ダイニングバー
「ときたま」
3話PM8時からは
ナイトクラブ「ときたま」
5 動物病院の院長、古賀先生。
ダンスタイムのバラードは、麻子の得意中の得意もちろん、みゆきさまのナンバーから
「霙の音」イントロに合わせてブルーの光がステージに舞う。
「今夜のうちに、、、。」
赤いドレスの照美は、まるで薔薇の花が咲いたように、
軽やかなステップを踏む。お相手の陣内聖人との呼吸もピッタリである。
「なによーみこたはどこなの
みこた
みこた
」
(月ちゃん飲み過ぎだよねあーあー
やばいよご機嫌斜めだよ
うーうーーー
)
あーはじまったなでなで
、すりすり、
ちゅーちゅー
おー酒くさ
こうなると、2時間はつづくんです。
そうなんです
。とばっいりなんです。
照美ちゃんと聖人さんが躍った晩は、、ほとんどやけっぱち
あー神様、
月ちゃんはわからないでやっているんです
。許したまえ
ダンスタイムが終わり、
麻子も休憩タイムに入った。
「麻子さんお疲れさま。喉が渇いてませんか
一杯飲んでください。竹鶴ハイボールクラッシュアイスで、、、
」
渋い声の紳士は動物病院の院長先生古賀先生である。
猫族たちの間でもかなりの人気
優しい頼りがいがある。イケメン何より猫の気持ち手に取るようにわかるんだにゃん
ごくごく
ごく
喉を鳴らしてハイボールのグラスを一気に飲み干した。
「いい飲みっぷりだね。麻子さん。いくらでも飲んでもいい代わりに、今日も又、
あの歌うたってください。」そう告げると、少し寂しそうに、遠くを見ている。
古賀先生のあの歌とはもちろんみゆきさまのナンバーで、
「鷹の歌」この歌を、古賀先生はご自分のお父様の歌と称している。
その昔、古賀先生がまだ駆け出しの若造だったころ、
自分の愛猫の手術に失敗した。もう手の施しようもないほど
病状は悪化していて、手を尽くしたが、古賀先生の腕の中で息を引き取った。
初めて泣いた古賀先生の隣で、朝まで一升瓶を抱えて共に泣いて飲んでくれたらしい。
「恐れるなかれ、生きることを、、、。」
悠々と空を飛ぶ鷹のような人だったと語った。
その話を聞いた月美は、自分の父親とだぶらせた。
古賀先生は、、、。
小さな命を送る日にいつもこの歌をリクエストする。
皆、ここに来る者たちのほとんどがそのことを知っている。
あたちの仕事はもう一つ、虹色の橋の向こうまで、
みおくることにゃ。
「ときたま」の花祭壇にまたひとつ灯りが増えたことは言うまでもない。
今夜の演奏曲は、バラードが多くなりそうだにゃ。
つづく。
今夜は弔いにゃ。