ダイニングバー
「ときたま」
3話PM8時からは
ナイトクラブ「ときたま」
3 月美と歌姫 麻子(あさこ)猫のユウ
P.M8時 ダイニングバー「ときたま」は、ナイトクラブ「ときたま」と変わる
広いフロアの摩天楼は、瑠璃色のシャンデリアの光と変わる。
シャンデリアのクリスタルが
今夜のゲストたちを照らし始める頃、
スタッフルームの大きな鏡の前で、ひとりの女の姿があった。
名前は麻子(あさこ)
エスカーダの漆黒のドレスを身にまとい
ショパールのダイアモンドネックレス、ダイアのピアス、ダイア腕時計
高級な宝石にも負けない黒髪は、
「ティファニーで朝食を」に出て来るオードリーヘップバーンなみの、
山高く、結い上げた、夜会巻き。
赤いハイヒール姿である。
日本人形のような目鼻立ちに、透明感のある肌の色は、
誰が見てもうっとりとするほどであった。
「麻りん用意できた?」
和服姿の月美が、スタッフルームを覗いた。
「麻りん、きれーい。
いつもすごいもりもり頭も、
今日は飛び切り気合入ってるね。口紅はシャネル?」
「月美さん。おはようございます。
はい。この前いただいた口紅にしてみました。
どうですか?ケバくないですか?だいじょうぶかな?
今日もよろしくお願いします。」
「今日のゲストは豪華よ。
黒のドレスには紅シャネルがお似合いだわ。
いい感じよ。色気あるわー。
つやっぽい声でノウサツノウサツ
今日も頼んだよ。」
「はい。了解いたしました。お任せください。」
「今日はどの曲から歌うの?」
「はい。本日のオープニング曲は、組曲(suite)の中から{空がある限り}を選びました。」
ナイトクラブで歌う麻子は、中島みゆきさまの曲しか歌わない。
月美と、麻子が初めて出会ったのは、
夕焼けの綺麗な夕焼け橋の路上ライブだった。
腰まで伸びた巻き毛の黒髪を赤いリボンで一つに結び、
痩せた身体を、一瞬たりとも揺らさず、
渇いた声を出していた。悲しい闇の声で歌う彼女の声は、
誰かの弔いでもしているかのようだった。
「みこた、、。あの子の声。聞いた声だね。あの時のあの子だよね。だとは思わない?」
{え?やっぱりそうだよね。はじまった。月美の悪い癖だよ。また拾ってそだてるのまた、お金かかるよ。観てごらんよ、柄悪いのが見てるよ。}
「だって、あんたの耳も動いたじゃない。いいよね。あの子辛そうだよ。
あんなにやせて、美味しいものでも食べさせて
、悲しみを閉じ込めるおまじないをしてあげないと、
壊れそうだよ。もう少し幸せな気持ち覚えれば、
あの声だもの、いい歌うたいになるよ。」
{じゃあ、あの黒猫も連れてくんだね
こっち観てるよ
あ、あの子も巫女猫かよ、、、。
しかたないね。わかったよ。}
あれから、1年、黒猫のユウはパサパサの毛並みから、
今ではシルクの様な毛並みへと変わったことは言うまでもない。
メキメキと腕を上げてきた麻子は、
オーデションを受けることが決まったところだ。
夢を叶えるために、走り続けている。
今日もいい歌声が聞けることだろう。
黒猫のユウは、赤いリボンを首に巻いて、おしゃれしている。
私も今日は、月美と高級シャンプーに行ってきた。
ホールの舞子は、シャンパングラスにシャンパンをそそぎはじめた。
バンドメンもスタンバイOK
大きな古時計からは、OPENを知らせる曲が流れ始めた。
つづく
心の処方箋。みゆきさまの曲だにゃん。