こんにちは、アリーシャです。


週末話題の映画、今年の米国アカデミー賞を複数受賞して話題となっている映画「オッペンハイマー」を観てきました。





https://www.oppenheimermovie.jp/#


オッペンハイマー、通称オッピーはアメリカ人の天才的論理物理学者で、第二次世界大戦中に原子爆弾の実用化に成功したマンハッタン計画のリーダーで、原子爆弾の父と言われている人物です。


最初に断っておくと、昨年広島の平和記念資料館を訪れて原子爆弾のもたらしたものを目にしてきた一人の日本人としては、原子爆弾の開発と実験、投下に至るまでのアメリカ側の流れを知り、恐怖を感じました。


特に、人類初のニューメキシコでの原子爆弾の爆発実験の成功に拍手喝采で大喜びする軍人達と科学者達の姿は鳥肌が立つ程何ともいえない嫌悪感を感じました。


人類初の原子爆弾実験の成功に喜ぶ彼らの姿は、それが引き起こすその後の世界を想像できていないと感じました。彼らの業務の成功がその後の世界に何をもたらしたか!それを思うと悲しくなりました。


オッペンハイマーはユダヤ人で同胞を守るために、ナチスドイツを一刻も早く倒すために、ナチスより先に原子爆弾を作ることを命題としていました。

しかし、原子爆弾が出来上がる頃、ヒトラーはすでに死に、原子爆弾は彼の想定していなかった対日本戦に使われることになります。


有名な話ですが、映画の中でも原子爆弾の投下候補地を決める会議のシーンが出てきます。そこでアメリカ人の軍の幹部が「京都は、あの街の歴史的文化価値は素晴らしいから除こう」というようなことを言うシーンは嫌悪感が身体を走りました。


私達日本人は、広島も長崎も美しく魅力的な街であったことを知っています。原子爆弾が投下されそこに住む罪のない合計20万人の人の命が損なわれ、街は破壊され、放射能汚染の影響は何世代先まで続きました。


軍事的判断というのはかくも冷酷で恐ろしいものなんだと感じ、嫌悪感でいっぱいになりました。


また、核実験の爆音や、いくつかのシーンはとても恐ろしく、私は映画館を飛び出たい気持ちに何度もなりました。


原子爆弾を出荷した後、オッペンハイマーは広島、長崎への投下の日時や詳細は一切知らされませんでした。


命がけで成し遂げた仕事は大量殺戮兵器となり、それをどう使うか。いつ使うかは軍と政治が決めることで、科学者である彼には何の権限もなく、彼は自分も戦争の1つの駒に過ぎなかったことを感じます。


ヒトラーはもう居ないのに、アメリカ政府が国の威信をかけて大金と時間をかけてつくった最新の爆弾を使わないという選択肢はなかったのです。


そして、たぶん一生自分が成し遂げた仕事に対する罪悪感を感じ続けたのではないでしょうか?


彼が戦後ヒーローから赤狩りの対象となり、辛い思いをしたことは恐ろしいものをつくりだしたことに対する贖罪だと感じました。


しかし、アメリカが作らなかったら遅かれ早かれ他国が原子爆弾の実用化に成功し、世界のどこかに投下された可能性はあります。

そして、私達日本人はアメリカでは原爆投下は戦争を終わらせるために必要だったと政治的に歴史的に高く評価されているという事実を認識すべきでしょう。


この映画をみて、最も恐ろしいのは、大国間の権力争いだと私は感じました。その前では何十万人の命や都市の1つや2つは戦略の道具としてしか扱われない、そのことが何よりも怖いです。

この映画が描いているのは結局、人類の罪なのかもしれません。


映画としての出来映えは素晴らしく、特にロバートダウニーJr.の演技は鳥肌ものでした。そして、本当に色々と考えさせられるすごい映画でした。


しかし、爆音や光に真っ白になるシーンや、原爆投下の成功を祝う群衆の足音などはトラウマになるほど怖かったです。敏感なお子さまには向かないかなと思います。