喪の家になんの便りか冬の蝶

 

冬蝶や更紗小紋とすれちがひ

 

ひとすじに凍蝶空を飛ぶかたち

 

読経の香る家あり蝶凍つる

 

冬の蝶この観覧車はひとり乗り 【笑い仮面】

 

 

 あれ?この冬はあいつに出くわさなかったなあ、と思っていたら、れいによって裏庭のコンクリートブロックのくらがりで翼をやすめていたのだった。いつも会っているやつに会わないでいるのはみょうに心地の悪いものだから、すくなからずほっとした。

 ところが、この冬のやつは、もろ冬色の翅をはためかせながら、ぼくにこう言うのだった。「ユコチン(ぼくのあだ名)、あんまり無理をしたらいかんでえ」

 その声は、まぎれもなく、せんだってホスピスで亡くなったぼくのいとこの声だった。宿痾の病としずかに戦い、とわの眠りについたあとになっても、ぼくのことなんかを気づかってくれているなんて………

 そこで夢はさめた。とてもふしぎで、やすらぎにみちた夢だった。時計を見たら、まだ0時すぎだった。

 

 

画像:aucfan