いよいよ明日、プロ野球が開幕・・・本格的な球春到来です。
今年はどのチームが優勝するのか、ファンの間では喧々諤々の予想合戦が繰り広げられていることでしょう。
さて、〝筋書きのないドラマ〟といわれる野球で最もエキサイティングな場面は最終回の逆転劇・・・更に言えばサヨナラ・ゲーム。
その中でも、これ以上ないという値千金の一発といえば
代打逆転サヨナラ満塁ホームラン
でしょう。
この最も劇的なホームランが日本プロ野球で初めて飛び出したのが、今から65年前の今日・1956(昭和31)年3月25日・・・後楽園球場で行われた巨人-中日戦でのことでした。
この歴史的な一打を放ったのは、巨人の樋笠一夫選手(1920-2007)。
同選手の経歴は少々変わっていて、旧制高松中学で全国中等学校優勝野球大会でベスト8まで進んだものの、卒業後は職業軍人に。
戦後は広島鉄道局などのノンプロで活躍していたところを広島カープの目に留まり、1950年に30歳で入団。
いきなり打点・本塁打でチーム二冠となったものの、僅か1年で退団。
その彼を巨人が熱心に口説き落として獲得したのですが、当時の巨人は青田昇・与那嶺要など外野陣の層が厚く、広島の主力打者も代打に甘んじていました。
その彼がこの試合で代打に立ったのは、9回裏。
0-3で負けていたものの、1死満塁で一発逆転の場面。
相手チームの杉下茂投手の3球目・・・ストレートを狙い澄まして振った樋笠選手のバットは見事にボールをジャストミート!
打球は左中間スタンドに一直線・・・ここに史上初の快挙が達成されました。
ホームインした樋笠選手は、まるで優勝監督のようにナインから胴上げされたそうな。
8年間の現役生活で打率.229、ホームラン54本という平凡な記録しか残していない同選手ですが、この一発で見事球史にその名を残しました。
さて、今までこの劇的なホームランは樋笠選手のものを含め、日本プロ野球では8本飛び出しています。
日本国内で初めてプロ(職業)野球の試合が行われたのは、1936(昭和11)年2月9日。(↓)
以来85年・・・現在ではCS・日本シリーズを含め年間890試合程行われていますから、少なく見積もっても累計試合総数は約7万試合。
従ってこの劇的ホームランの出る確率は約11年・約9,000試合に1度という低さ。
樋笠選手以降に達成した選手を年代順に並べてみると、
② 1956年6月24日 藤村富美男(阪神)
(藤村監督自ら「代打はワシ」と告げて打席に・・・。)
③ 1971年5月20日 広野 功(巨人)
④ 1984年6月11日 柳原隆弘(近鉄)
⑤ 1988年6月18日 藤田浩雅(阪急)
⑦ 2001年9月28日 藤井康雄(阪急)
⑧ 2011年10月22日 長野久義(巨人)
・・・あれっ、⑥は?
はい、決して忘れたわけではありません。
実は2001年9月26日に飛び出した史上6本目は、更に劇的。
現在まで日本はおろかメジャーを含めても史上唯一、いや今後もおそらく出ないであろう〝代打逆転満塁サヨナラ優勝決定ホームラン〟なのです。
打ったのは近鉄の北川博敏選手。
前年阪神からトレードされてきた同選手の、まさに乾坤一擲・会心の一打・・・その映像を、どうぞご覧ください。(※9分過ぎ) ↓
北川選手の名は、この一打で近鉄ファン・プロ野球ファンの記憶に永遠に留められることでしょうが、この僅か4日後に打った⑦の藤井選手の一発も、実はやはり史上唯一となる2死・(お釣り無しの)3点差での達成だったのです。
しかし北川選手の一発があまりに劇的だったため、完全に霞んでしまいました。
これもいわゆるひとつの〝運〟ですネ。
さぁ今シーズン、果たして9本目は出るでしょうか?