ヨーロッパは勉強するのが、世界で1番難しい地域である。歴史が長く、国境も時代ごとにコロコロ変わるため、一気通貫で社会構造の特徴やエスニシティーを把握することが困難であるからだ。本書のようにタームポイントごとに歴史を縦横に切ってアプローチすることでヨーロッパの全容を理解しようとする試みは、挑戦的であるがかなり有効であると考える。

ヨーロッパの歴史は、覇権主義的なコミュニティによる侵略の連続である。ローマ帝国は今では信じられない国土を有した。十字軍進行の際にはキリスト教が侵略の大義を果たした。この流れはフランス革命で途切れるかと思ったが、その後ナポレオンが拡大主義を全面に押し出した。また、産業革命後の英国ではアングロサクソンの爪痕を世界各地に残した。他ヨーロッパ諸国も、中世以降世界各地を植民地とし経済的利益、物質的豊かさを享受した。

そのような歴史を考えると、現在EUという経済共同体の下で欧州からSDGsなどの啓蒙活動の発信源、先駆的地域となっていることはかなりの大転換であるように見える。200年前は人権意識など皆無の政策を行なっていた欧州各国であるが、現在は人権意識の低い他国を激しく非難する。このことが、人類の発展に寄与していくのか、また200年後には今のことなど忘れ新たな国土争いが始まっているのかはまだわからない。