満 期 <下> | ナベちゃんの徒然草

ナベちゃんの徒然草

還暦を過ぎ、新たな人生を模索中・・・。

銀行が閉まる午後3時まで、あと2時間弱。

 

もう振り込み手続きは間に合いませんから、すぐに現金を作ってD社長に届けるしかない・・・そう判断したのはいいですが、ペーペーだった私の預金残高は当時50万円もなし。😰

では、どうするか?・・・考えた末、私は会社で最も早くお金を出せそうな経理部に直談判しに行くことを思いつきます。

 

幸いにも、当時私が在籍していたのは経理部が入っている本社ビルに程近い都内の営業部。

 

新人女子社員から戻してもらった書類を手に、私は経理部に飛んで行きました。

アポなしで担当課長を尋ね、挨拶もそこそこに事情を説明して現金支給をお願いする私に、

「あはは、ウチは銀行じゃないからネ。

すぐ金庫から現金が出てくるワケじゃないんだョ。」

と笑いながら話す課長さんにはムッとしましたが、そこはさすがにプロ・・・ちゃんと解決法を伝授してくれました。


まず経理部で即換金できる横線なし持参人払い小切手(※そんな小切手があること自体、この時初めて知りました)を作ってもらい、それを会社の代表口座を開いている本社近くの幹事取引銀行の窓口に持ち込んで、現金200万円ゲットに成功。

しかし、この時点でもう午後2時過ぎ。

公衆電話からD社長の事務所に連絡して現金が用意できたことを報せ、時間的に猶予がないため待ち合わせ場所をD社長の取引銀行にして、私は社用車で急行。


(絶対に違反や事故は起こせない!)

この時の運転の緊張といったら・・・ハンドルを持つ手がジットリと汗ばんだことを、今でも憶えています。

 

     ウォームハート 葬儀屋ナベちゃんの徒然草

 

幸い渋滞にはまることなく、銀行に到着したのが午後2時45分。


既に応接室で待っていたD社長と担当の銀行員に現金を手渡すことができ、ギリギリで不渡りを回避することができました。


「ご心配をおかけして、本当にすみませんでした。」

机に頭をすりつけるように謝る私に、

 

「いや、さっきは怒鳴ってしまってすまなかった。 

でも君ら大企業のサラリーマンには分からないだろうが、我々零細企業の経営者にとって200万円は大金なんだョ。」


と仰ったD社長の顔を、私は俯いたまま見ることが出来ず。

金融機関に勤めながら、お客様のお金に対して何という認識の甘さ・・・ただただ恥じ入るしかありませんでした。

 

それからしばらく後、先月の拙ブログ記事〝酒席〟でご紹介した、あの徹夜で飲んだ挙句自分の彼女を私に送らせたN社長さんと新宿で飲んでいる時に、こんな話をしてくれたことがありました。


「おい、ナベょ。 お前はいいょナ。 

毎月自動的に給料が振り込まれるんだから。」

「だってしょうがないでしょ。 サラリーマンなんですもん。」

ちょっとふくれっ面で言い返した私に、N社長は仰いました。

「そう言うけどな・・・お前、小便に血が混じったことなんてないだろ。

金繰りが苦しくなるとな、夜は寝られないしオシッコも赤くなるんだョ。
まぁ、ナベもサラリーマン辞めたら分かるサ。」


それから約20年後に脱サラして葬儀社を立ち上げてから、私はこのN社長の言葉や200万円を受け取ってホッとしたD社長の気持ちが、身に沁みて分かりました。

給料をもらう側と支払う側の立場があまりに違うことも・・・。

新社会人の皆さん、お客様のお金は自分のお金だと思って仕事して下さい。

私のような肝を冷やす経験などしないように。

あっ、もちろん自分のお金だと思って使っちゃダメですョ!😅



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