軒下のあかりをたばね火蛾しづか
 

抜き紋の羽織どこかに火取虫
 

わけもなく蛾を撃ちわれは怯えたる
 

風を抱き誘蛾灯下のひととなり
 

蛾消えたるや鱗いつさんに撒きつくし      【笑い仮面】

 

 

 あかりが恋しいのか、一頭の蛾が、うちの軒下にやってきて、翅をやすめている。一見蝶々のようだけれど、灰色っぽくてずんぐりとした胴、翅をおおきくひろげて着地していることで、たやすく、あ、こいつは蛾だなと識別できる。それに、こんな深夜に蝶々はうろうろすることはないだろう。

 

 火蛾(かが)と呼ばれ、灯蛾(ひが)とも呼ばれ、それでもやはり、疎んぜられているものの影を負って、夜に飛び、闇に憩うしかない蛾という虫に、どうしてこんなにも魅せられてしまっているんだろうと、毎度のことながら面妖に思ってしまう。

 四句目の《誘蛾灯》は、独立した季語だけど、まあいいやっていっしょくたに詠んでしまった。

 

 

画像:じろうのブログ