…少年は嘘をついた… | 天使が降りる森

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その少年はフラフラとした足どりで
坂を登っていた……
 
 
(若いのに酔っぱらってんのか?)
と、思いながら車で横を通り過ぎた。
 
 
(昨夕の空から)
 
 
いつもの公園に着き、夜景を見ていると…
 
 
 
 
「すみません、
    ここからもっと北に上がる道は
    あるのですか?」と、
    弱々しい声で喋りかけてきた…
 
"ここから北に上がる道は
  ないけどな~
  ひとつ谷越えたら霊園があるから
  そこならもっと上がれるけど…”
 
「あぁ…そうですか…」 
 そう言って立ち去ろうとしたのだが
    おいちゃんは見逃さなかった、
    一瞬の躊躇を!
 
”おい、少年!(寅さんか?!) 
  なんでそんなところに行きたがるか?”
 
 
 
 
 
「あの…実は、妹を捜してるんです…」
 
“ん?妹がここに来ているのは
  判ってるのか?
  ま、ちょっとここに腰掛けて
  話ししようか?!”
 
そう言って近くのベンチみたいな
とこに二人で座った。
 
そして色々と、ゆっくり話をしてみた…
 
 
 
 
聞けば…妹の話は嘘ですと…
中学三年生らしい…
学校は最初はすぐそこの中学校と…
でも実は違うと…
 
何か嫌なことがあるのかと聞くと
病気で運動ができなくて、
いじめにあっていると…
 
左目はだんだん見えなくなってきて
多分失明すると…
 
 
 
名前はK君、頭の良さそうな感じの子供…
両親は仲は良いらしい…
 
 
 
 
”そうか…
  眼が見えなくなることや
  不安でいっぱいやな…
  辛いやろうな…、
  おっちゃんがそうなったら
  同じ気持ちになるやろうな…
  でもな、自分が思っているほど
  大したことではないかもよ”
 
この時、K君の心の声が聞こえた…
『えっ』って…
 
 
 
その後は色々と自分の話
(いじめにあってた頃の話)や
世の中のもっと悲惨な境遇の人達の話、
聾唖の方がやっているBarの話
(K君が高校3年位なら行ったはず^^;)、
その他、俺が実際に感じている
生きる力の凄い人達の話…
 
 
 
 
何か、だいぶん落ち着いてきたように
感じたので
駅まで送ってあげようかというと、
素直に「はい、すみません」と…
 
 
 
 
そして駅について家はどこの駅かと
聞くと『高砂』(電車で小1時間)と…
しかも今は家出していて
おばさんの家にいると…
『朝霧』(30分)という…
 
改札に入る前におばさんに
電話してくれと言うと
電話番号を覚えていないと…
そして母にかけますと…
 
電波がつながらない…
 
朝霧駅までの切符を買い
お金が無いようなので千円を渡す…
 
K君がおじさんの電話番号を
教えてくださいと…
鞄からノートを出してきた
(うん、中学生のノートだ)
 
書くものがないから駅員さんに
ペンを貸してもらい
そこで電話番号を書いた…
 
そしてK君は改札を通り
こちらにペコリとお辞儀して
階段を下りて行った…
 
家に着いたら電話するように
言ってたのだが…
かかって来なかった…
 
さっきかけた電話(お母さん)に
かけてみた…
 
つながった!女の人が出た!
 
 
”K君のお母さんですか?”
「いえ、お母さんの携帯ですが…」
 
聞けば妹という…
「Kはどこに居るのですか?
   今、お母さんが
   探しに行ってるんです!」
 
…家は高砂でなく公園の、
   乗せた駅の区だった…
…朝霧は全く関係がなかったようで…
 
 
少年は嘘をついた…
 
 
いきさつを話しお母さんが
帰ったら電話をして下さいと…
 
電話はかかって来なかった…
 
今も連絡がない…
 
警察から何もないので、
多分無事なんだろうとは思う…
 
…少年は嘘をついた…
 
ほぼ本当の話…