負けられない戦いはここにもある

負けられない戦いはここにもある ~布団の攻防戦~

冬。
それは人類にとって最も過酷な季節である。

氷点下の外気、吐けば白い息、そして布団の温もり。
そう、布団はただの寝具ではない。生命線なのだ。

この「布団」をめぐって、我が家では毎晩、血で血を洗う熾烈な戦争が勃発していた。
人はそれをこう呼ぶ。

**「布団の取り合い戦争」**と。


開戦

小学校の頃、我が家は川の字スタイルで寝ていた。
右に母、真ん中に親父、そして左に僕。
布団は大きな一枚。まさに「運命共同体」だ。

しかし、問題があった。
親父の寝相が、もはや災害レベル。

夜9時に寝ると、10時には布団が親父の陣地に90%侵略される。
12時を過ぎる頃には、僕はほぼ布団ゼロ。
朝4時、気がつくと母は戦死(丸まってる)、僕は凍死寸前。
唯一ぬくぬくしてるのは親父ただ一人。

これが毎晩続いた。
僕にとっては「命をかけた負けられない戦い」だったのだ。


僕の戦術

小学3年の冬、ついに僕は決意した。

「今夜こそ布団を死守する!」

まず布団の端っこをギュッと握る。
さらに足でも挟む。
完璧。

……のはずだった。

深夜2時。
ゴソゴソ……ズズズ……。

親父の寝返り。
その瞬間、布団は音もなくスライドしていく。

僕「うわああああっ!」
気づけば、布団ごと僕の体がズルズル親父側へ移動。
もはや戦車に引きずられる歩兵の気分。

そして、気づけば布団は100%親父のものに。
僕は冷凍マグロ状態で震えながら夜明けを待つのだった。


反撃作戦

だが僕は諦めなかった。
次の日、秘密兵器を用意した。

**「布団クリップ作戦」**である。

洗濯バサミで布団と自分のパジャマを固定。
これなら布団を取られても僕ごと移動するので、暖かさは死守できるはず!

深夜1時。
親父がゴロン。布団がズルズル。
僕も一緒にズルズル。

結果――親父の脇腹にめり込む形で固定。
親父「ぐえっ!」
寝言で苦しみながらも布団は離さない。

僕も苦しい。
布団は守れたけど、呼吸ができない。
親父の腹の肉に顔が埋まって窒息寸前。

負けられない戦いのはずが、命を落とすところだった。


母の乱入

そして、戦争はついに母も巻き込む三つ巴へと発展した。

母「ちょっと!あんたら!布団取りすぎや!」

そう言いながら母も布団を引っ張る。
親父「ワシのや!」
僕「返せ!」

ズズズ……ビリッ!

布団の端が破けた。
中から羽毛がブワァッと舞い上がる。

部屋の中、まるで真冬に雪が降ったかのよう。
親父「雪景色や……」
母「うるさいわ!」

僕は笑うどころか鼻に羽毛が入って窒息。
戦争はますます泥沼化していった。


終戦

ある朝、僕はついに風邪をひいた。
原因はもちろん「布団戦争」での敗北。

布団を独占した親父に向かって僕は言った。

「親父……お前が勝者や……」

すると親父は誇らしげにこう答えた。

「勝負の世界は厳しいんや」

いや、家庭内でドヤ顔すんな。
これスポーツじゃないんだよ。

結局、母が怒ってもう一枚布団を買ってきて、戦争は終わった。


教訓

布団の取り合い戦争で僕が学んだことは一つ。

「親父に勝とうとするな」

親父はロケットを作って爆発させるような男だ。
布団ごときで勝てるはずがない。

ただ、こうも思う。
あの戦いがあったからこそ、僕の人生の免疫力は鍛えられた。
寒さにも、理不尽にも、そして笑いにも強くなれた。

負けられない戦いは確かにここにあった。
でも負けてもいい。
笑えれば、それで勝ちだ。

 

 

 

 

 

同じネタで投稿する

 

他の投稿ネタを確認する