《Fractured 記憶 余韻|Echoes of a Broken Memory》シリーズ
— 記憶の裂け目に宿る、名づけられなかった感情たち —
ヤマオタケシ | Takeshi Yamao
「壊れた愛は、記憶の中で静かに響き続ける。」
かつて確かに存在したぬくもりは、鬼の顔や黒い裂け目となって内面に沈殿していく。
本シリーズは、愛着のズレや応答されなかった優しさ、理解されなかった感情が、どのように心のかたちを変容させていくのかを視覚化した試みである。
描かれる異形の子どもたちは、「逸脱」の象徴ではない。
それは自己保存のために変容したもうひとつの自己であり、見過ごされてきた“内面の叫び”の姿でもある。
作品には、日本のキャラクター文化やポップカルチャーを通過した造形や色彩感覚が流れている。
しかしそれは、単なる“ポップ”ではない。
鮮やかさの奥には、孤独、拒絶、怒り、そして言葉にならなかった感情の残響が沈んでいる。
私は、綺麗なものを綺麗なまま描きたいわけではない。
綺麗に描けるからこそ、その均衡が崩れ始める瞬間に残る感情や記憶の揺らぎを描いている。
作品に現れる裂け目やひび割れは、破壊の記号ではなく、「理解されなかった感情」が滲み出た痕跡である。
I do not paint monsters.
I paint the echoes of tenderness left unreceived.
本シリーズは、ジュリア・クリステヴァの「アブジェクション(abjection)」や、断片化された主体性への視点とも呼応している。
異形とは“排除された他者”ではなく、私たち自身の内部に存在する「見落とされた感情」の輪郭なのだ。
鑑賞者は作品を通して、説明できない違和感や、思い出せない記憶の余韻と静かに向き合うことになる。
それは、忘れられた場所で、まだ名づけられていない感情が揺れているような感覚かもしれない。
《Fractured 記憶 余韻》は、「Create New Value(新しい価値の創造)」という理念のもと、壊れた記憶の中にしか存在し得ない感受性や、新しいまなざしの可能性を探るシリーズである。
私たちは、失われたものの余韻の中で生きている。
そして、その余韻こそが、もう一度世界とつながるための小さな入口になるのだ。
