19歳の時に、とある太鼓のグループに見学にいき、三か月ほど居候させてもらったことがある。そこで出会ったのが、やはり見学に来ていた俊ちゃん(木村俊介さん)だ。私が主宰する「和力」2001年の初演から一緒にやってきたその俊ちゃんが、今月の21日に彩の国さいたま芸術劇場・音楽ホールで、「木村俊介30周年記念コンサート」を開催する。わざわざ紙上でお知らせするようなことではないのだろうが、俊ちゃんは女性にもてる。横笛・三味線以外にもさまざまな楽器を演奏し、作曲や作詞、音楽監督もやれば構成や演出もするできる男。語学にも堪能で英語圏では演目の紹介で軽くジョークを飛ばし笑いをさそう。だから世界中の女性にもてる。わざわざ私情をお知らせして面目ないが、そんな俊ちゃんに嫉妬してかれこれ30年にもなる。小憎らしいことに彼は、星座や花の名前をたくさん知っていて、それをさりげなく会話にはさむ。クラッシック音楽にも精通していて、さらりとピアノで弾きもする。そして誰にでもものすごく優しい。そして信じられないことなのだが、それらすべてを無意識のうちにしているのだ。「いつか見てろ俺だって」蓼食う虫も好き好きという金言もある。本番中にロビーを股引きと鯉口というお神輿を担ぎそうな出で立ちで歩いていると、「写真を撮って頂いてもよろしいかしら」と少し派手目なご婦人に呼び止められた。ファンの出待ちだ。着付けがあるし、出番に間に合わなかったら大変なのだが、「ものすごく優しいこと」が女心をくすぐることを見知っていたので、「もちろんですとも」といざなわれるままに大きな花瓶に生けられた花の前に立ったのだが、ここでまずいことに気が付いた。本番中でもう入場者がいないと判断したのか受付に人がいない。シャッターを切る人がいないのでは、このご婦人の欲求を満たすすべがなくなってしまう。スマホを握りしめたご婦人は慌てもせずに明かりの具合を確認したのち、私の横に来て「ハイお願い」とスマホを差し出した。「花全体が写るように」と言われて自分の役割に気付いたわたしは、震える声で「ハイチーズ」とシャッターを切った。俊ちゃんの「30周年記念コンサート」を見に行けば、楽屋に挨拶に行かないわけにはいかない。そこで、誰かに「写真撮ってくださる」とスマホを渡されるのがイヤなので私は行けないが、是非とも足を運んでいただきたい。