「シテール島の巡礼」
アントワーヌ・ヴァトーはロココ時代の巨匠で、ロココの絵画スタイルを決定づけた画家として有名ですが、初期の時代からそうした絵を描いていたわけではありません。
最初は、フランスにおいて芸術の主流を担っていた王立美術アカデミーに認めてもらうために、伝統的な歴史画や物語画を描いていたんですね。
しかしヴァトーはそうした絵を描くのが苦手だったのか、二度も出品して落選しています。
彼は生活費を稼ぐために戦争画を描き始めました。
こうした絵を観た有力コレクターがヴァトーを推薦してくれたので、ヴァトーはようやくアカデミーの準会員になることが出来たんですね。
そして彼は準会員から正会員に昇格するため、アカデミーに作品を出展しました。
この時の作品が彼の代表作として有名な「シテール島の巡礼」という作品なんですね。
この作品を観た審査員は、非常に驚いたそうです。
というのもそれまでアカデミーにはヴァトーのような作品のカテゴリーは無くどういう風に分類したら良いのか分からなかったからだったそうです。
そして、この時に初めてアカデミーは雅宴画(フェート・ギャラント)という絵画のジャンルを作ることになりました。
こうした高い評価を受けていたヴァトーですが、若いころから患っていた結核によって37歳という若さで亡くなってしまうんですね。
シテール島とは地中海にある島で、ヘシオドスの「神統記」によれば、クロノスによって切断されたウラノスの男根の泡から生まれたアフロディーテ(ヴィーナス)が、西風ゼピュロスによって運ばれたとされる島です(シテールかキプロスに運ばれたとされる)。
ちなみに、「ワトートレイン」と呼ばれる裾の長いドレスがありますよね。この「ワトートレイン」の「ワトー」はヴァトーから来ています。
結婚式のドレスなどの裾の長い部分をトレインと呼びます。トレインとは列車のトレインのことで、ズルズル裾を引きずっているところから来ています。
結婚式などでは、身分が高ければ高いほどトレインが長くなるのだそうです。