始まりは、1本のメールからでした。
とある会社の総務担当者・Kさんと名乗る方から、
「社長が帰省中に急逝し、諸事情から現地で荼毘に付したが、取引先から東京でもお別れ会を・・・という要望があったので、御社から見積もりが欲しい。」
という文面でした。
比較的珍しいケースですが、何度かその担当者の方とメールでやり取りした上で、いただいた希望条件に基づいて作成した見積書を送信。
それを受け取ったKさんからは、
「ありがとうございます。 実は他の葬儀社さんに相見積もりを依頼しておりますので、社内で検討させていだきます。」
とのこと。
葬儀業界でも今やお客様が複数社から見積もりを取り寄せるのは当たり前になっていますし、今回は比較的大規模な内容ですので予め私もそれを予見していましたから、
「了解致しました。 またのご連絡をお待ちしております。」
と返信して、それから数日後・・・その担当者から
「お会いして具体的にお話を聞きたいので、おいでいただきたい。」
との電話が。
お伺いすると、総務部長さんが担当のKさんと待っておられ、見積もりの内容についての説明や質疑応答の末、
「よく分かりました。 それでは渡辺社長にお願いします。」
という、ありがたいお言葉を頂戴しました。
「では今後実務的な打ち合わせ等は、Kさんとさせていただきますので・・・」
と申し上げて席を立とうとした時、総務部長がこう仰ったんです。
「実はネ、御社より100万円以上安い見積を提示してきた葬儀社さんがあったんですょ。」
えっ!・・・とビックリして部長さんの顔を見る私。
「それでも、弊社を選んでいただいたのですか?」
「えぇ、ウチは金額よりメールや電話の対応を重視しましたから。」
私にとっては、最上級の誉め言葉をいただけました。😊
そして続けてこう仰ったのです。
「それにその葬儀社はあまりに安いから却って気持ちが悪くて・・・渡辺さん、ちょっとその見積書を見てもらえますか?
どこでそんなに金額が違うのか、私も知りたいんですョ。」
と言いつつ、A4のコピー用紙1枚を私に手渡すではありませんか。
見ると、小さな数字が羅列されていて、一番下の数字は確かに弊社の見積もりより100万円以上安い金額が。
弊社もできるだけ頑張った数字ですので、同じ条件提示でこの差は信じられません。
まずはよくあるパターンで、式場使用料を入れてないのでは?・・・でも、それはちゃんと入ってました。
じゃあ、どこで100万円以上違うのか?
項目を追っていくこと、暫し・・・見つけました。
☆香典返し@3,000×500個 = 150,000円
「部長さん、分かりましたょ。 この葬儀社さん、計算違いしてますワ。」
そりゃあ150万円を15万円にしたら、100万円以上の差・・・というか、正しく計算していたら弊社より高かったってこと。
「なるほど、そういうことですか。 その会社さんを選ばなくて正解でしたネ。 じゃあ、あとはよろしく。」
と、総務部長さんは笑って応接室を出ていかれ、残されたKさんと私は、苦笑い。
その総務部長さんが単に安いだけで飛びつかなかったおかげで、弊社は仕事をいただけたわけですが・・・もしその計算違いの見積書出した葬儀社さんが呼ばれて、その数字で発注されたら、どうしたんでしょうネ?😨
受注すれば、少なく見積もっても数十万円の赤字になりますけど・・・皆さんがその葬儀社の社長さんだったら、どうします?