グリップテープ貼り替えすぎて家族にバレた男の悲劇

〜その手に残るのは“ザラザラした後悔”だった〜

この物語は、ある一人の男と、無数のグリップテープと、家族の静かな怒りの記録である。誰も悪くはなかった。ただ、彼の手が少しだけ滑りやすかっただけなのだ──たった、それだけのことだったのに。

「もうちょっと、貼った方が……」
最初の異変に気づいたのは、本人ではなく妻だった。

「最近なんか、洗濯機に黒い粉がよく落ちてるのよね……」
それは、グリップテープのカスだった。男は最初、シラを切った。

「たぶん…外の砂かな?」
「うちの庭、アスファルトなんですけど?」

詰んだ。

しかし彼の心の中にはこうした葛藤が渦巻いていた。

“いや、だって…この前貼ったスケートボード用のグリップテープ、ちょっとザラつきが足りなかったし…”
“ハンドガンとライフルでザラつきの好みが違うのは当たり前じゃん…”
“しかもあの新作のハニカム柄、親指の引っかかりが絶妙なんだよな…”

やめられなかった。彼は“グリップ”を握りすぎて、“人生”を滑らせることになる。


家族会議 with グリップ痕

ある晩、テーブルに家族が集められた。

テーブルの上には、拳銃…ではなく、なぜか無数の空になったグリップテープのパッケージがずらりと並んでいた。Amazonの箱も含めると、軽くピラミッドができる量だ。

「これ、なに?」

妻は無表情だった。表情筋すら滑らせない。

「……え、あー、それは、その……整備用?予備用?」

沈黙。

「一丁に何枚貼るつもりなの?」

「い、いや、その、ほら、乾いたらダメになるから予備で──」

長男(小学生)がボソッとつぶやく。
「お父さん、銃よりテープのほうが多くね?」

詰んだ(2回目)。


実際どこに貼ってるのか問題

彼はグリップ部分だけでは飽き足らず、マガジンの底、フレーム前方、スライド上部、ホルスター内面、トリガーガード、時には携帯電話の裏にまで貼っていた。

「これは“親指を鍛える”ためだ!」

という謎理論を持ち出してまで貼る。だがある日、彼はついにやらかした。

風呂場の床に貼っていたのだ。

妻がそれを発見し、文字通り滑って転んで大激怒。
「お風呂は銃じゃないのよ!!!」

当然である。


テープへの愛は隠せない

彼は隠し場所を変えた。ベッド下、工具箱の中、靴の中、果てはアメリカ式のフードストレージコンテナの中にグリップテープを入れていた。

「フードストレージコンテナの中がザラザラするんだけど!?」

もう言い訳も限界だった。彼はついに、夜な夜な車の中で静かに貼り替えるようになった。

コンビニの駐車場でグリップテープを貼りながらうっとりする姿は、完全に通報一歩手前。


そして、あの事件が起きた

ある夜。妻が深夜に目を覚ますと、夫の姿がない。探し回った末、ガレージから明かりが漏れていた。

ガチャ。

そこには、20丁以上のハンドガンを並べ、全機種に貼り替えを行う男の姿が──。

「……なにやってるの?」

「いや、これ…今日湿気が多くて……ほら、今なら貼り替えのタイミングで……」
「それ、4日前にも言ってたよね?」

詰んだ(3回目)。


家族が出した最終通告

後日、彼の机の上に一枚の紙が置かれていた。

『月間グリップテープ使用量制限について』

  • 月に使用できるテープは3枚まで(新品2、予備1)

  • 風呂場・台所・冷蔵庫・猫に貼るのは厳禁

  • 不正使用が発覚した場合、テープは妻により“人差し指で引き裂かれる刑”に処される

彼は、静かにうなずいた。
「はい、了解しました……」


男はまだ、滑り続ける

あれから半年。彼は地味に家具用の滑り止めシートを使い始めている。

「これはあくまで、家具用だから…ね?」

彼の右手には、依然としてザラザラしたタコができている。

今日もまた、会社で撃ち、帰宅して貼り、夜中に家族に見つかり、
静かにゴミ袋に詰められたテープの山を見送る。

彼の人生は、すべてがザラザラしていた。


終わりに:グリップとは、愛である

グリップテープ。それは滑り止めであると同時に、男たちの**「執着の象徴」**でもある。

どこまでが実用で、どこからが趣味なのか。誰にもその線引きはできない。

だが、ひとつだけ確かなことがある。

家族の目から、貼り替えの痕跡を隠しきるのは、無理だ。