以前、英語(などの外国語)を流暢に操る日本人女性が〝バイリンギャル〟と呼ばれ持て囃された時期がありましたが・・・おそらくその元祖といえるのが
山口 美江 さん
ではなかったでしょうか。
今日は彼女の命日、早いもので十三回忌にあたります。
山口さんは1960(昭和35)年に横浜市で生まれました。
インターナショナル・スクールから上智大学外国語学部に進学し、卒業後は外資系化粧品メーカーのマーケティング担当や、映画会社の社長秘書などを経て、通訳の仕事に従事。
そして祖父がドイツ人だったという彼女は、その美貌と語学力を買われて、テレビ朝日 『CNNヘッドライン』 のキャスターに抜擢されマスメディアの世界に登場しますが、何と言っても彼女を一躍有名にしたのは、漬物のCM。(↓)
「しば漬け食べたい。」
という名(迷?)セリフでお茶の間の人気を得た彼女は、『FNN NEWSCOM』、『たけしのここだけの話』、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』 など多くのテレビ番組に出演。
全くの素人なのに、役者としてドラマに出演するほどの人気ぶり。
しかしそんな彼女の全盛期は長くは続きませんでした。
恋愛問題がこじれたからか、彼女は過食症で激太りしたかと思うと、今度は拒食症に陥るなど精神的に不安定になり、自殺未遂騒動も起こしてしまいます。
異常なほどの潔癖症で几帳面な性格だったという彼女には、芸能界の水は合わなかったのかもしれません。
そして1996年には芸能界を引退し、地元・横浜の中華街に輸入雑貨店を開店。
そんな彼女にもうひとつの不幸が襲います。
それは、父親のアルツハイマー症。
16歳の時に母親を亡くした彼女は懸命に介護したのですが、シャツの袖に足を通そうとしたり夜中に徘徊を繰り返すなど症状は悪化。
無理が祟って、彼女自身も体調不良に悩まされたとか。
そして2006年に父親が亡くなった後は、自らの介護体験を元に講演活動をされていたそうですが・・・2012(平成24)年3月8日、1人住まいの自宅で倒れているのが発見されたのです。
死後1日経過していた、いわゆる孤独死でした。
亡くなる少し前にテレビで久々に彼女の姿を見た時その変わり様に驚いた記憶がありますが、当時彼女は肝臓を始め健康状態に不安を抱えていたとか。
父親の介護を巡って近所に住む親戚とは確執が生じ殆ど交流がなかった彼女は、普段から独居状態に不安を抱えていたといいます。
大手スーパーには行かずにわざわざ商店街で買い物をし、「3日来なかったら、気にして・・・」と店の人に声をかけていたそうですが、結局は連絡が取れなくなったことを気にした親族が自宅を訪問・発見することに。
遺体のそばには、可愛がっていたペットの犬2匹が心配そうに寄り添っていたとか。
かつて芸能界で華やかに活躍した彼女にしては、あまりに寂しい最期でした。
彼女の人生を振り返ると、高齢化、晩婚・非婚化、孤独化を深める現代社会の行く末を象徴しているような・・・。
そして孤独死は決して7,80歳代になってからの話ではない、ということをも物語っています。
人間らしい最期を迎えるには、どうすればいいのか?
彼女の冥福を祈りつつ、あらためて考える必要がありそうです。