ダイニングバー
「 と・き・た・ま」
第1話
朝ごはんと 料理人 海人
朝6時
場末のダイニングバー「 と・き・た・ま」は、OPENする。
ここは、赤い煉瓦で出来たおしゃれな洋館建てである。
貴族のお屋敷跡をリフォームした建物のようで、
風格と気品がある。私の好きなつくりである。
門を入ると広い庭がある。
様々な季節の花が植えられている。いい香りが漂ってくる。
青い芝生の向こうにある、アーチ型の踏み石を渡ると、
階段が見える。5,6段の階段を昇ると。入り口のドアがOPENしている。
入って正面には、受付カウンターがあり、
美しい若い女性がふたり、髪を束ねて、白いフリルのブラウス姿で座っている。
受付を済ませると、黒服のボーイが席まで案内してくれる。
贅をつくした建物は噂によると、月美の持ち物なんだそうだ。
何か、謎めいた話があるに違いない。まあそのことは置いといて、、、。
床には大理石が広がっている。大理石は猫にとっては厄介である。
滑るただ滑る
ぶつかる
危ない
爪やばいのである
時には、大きな古時計から、軽やかなクラッシックが優雅に流れてくる。
ダンスパーティーなるものも、たまには合コン、婚活、バッティングセンター
として使われる。
正面には無数の高級酒がならび、素敵な豪華なグラスたちが、
朝日を浴びてピカピカ光っている。俗世間から離れた異空間ともいえる
店内には、朝からでも高級ワインを飲みに来る昔のお嬢さん集団がいるらしい。
S字にのびた、背の高いカウンターは、ざっと、20席はある。
アーチの壁の向こうには、広い厨房が見えている。
フロアの真ん中にはダンスフロアになっているのは言うまでもない。
窓際には、アンティークのテーブル。おしゃれな王調風なソファー席がいくつもある。
くつろぎたい人用には、ロッキングチェアーも用意されている。
100人は、同時入店可能な様だが、いまだかつて満席は無い。
壁際には、古い大きな鏡と大画面のテレビが、妙にミスマッチで面白い。
壁には、天使の絵画が飾ってある。その隣に小さなガラスの扉がある。
完全防音室、ときカラボックスである。
その他のことにも時々使われる。
「例えば、大声張り上げたい時や泣きたい時
告白ルームとしても
」
まるで、大正時代の鹿鳴館のような店内が、
「ダイニングバーときたま」である。
私の席は?もちろん。高いところから、皆を視る役目。
最高に高く、機能的に作られた猫タワーは、
天井から、2階の、まわり廊下から、1階につづくらせん階段までつづいている。
開放的な大きなガラス窓から差し込む日差しが、気持ちよく
フロアーを照らしている。
窓際の向こうのガーデンテラスは、青い芝生と噴水と薔薇の香りが漂ってくる。
心地の良い風の吹く季節は、いつも予約で満席である。
ダイニングバーと言えば基本、夕方からの営業であるが、
ここ、「と・き・た・ま」は、早朝6時がOPFNである。
朝6時からモーニングを受け持つのは、
料理人 海人(かいと)
彼は、一流ホテルで10年修行した、日本料理のコックである。
年は、32歳。凄腕の料理人がなぜ、場末のバーで不思議にも
朝飯を作っているのかは、のちほどのお話し。
色は、浅黒いが、がっちりした体育会系のイケメンである。
この店には、ひとつだけ食事をする前に
する、おまじないがある。
これを唱えると、不思議なミラクルが
起きるといわれている
3つのおまじない言葉がある。
天地の御恩に感謝。
世の中一切の御恩に感謝。
親先祖の御恩に感謝。
合唱
得意料理は卵料理
ここの店の朝ごはんは、絶品である。
朝のメニュー(ドリンク付き)1000円
和 焼き魚。煮物。特製厚焼き玉子。味噌汁。ごはん。漬物。
洋 卵のホットサンド。季節の野菜スープ。ヨーグルト。果物。
中華 中華粥。ザーサイ。ゆで卵。春巻き。杏仁豆腐。
何とも、この店の売りは、ホテルなみのメニュー構成されているのである。
お客は店をはじめたころ2か月間、誰も来ない日がごろごろあった。
最近では、だんだんと朝の顔ぶれも見慣れた顔ぶれになってきた。
今日も、OPENと同時ににぎやかな顔ぶれがそろい始めた。
「ちなみに、、、私の朝ごはんは、、三ツ星猫レストランのまぐろ缶である。」
つづく。
美味しいものは、飛び切りの心の処方箋だにゃ
by mikota