第七話 神の国日本 ⑦
ヨンミー老師が、芝居小屋に来たのは、
貨幣経済が始まったこの頃から、両替屋と呼ばれる貨幣を
お上から「よし」とされていた大店の主人たちと代官達がどうも、
蜘蛛の軍団とつながり、庶民たちを騙して、私腹を肥やしているのではと、
敵方に潜入捜査していた。
南蛮渡来古美術商の
月乃屋光太郎(ツク・ヨンミー老師)としてである。
貨幣の流通経路が
蜘蛛のアジトを掴んだ桜の母
雪王妃の居所を探っていた。
お銀は、
八百屋お七を迫真の演技で観客を釘付けにしていた。
天和1683年に起きた江戸の大火の物語である。
お七火事とも言うが、本来この火事は、
お七の仕業ではなかった。
この、大火により焼け出された江戸本郷の八百屋の一家は
壇那寺に避難した。避難先の暮らしの中で
八百屋の娘・八百屋お七は、寺の小姓と恋仲になる。やがて、
店を再建した八百屋一家は寺を出ていくことになり
身分の違う、結ばれぬ恋を諦めなければならなくなる。
どんなに諦めようとしても日毎募る思いが、
胸を焦がし始め乱れる場面から始まる。
「あー会いたいのよ
もう一度ひと目でいいからあの人に、、
そうだ、、
もう一度この江戸に火が出れば、、
あのお寺に行ける。
あの人に会えるかもしれない
いいえ、、必ず会える、、、
」
お七は風の強い晩を選んだ。
油をまき、、火を付けると、、
赤い長襦袢の裾を乱して裸足で走りさり、、
櫓の上にある半鐘を鳴らしにはしごを駆け登る。
かんかん
かん
かんかんかん
「会いたい、、会いたい、、会いたいのよ、、」
お銀の迫真の演技に拍手喝采となっていた。
口を開けたまま袖から見ていたお涼は
はっと我に返り、頃合いを見て
月乃屋光太郎(ヨンミー老師)にお銀から
渡された文をそ~と手渡した。文には、、。
「明日の夜がふける前、
御山の麓の水龍神社に来てください。
桜の行方がわからず、
皆で探しています。咲き」
としたためてあった。
月乃屋光太郎は、目でわかったと合図した。
つづく、、。
みこたものぼるにゃ