笑い仮面のブログ-見る



できることなら見たくない
自分の顔に 
わたしは一日に何度
向きあっているだろう


朝の洗面台に置かれた
小さな鏡の中には
左右異なる私のふたつの顔がある
わたしは
左の頬から土色の痣をめくりとり
そっとゾーリンゲンの刃を当てる
削ぎ落とす


夜 浴室に充ちた霧の中には
鈍い光に濡れた
ゾーリンゲンを
とおく見つめているわたしがいる
一日の
ただれた疲労を刻みこみ
ひとつっきりの悲しみに歪んだ
わたしの顔が そこにはある
(恋人よなぜ くちづけのまぎわに
 きみはとまどうことをしなかったのか?)


見る 
ということに疲れ果て
唇を咬みしめている

男の姿を
わたしは眺めつづける


今朝も洗面台の
小さな鏡の前で
土色の痣を左の頬に張りなおし
自分でも気味が悪いほどの微笑みをたたえ
職場へと向かっているわたしがいる
わたしは黙ってそれを見つめる


     ★


やりきれない思いはある。しかし、整理しなければいけない。
そう思って書いた。
2004年作。


                               【笑い仮面】