冬の蝶膝つ小僧をかすめゆき
冬蝶に墓参帰りの風いかに
目医者では目玉痛むや蝶凍つる
ためろうて凍蝶いまも草の上
ふりかへる辻が花とて冬の蝶 【笑い仮面】
冬にも、蝶々がいるんだ。庭先で見かけて、少なからず驚いてしまった。そんなに驚かなくても、《冬のばら》《冬の蝉》などの季語もあるのに、どうしたものか、《冬の蝶》には、いつも戸惑ってしまうぼく自身が面妖でならない。たぶん、あの小さな飛翔体のなかにまぎれもなくひとつの命がしまわれてある事実への怯えが、憧れとともにあるんだろう。