野口英世が麻痺狂病原体を発見した時の話である。
彼は麻痺狂の脳について、一万枚の顕微鏡標本をつくった。
200枚を1組として50組の標本である。
これを2人の助手と片っ端から検査した。
しかし、最後の1組になっても、目指す病原体は見つからなかった。
彼は2人の助手が昼の内に検査したが無駄に終わったという最後の1組の標本を家に持ち帰り、夜を徹して検鏡した、
そして明け方になって、遂に9,995組の標本に探す病原体を見出した。
その瞬間、野口英世はカッポレを踊り出し、見ていた妻は野口の気がふれたのではないかと思ったという。
一万枚の標本を仮に作っても、普通の人なら5,6千も標本を見て探すものが無ければ、それであきらめてしまう。
野口は文字通り、最後まで1枚もゆるがせにせず、検査した。
野口の一念一行の凄まじさを物語るエピソードである。
一念一行・・・一念を持ち、それを実現すべくひたすらに行じ続ける。
別に、大きなことでなくてもいい。
その持続は、人生に確かな花を咲かせてくれることは事実である。
『小さな人生論』(致知出版社)より
※執念の人・野口英世に関する過去記事は、こちら。(↓)