パンチ <下> | ナベちゃんの徒然草

ナベちゃんの徒然草

還暦を過ぎ、新たな人生を模索中・・・。

「今なんて言った、てめェ。」

 

まるで 『ビーバップ・ハイスクール』 から抜け出てきたような若いあんちゃんは、そうイキがって私にガンを飛ばします。

 

私は、「オレじゃねえョ、隣の親分だ。」・・・と喉まで出掛かりましたが、さすがにそれは出来ません。

張本人のN社長は相変わらず知らんぷりだし。

 

さりとてプロ相手に 「なんだ、てめェ」 とケンカ売ることもできず、また自分が言ったわけじゃないから謝りたくもなし・・・仕方なくジィ~ッと睨み返すだけ。

 

目を逸らしたらやられると思い、必死にガンを飛ばしつつ膠着状態が5秒・・・10秒・・・と、何故かあんちゃんは 「ふざけやがって」 と呟くように捨て台詞を吐いて、階段を上がっていきました。

 

彼の体格はN社長と同じくらい小柄でしたから、大柄な私相手では不利だと思ったんでしょうか・・・とにかくガンの飛ばし合いだけで事は穏便(?)に済みました。 

 

そしたらN社長、カウンターに向かって

「マスター、悪かったな。」 

 

と一言・・・って、もしもし、謝る相手を間違ってませんか!怒

 

     ウォームハート 葬儀屋ナベちゃんの徒然草-ウィスキー

 

するとその直後、階段の上から〝ドカンッ、ガラガラ・・・〟という物騒な物音が。

 

(一体、何の音だ?) と思った瞬間、今度はマスターが

 

「あの野郎、看板蹴りやがったな!」

 

と血相を変えて飛び出していくではありませんか。

 

(あちゃ~、今度はプロ同士だョ・・・ヤバくない?)

 

私は他人事ながら心配したんですが、カウンターにいたマスターの奥さんは、

「ったく、相変わらず血の気多いんだから。」

と、悠然とタバコをくゆらせたまま。

さすが極道の妻たち・・・ハラが座っていらっしゃいます。

 

階段の上からは、「てめェ、○×▼◇※・・・・!」 という怒鳴り声が聞こえてきましたが、1,2分程して顔を紅潮させたマスターが戻ってきました。

 

「ったく、最近の若けぇモンは、躾がなってねぇんだョ。」

 

そう言って、水割りをイッキ飲み。

 

で何があったかは怖くて聞けませんでしたが、その後も〝本物〟夫妻は何事もなかったように我々と談笑。

 

小一時間後 「じゃ、また来るワ、」 と席を立ったN社長に、

 

「おう、ありがとなァNちゃん。
それからナペちゃんよォ、何か困った事があったらいつでも相談に来いヤ。 力になるぜェ。」

 

と言いつつ、私の顔を見てニヤリとしたマスターに、思わずゾクッ。

店を出ると置いてあった看板の電気は消え、片側には大きな穴が。
そしてそのそばには血痕がポタポタと数滴・・・。😱

私と睨み合っただけで手を出せなかったウサを看板にぶつけたら、逆にボコられた・・・ってところでしょうか?

 

帰りのタクシーの中で、「やっぱり本物は迫力が違いますねぇ~。」 と妙に感心して話しかけると、N社長は

 

「いやァ、どうなるかと思ってしらばっくれてたけど、ナベもしっかり本物相手に張り合ってたじゃねぇか。 立派なもんョ。」

 

「じょ、冗談じゃないっすょ。
あんな思いはもう二度とご免ですって。

だいたいあの店、パンチパーマご用達じゃないですか。

私は七・三分けなんですから、もう連れてこないでくださいョ!」

 

そしたら、N社長・・・たった一言。

 

「いや、暗い所ならパンチに見えるって。」

えっ、じゃあさっきのあんちゃん、もしかして私を同業者だと勘違いした? というか、そもそもあの店に堅気が来るわけないか。

 

・・・って、お願いだから一緒にしないでェ~!😣

     ◆     ◆     ◆     ◆

 

それでは皆さん、無用のトラブルに巻き込まれないよう以下の注意事項を守って、楽しい忘年会をお過ごしください。

 

① 入るお店は事前に調べること。 飛び込みは厳禁。
② 店内では他人様に聞こえるような大きな声は出さない。
③ 万一連れが絡まれたら、他人のふりをする。
 😅

 

 

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