お涅槃や座敷に一本射すひかり
 

あばらより経読む風が涅槃仏
 

酒ものうていかにも寝釈迦枕頭す
 

涅槃会に黒傘ひとつ忘れられ
 

三日ほどは餓えもせずに涅槃粥      【笑い仮面】

 

 

 俳句を詠みはじめたころ、歳時記で《涅槃》という季語にあたって、びっくりしたことがある。ぼくも、あたしもってかた、けっこう多いんじゃないだろうか。

 季語でいう涅槃っていうのは、平たく言っちゃえばお釈迦さまの入滅された日、ようするに命日のことだって知って、思わずぼくは、ううんって頭をかかえこんだもんだった。死んだら、はいお終いではなく、そこから涅槃という、永い眠りを生きておられるんだと思い、ううん、ぼくにはマネはできないやって、寝釈迦ポーズだけまねをさせていただいているしだい。

 

 

画像:毎日新聞