青い空のしたを 雲はしろくながれる
めざめたばかりの
針葉樹林はこきざみにゆれる
レモンイエロウのフレームの自転車に乗って
わたしは今日も
林道のはずれの納屋に 逢いにゆく
ときめいて
軽やかに回転する銀色の
車輪のしたで 小石がはじける
途中
見廻りの片岡さんとすれ違ったけれど
片岡さんは
なにも咎めはしなかった
一瞬 ほそい杉の梢がざわめいて
黒い影をかき消す
小鳥がわたしのあとを追う
怯えながらひとりぼっちの
ペダルを漕ぐ
悪い噂の流れる
この風の峠
はげしいカーブに片岡さんの
古ぼけたホンダ・カブが消えるそのとき
わたしは 一陣の
さかまくつむじ風になっている
★
さて、気分一新。
1987年に書いた詩を、少しだけ書きなおした。
……こんなころから、こんな詩ばかり書いていたんだ。進歩ないなあ。
【笑い仮面】