笑い仮面のブログ-ハナトラ、ありがと…



《ハナトラをとおくに逃がしてあげよう》
かあちゃんが、そう言ったんだ。
ハナトラのかわいいチビのミケ猫が
うちの庭の裏にしかけてあった
罠にかかって、ミーミー鳴いていたときだよ。


まるでタヌキかウリ坊でもしとめるみたいな
でっかい赤錆びた檻の中には
ドギーマン。おいしいやつがてんこもり、というわけだ。
檻はきしみ きしむ
ミケの鳴き声でぼくらは眠れたもんじゃなかった。


《ノラ猫一掃大作戦
20日間展開されるという噂だよ》
だから、ハナトラ、悲しいけれどお別れだ。
あの、これみよがしな罠にかかって
《アッ、アッ》って鳴いているお前のすがたはみたくないんだ。
けさも、二匹目のチビがかかってたとか。
ガス室行きの片道切符の大盤ぶるまいだ。


ぐにゃぐにゃ道を通って来たんだ。
ほら、このみどり。
おいしい虫も、清水もあるぞ。
ここで、自由に生きておくれ。
そういえばお前はノラ猫だったんだ。

ピンクの鼻の、ぼくのハナトラ。

ありがと。


まちがっても
ぼくらのあとを追って帰って来るんじゃないぞ。
またどこか、
檻なんてヤボなもののないところで逢おう
ハナトラ、いっぱいありがと。
ハナトラ、ごめん。

                   

                               【笑い仮面】