 合計:-55dB防御

そして――

  • おじさんの声:たぶん180dB(体感)

もうね、空気が震えてるの。
鳥も逃げるの。
反動じゃなくて、“発声の圧”でスライド戻してる説ある。


■ 質問攻撃が止まらない!止めてくれ誰か

おじさんの声が空を切る。

「君、なんのグリップ使ってる?」
「セフティはアンビタイプ? ほら、昔は片方だけだったんだよ」
「あれ?そのホルスター、ドンヒューム?ガルコ?見せてよ」
「これYouTube用?俺も映ってええかな?」

撃たせて。

せめて、1マガジンくらいは撃たせて。
まだ最初の4発しか撃ってないのに、口撃で弾かれてる。


■ “返事を返すと会話が終わらない”トラップ

で、こっちが1回でもイヤマフ外して「はい…」とか言っちゃうと、

「おっ、ええな!じゃあさ、昔の話してええ?」

この「じゃあさ」が地獄の始まり。
10秒で終わると思った会話が、なぜか40分コースになる。

しかもおじさん、話がまわり道すぎてすぐ迷子になる。

  • 射撃の話 → ベトナム戦争の親戚の話 → 狩猟免許 → 近所の犬

  • そして最終的に「昔のマクドナルドのバーガーの味」にたどり着く

もう、1911より重い話を撃ち込んでくるな。


■ 他の射手たちも苦笑い

別のベンチで撃ってた青年(多分大学生)と目が合う。
お互いにイヤマフ越しの“無言の同情”を交わす。

まるでこう言っている。

「あ、そっち行った? ご愁傷さまっす…」
「昨日もいたんすよ…そのおじさん」

どうやら、このおじさんはレンジの常連らしい。
そして、誰彼かまわず話しかけては**“耳栓無視トーク”をぶちかましてる**のだ。


■ 撃つには撃てる。でも“声”が頭から離れない

やっと話が終わり、おじさんが次のターゲットに向かった隙を見て、私はようやく射撃再開。

だが――

「これ、9mmか?」(回想)
「俺の.357のがパンチあるやろ」(回想)
「ほら構えが甘いねん」(回想)

脳内リフレイン。
銃声よりも、おじさんの言葉が頭にこびりついている。


■ 結論:耳栓では防げないものがある

レンジでは防弾、防音、防寒などいろんな“防御”が必要だ。
だが忘れてはいけない。

“おじさんの会話”は、防げない。
耳栓をしても、イヤマフを重ねても、心に直接響く。

なぜなら彼は――

「伝えたい」んじゃない。
「聞かせたい」のだ。


■ 対策は?ない。ただ、受け入れるのみ。

  • イヤマフの上から「今、無理です」ジェスチャーを送っても効果薄

  • 撃ち続けても後ろで腕組んで待機してる

  • 「用事があるので」と席を立つと、一緒についてくる(!)

つまり、**“会話が着弾するまで帰らないミサイル”**である。


■ まとめ:あなたの耳に届いたら、もう終わり

結局、その日は予定の動画が半分も撮れずに終了。
銃声よりも、おじさんの“講演会”で体力を使い果たした。

帰り道、助手席の銃が言っている気がした。

「俺よりうるせぇやつ、久しぶりだったな…」