意気揚々と帰社して課長に報告すると、何とも素っ気ない言葉が返ってきました。
「いつ成果が出るか分からん仕事に、あまり首を突っ込むなョ。
そんなことより、今月の数字どうするか・・・そっちをちゃんとやってくれなきゃ困るな。」
まぁ、普段から勝手に動き回る生意気社員だったゆえ、この冷淡な反応は予想してはいましたが。
「は~い、分かりましたァ。」
と生返事したものの、頭の中はもうN社のことでいっぱい。
(意地でも課長の力なんか借りるか!)
そう決心した私は、それからは信頼していた先輩の主任にアドバイスをいただきながら、自分なりに考えた営業活動を開始。
日常業務の合間を縫って、N社の社長やS常務をホテルの日本法人オフィスや自社の担当窓口に連れ回しました。
時には地下10m以上掘り下げられた建設現場に出向き、その上に渡された幅の狭いベニア板の上を怖々渡って事務所に辿り着き、工事長にN社々長を紹介したり・・・とにかく我武者羅に動き回りました。
もちろんN社側も私と情報交換しながら、積極的に営業活動を展開。
そんな、ある時・・・ホテル側に対するプレゼンに赴く途中の電車内で、同行するS常務が話しかけてこられました。
「渡辺さん、前から思ってたんだけど・・・キミだって他に
やらなきゃいけないことが沢山あるだろう?
頻繁にウチの会社に来てくれるけど、それは他の仕事の
ついでに寄ってくれてるんだょネ?」
今にして思えば、それは私のことを心配してくれての言葉だったのですが・・・当時はそんな心遣いなど汲み取れないヒヨッ子。
「何を言ってるんですか、S常務。
私にとって御社の仕事は最優先ですから!
何かのついでに立ち寄るなんて失礼なことは、絶対にしない
です!」
ムキになって思わず大声を上げてしまい、驚いた乗客の視線を一斉に浴びる始末。
「そうか、そうか。 いや、申し訳ない。
気にかけてくれてありがとう。」
なんてS常務に言わせてしまう一幕も。
そんなこんなで、私としては (これはイケる!) と、ホテル側から好感触を得ながら売り込み活動に勤しんでいた中・・・飛び込みでN社を訪問してから半年程経ったある日のこと。
「渡辺さ~ん、3番に〇〇さんって方から、電話ョ。」
取り次いでくれた女子社員の口から出た名前は、ホテル日本法人の担当者。
遂に〝運命の電話〟がかかって来たのです。
・・・To be continued!