本書は数名の学者の寄稿をまとめたものであるが、音頭を取っているジャレド・ダイヤモンドは私が尊敬する人類学者の1人である。本書は、実験が難しい歴史学をいかに実証実験に近い形で検証できるかを考えるものである。

例えば隣の地区同士であるA小学校とB小学校で、長年大きな成績の差が続いている場合、何か要因があるのではと考えるのが普通である。隣り合う地区であるが世帯収入に大きな差がある、各小学校の教育理念の違いが生徒の成績に反映される、教室の広さが勉強する時の精神に影響してる可能性、などなど検証できる側面は色々ある。歴史学における実験の際には、これを隣同士の国、あるいは同じ民族の国同士、あるいは同じ地域の別の時代での比較などで考える。

難しいのは、比較するコミュニティが大きいほど、違いに影響すると考えられる要因が増えることだ。加えて、残存するデータや資料が正しいことが前提となるため、不正確性のリスクは常につきまとう。

本書の序盤でもある通り、現在では生物学などでも倫理的な理由で実証実験が難しい分野はある。そういった実験の難しい学問で如何に科学に近づくことができるか考えることが、今後の学問全体の発展に寄与していくことになるのかもしれない。