♪ロンドンの鐘♪ 

「おまえに10シリング借したままだぞ」
セント・ヘレンの鐘が鳴る

「そろそろ返してやったらどうなんだ?」
オールド・ベリーの鐘が鳴る

「懐があったかくなったらね」
ショアデッチの鐘が鳴る

「いったいいつになるのやら」
ステップニ―の鐘が鳴る

「知らないね」
ボウの鐘が鳴る

「小枝が二本に、りんごがひとつ」
ホワイト・チャペルの鐘が鳴り

「半ペニーにファージング」
セント・マーチンの鐘が鳴り

「やかんに手なべ」
セント・アンの鐘が鳴り

「れんがにタイル」
セント・ジャイルの鐘が鳴り

「ぼろ靴にスリッパ」
セント・ペテロの鐘が鳴り

「灰かきに火ばし」
セント・ヨハネの鐘が鳴りひびく。


          ★

"You owe me five shillings,"
Say the bells of St. Helen's.
"When will you pay me?"
Say the bells of Old Bailey.
"When I grow rich,"
Say the bells of Shoreditch.
"When will that be?"
Say the bells of Stepney.
"I do not know,"
Says the great Bell of Bow.
"Two sticks in an apple,"
Ring the bells of Whitechapel.
"Halfpence and farthings,"
Say the bells of St. Martin's.
"Kettles and pans,"
Say the bells of St. Ann's.
"Brickbats and tiles,"
Say the bells of St. Giles.
"Old shoes and slippers,"
Say the bells of St. Peter's.
"Pokers and tongs,"
Say the bells of St. John's.

 

          ★

 

 ロンドンでは街のあちこちに教会が建っていて、その教会ごとの鐘がそれぞれの時を打っているらしい。ぼくはロンドンへはまだ進出していないから詳しいことはわからないんだけれど、このマザーグースによると、かなりしょっちゅう、それも音高く鳴りつづけているらしい。

 

 なんで鐘を打つのか?どうやら借金を返せ、返さないの応酬らしく、お寺や教会なんてえのはいつの世でもどこの国でもなまぐさいことがよくわかる。そのなまぐさいやりとりは、やがて《小枝が二本に、りんごがひとつ》《やかんに手なべ》などなど、意味不明のことばの応酬にとってかわっている。ひょっとしたら、教会同志の合い言葉、あるいは暗号なのかもしれない。

 

 じつはこのマザーグース、ずっと以前に紹介させていただいた《セント・クレメンツの鐘が鳴る》のきょうだいぶんの唄らしい。借金うんぬんは同じなんだけど、こちらは《この野郎/ 朝陽がみえたらあきらめろ。/おまえの首を ちょうだいするよ。》とすごいことをおっしゃっている。おひまなかたは、のぞいてみてくださいな。

 

 

【笑い仮面】

 

画像:Etsy