3分28秒 | ナベちゃんの徒然草

ナベちゃんの徒然草

還暦を過ぎ、新たな人生を模索中・・・。

昨年4月、アシアナ航空機が広島空港であわや大惨事という着陸失敗事故を起こしたことは記憶に新しいところ。

この事故に限らず、機長の操縦ミスが原因とされている(墜落)事故は過去に何度も起きています。

人間である以上過ちは付き物ですが、何百人もの命を預かる旅客機の機長には許されるものではありません。

まして事故後に逃げて行方をくらましたアシアナ航空機の機長など、論外。

しかし中には、優秀な機長のおかげで多くの人命が助かったことも・・・。

皆さんは7年前の今日、
アメリカで起こった奇跡的な着陸をご記憶でしょうか? それは


 US Airways 1549便 不時着水事故


乗員5名・乗客150名(うち日本人2名)を乗せた同便(エアバスA320)は、シャーロットに向け2009年1月15日午後3時26分にニューヨーク・ラガーディア空港を離陸。


その直後にバードストライク (エンジンが鳥を吸い込む現象) を引き起こして左右両エンジンが停止、空港管制はテターボロ空港への着陸を指示します。


しかしエンジンの再始動が出来なかったため、機長はハドソン川への緊急着陸を決断。 


衝撃を緩和するためわざわざ機体を下流方向に旋回させて着水を試み、見事ウォーター・ランディングに成功。


この場面は偶然監視カメラの映像で捉えられ、ニュース番組で何度も放映されました。

※その監視カメラ映像は、こちら。(
    https://www.youtube.com/watch?v=IC7gBV_jUR0


着水後の乗務員の的確な誘導により、乗客は慌てることなく機外に出て脱出シューターや主翼の上で救助を待つことに。

   ウォームハート 葬儀屋ナベちゃんの徒然草-US Airways Flight 1549

水温・気温とも氷点下でしたが、水上バスや観光船、また消防艇などが次々と近づき乗客らを救助。


機体は不時着後1時間で沈没したものの、乗員・乗客全員が救助され、死亡者なしという奇跡的な結果となりました。


飛行中に両エンジンが停止するという緊急事態にも慌てず、エンジン停止から僅か3分28秒の間に川の流れまで計算して着水させ、なおかつ乗客が残っていないか浸水する機内を2度も見回わったという機長はこの方、


 チェズレイ・サレンバーガー三世 

 Chesley Burnett "Sully" Sullenberger III


          ウォームハート 葬儀屋ナベちゃんの徒然草-Chesley Burnett  Sullenberger III


子供の頃から飛行機に憧れ、16歳で地元のパイロットから操縦を学んでプロペラ機を操ったという彼は、コロラド州の空軍士官学校を首席で卒業し大学で産業心理学・行政学の修士号を取得したというインテリの彼は、1973年にアメリカ空軍に入隊。

1973年にアメリカ空軍に入隊、空軍大尉となった彼は1980年に退役後パシフィク・サウスウェスト航空 (※1988年にUS Airways社と合併) にパイロットとして入社し、非常事態に対応する心理学を学んだといいます。

その30年近いキャリアと研鑚の集大成が、まさにこの3分28秒だったと言えましょうか。


エンジン停止という緊急事態にも慌てることなく、落ち着いた対応であったことが管制との交信記録からもよく分かります。

※管制塔とのやり取りの録音とCG再現画像は、こちら。(↓)
     https://www.youtube.com/watch?v=tE_5eiYn0D0


コクピット内にコンピューターの警告音が鳴り響く中で、ここまで落ち着いて不時着までに漕ぎ着けられるパイロットは、果たしてどれくらいいるのでしょう?

アメリカで英雄として称えられ数々の表彰を受けたサレンバーガー機長が発した事故後のコメントは、


「訓練してきたことをやっただけ。 自慢も感動もない。」


いやァ、カッコ良すぎます。


その彼がしばらく静養(?)した後の同年10月1日、事故機と同じ路線で機長として復帰。


副操縦士も事故当日と同じスカイルズ氏が務めたそうで、サレンバーガー氏が機内放送で自己紹介をした時、客室内は割れんばかりの拍手と大歓声が湧き上がったとか。


・・・その時の光景が、目に浮かぶようですネ。笑2


同氏はその後2010年3月にリタイア、30年に及ぶ現役パイロット生活に終止符を打ちました。

その彼の自伝が邦訳・出版されています。

ハドソン川の奇跡 機長、究極の決断(静山社文庫・刊)


       

なかなか読み応えのある一冊で、オススメですョ。


余談ですが、この著書にサレンバーガー氏のこんな空中デートの思い出話が書かれています。

『私の様子を想像して欲しい。

17歳の少年、隣には素敵な女の子、(狭いコクピットゆえに)彼女の足が私の足と2時間触れていて、腕もこすれ合う。 
 

彼女の香水が漂ってくる。 いや、シャンプーの香りかな?

時々操縦席側の窓をキャロルが覗き込むたびに、彼女の髪が私の腕に触れた。 私にとってはそれも初めての体験だった。

空を飛ぶのがこんなにもドキドキするものだったとは!』


もし私が中学生時代にこの自叙伝を読んでいたら、絶対パイロットを目指していたでしょうネ。

でもサレンバーガー少年とキャロル嬢のデートは、これっきりだったそうですが。あせあせ


LCCが相次いで就航し、現在各航空会社は生き残りをかけて熾烈な競争を繰り広げていますが、何といっても最優先すべきは安全な航行。

どんなにコンビューター技術が進化しても、飛行機を飛ばすのは人間だ・・・と主張する彼は、こうおっしゃっています。


「空の安全に関しては、経験に代わるものはない」


英雄・サレンバーガー機長が残したこの言葉を、リストラに腐心する各航空会社経営陣には是非耳を傾けてもらいたいものです。



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