「今なんて言った、てめェ。」
まるで 『ビーバップ・ハイスクール』 から抜け出てきたような若いあんちゃんは、そうイキがって私にガンを飛ばします。
私は、「オレじゃねえョ、隣の親分だ。」・・・と喉まで出掛かりましたが、さすがにそれは出来ません。
張本人のN社長は相変わらず知らんぷりだし。
さりとてプロ相手に 「なんだ、てめェ」 とケンカ売ることもできず、また自分が言ったわけじゃないから謝りたくもなし・・・仕方なくジィ~ッと睨み返すだけ。
目を逸らしたらやられると思い、必死にガンを飛ばしつつ膠着状態が5秒・・・10秒・・・と、何故かあんちゃんは 「ふざけやがって」 と呟くように捨て台詞を吐いて、階段を上がっていきました。
彼の体格はN社長と同じくらい小柄でしたから、大柄な私相手では不利だと思ったんでしょうか・・・とにかくガンの飛ばし合いだけで事は穏便(?)に済みました。
そしたらN社長、カウンターに向かって
「マスター、悪かったな。」
と一言・・・って、もしもし、謝る相手を間違ってませんか!
するとその直後、階段の上から〝ドカンッ、ガラガラ・・・〟という物騒な物音が。
(一体、何の音だ?) と思った瞬間、今度はマスターが
「あの野郎、看板蹴りやがったな!」
と血相を変えて飛び出していくではありませんか。
(あちゃ~、今度はプロ同士だョ・・・ヤバくない?)
私は他人事ながら心配したんですが、カウンターにいたマスターの奥さんは、
「ったく、相変わらず血の気多いんだから。」
と、悠然とタバコをくゆらせたまま。
さすが極道の妻たち・・・ハラが座っていらっしゃいます。
階段の上からは、「てめェ、○×▼◇※・・・・!」 という怒鳴り声が聞こえてきましたが、1,2分程して顔を紅潮させたマスターが戻ってきました。
「ったく、最近の若けぇモンは、躾がなってねぇんだョ。」
そう言って、水割りをイッキ飲み。
で何があったかは怖くて聞けませんでしたが、その後も〝本物〟夫妻は何事もなかったように我々と談笑。
小一時間後 「じゃ、また来るワ、」 と席を立ったN社長に、
「おう、ありがとなァNちゃん。
それからナペちゃんよォ、何か困った事があったらいつでも相談に来いヤ。 力になるぜェ。」
と言いつつ、私の顔を見てニヤリとしたマスターに、思わずゾクッ。
店を出ると置いてあった看板の電気は消え、片側には大きな穴が。
そしてそのそばには血痕がポタポタと数滴・・・。😱
私と睨み合っただけで手を出せなかったウサを看板にぶつけたら、逆にボコられた・・・ってところでしょうか?
帰りのタクシーの中で、「やっぱり本物は迫力が違いますねぇ~。」 と妙に感心して話しかけると、N社長は
「いやァ、どうなるかと思ってしらばっくれてたけど、ナベもしっかり本物相手に張り合ってたじゃねぇか。 立派なもんョ。」
「じょ、冗談じゃないっすょ。
あんな思いはもう二度とご免ですって。
だいたいあの店、パンチパーマご用達じゃないですか。
私は七・三分けなんですから、もう連れてこないでくださいョ!」
そしたら、N社長・・・たった一言。
「いや、暗い所ならパンチに見えるって。」
えっ、じゃあさっきのあんちゃん、もしかして私を同業者だと勘違いした? というか、そもそもあの店に堅気が来るわけないか。
・・・って、お願いだから一緒にしないでェ~!😣
◆ ◆ ◆ ◆
それでは皆さん、無用のトラブルに巻き込まれないよう以下の注意事項を守って、楽しい忘年会をお過ごしください。
① 入るお店は事前に調べること。 飛び込みは厳禁。
② 店内では他人様に聞こえるような大きな声は出さない。
③ 万一連れが絡まれたら、他人のふりをする。 😅