さびしさは1LDKに蝸牛
まいまいのあとから雨の降りはじめ
棄てられずでで虫古き家に棲み
やはらかやでんでん虫のでのあたり
かたつむり医院の窓を叩くらん 【笑い仮面】
はい、この時季の俳句ではおとすことのできないやつです。あいつです。紫陽花の葉っぱの上や、キッチンの窓のあたりをうろうろしていて、ときおり目があうと、「やあ、こんにちは」なんて声をかけたくなってしまう。はたから見たら、きっと頭のイカレタやつに見えているんだろうな。頭がいたんでいるのは、まちがいではないんだけどね。
四句目はアメブロでもおなじみ坪内念典氏の《たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ》みたいになっちゃったけど、こういうかろやかな嗤いは愉快でいい。きっと坪内氏も笑ってくださるにちがいありません。
それから、今回の挿画は、藤田嗣治の手になるもの。《乳白色の肌》の裸婦像で世界をあっといわしめたあのフジタが、こういう素朴な銅版画も描いていたとは。驚き半分、嬉しさ半分で、ついついアップしてしまった。
画像:翠波画廊