今回は「ブルースのコード進行」についてのお話です。
コード進行はジャズのアドリブを演奏する人たちにとって、
永遠のテーマであり、
ハードルであり、
便利な道具であり、
魅惑の存在?です。
コード進行が味方になるか、敵になるかによって、その人の音楽の楽しみ方が変わってくるかも知れません。
コード進行を勉強する時には言葉が沢山出てきます。
トニック、サブドミナント、ドミナント、サブドミナントマイナー、セカンダリードミナント、エクステンディットドミナント、モーダル何チャラ、リレーテッド何チャラ…
言葉が多すぎです
これらの言葉は「機能」と言って調性内におけるコードの役割を示したもので・・・
そんな説明が始まった途端、理論が嫌になる人もいるのではないでしょうか?・・・?
なんでジャズ理論ってこんなにややこしいのでしょう?
伝える為に作った「言葉」が、逆に理解を妨げているということかもしれません。
今回はシンプルにコード進行を理解する1つの言葉を紹介します。
それは「ドミナント」です。
ドミナント(dominant) は優位・支配と言う意味です
コードが支配する?って、どういうことでしょうか?
それはドミナントが「解決したい!」という(我が儘な?)性格を持っているという事なんです。
ドミナント・コードとは
これです。
1.3.5.b7です・・・
例えば、
こんな風に曲が終わったら・・・
譜例2)
ええ〜〜〜っ
ってなりませんか?
ドミナントはけじめをつけたいのです・・・
ドミナントには「動き方」が2つあります。
(本当は色々ありますが今はこの2つを覚えてください。)
それは「4度進行」と「半音進行」です。
譜例3)4度進行
譜例4)半音進行(俗に裏コード、サブ・ファイブなど呼ばれます)
CMaj7というコードに行きたいドミナント・コードは2つあるという事です。これはCm7でも同じです。
簡単ですがこれを使って色々出来ます。
2つのドミナントを利用して「リハモ」を体験してみよう〜
リハモとはコード進行を「直す」という事です。
リ=直す ハモ=和声
循環コード進行(Ⅰ Ⅵ Ⅱ Ⅴ)をリハモしよう〜
譜例5)
これをドミナントの2つの動きを利用してリハモします。
上記の進行は4度進行(4th↑)なので、これを半音進行(2nd↓)に変えます。
サウンドがガラリと変るでしょう?
この理屈をこねくり回すと、いろんな進行を作れます。
例えば・・・
4度進行(4th↑)と半音進行(2nd↓)を両方使うこともできます。
譜例7)ドミナントを2つに分ける。(弾いてみましょう〜)
注)これはセカンダリー・ドミナントと言いますが、理屈は後回しにして先ずドミナントの4度と半音の動きに注目してください)
半音と4度進行というキーワードでもう少し考えてみましょう・・・
譜例9)1625のヴァリエーション
という感じで、ドミナント・コードを使ってこねくり回すといくらでもリハモできます。
リハモとは、楽しいテクニックで、作曲、アレンジ、によし、伴奏によし、アドリブによし、ベースラインによし、いろんな利用価値があります。
この世には?いろんなリハモがありますが、今回はドミナント・コードの2つの動きを例に挙げて説明致しました。リハモナイズの話はまたいずれ深掘りしたいと思います。
それでこのリハモをブルース進行に当てはめてみましょう。
「ブルース進行のリハモ」
みんなでブルースのコード進行を考えよう〜〜〜のコーナ〜
4度進行、半音進行を使って、
先ずはシンプルな3コードブルースをリハモしてみましょう。
譜例10)シンプル・ブルース進行
譜例11)シンプル・ブルース進行のリハモ・ヴァージョン
半音のドミナントを使いました
どうですか?
おもしろくなりました(よね?)
続いてジャズ・ブルース進行をリハモしてみましょう。
譜例12)ジャズ・ブルース進行
譜例13)ジャズ・ブルース進行のリハモ・ヴァージョン
これも同様に半音ドミナントを使いました。
さらに、ジャズっぽくなりました(よね?)
ここで少しコード進行を利用したメロディの作り方を紹介します。
コード・トーンを使ってメロディを作るなんて、ブルースに対する裏切り行為的手法です・・・
譜例13のリハモを使ってコードトーンソロを作ってみた・・・
ね?ぞわぞわするでしょう?
コード・トーンを使ったアドリブの練習法については、第6回以降の授業でやりますので乞うご期待。
前回もお話したとおり・・・
ブルースの主役はメロディです。
主役が身につける衣装がコード進行とするならば、あなたはどんな服をデザインしますか?
ブルースのメロディは強いです
ので、結構どんな服も似合っちゃうかも?
デザイナーの腕の見せ所〜
世の中にはどんなブルースの進行があるのか、ちょっとのぞいてみましょう〜
ジャズ・ブルースにも微妙に違った進行が存在します。
譜例14)ジャズ・ブルース進行(DimやⅡ−Ⅴ進行を追加)
チャーリー・パーカーはユニークなオリジナルブルースをたくさん作曲しました。
(説明の為にinCで表記しています)
譜例15)ジャズ・ブルース進行(バード・チェンジ)
譜例16)ジャズ・ブルース進行(Relaxin At Camarillo)
ジョン・コルトレーンも面白いコード進行があります。
譜例17)
譜例18)コルトレーン・チェンジ・ブルース(Giant Stepsのコード進行を使って私が作りました)
マイルス・デイビス はこんなにシンプルな進行を作っています。
譜例19)
と、言う風にジャズ・ミュージシャン達が作ったブルースは面白くてちょっぴり意地悪な進行がたくさんあります。アドリブを面白くするといった意味もあるのでしょう〜
ロックミュージシャンのリハモも、おもしろい物がたくさんあります
譜例20)T.born walkerで有名なStormy Monday は様々なジャンルのミュージシャンがカヴァーしています。
小節数もヴァリエーションがあります。
(必ずしも12小節ではない)
譜例21)16小節ブルースです。
譜例22)16小節、ゴスペルからの影響も感じられるユニークなコード進行のブルース・スタンダードです。
Peter Greenの十八番です。
譜例23)これなんかもうブルースじゃない!という声もちらほらですがブルース・ミュージシャン達に愛されている曲です。Eric Claptonの十八番です。
ジャムセッションで大人気?のブルース進行をあれこれ紹介しました。
是非聞いてみて弾いてみてジャムってくださいね。
ブルース進行は基本的に
と大きく捉えて考えれば良いと思います。
あるいは・・・
AAB形式にメロディに任せちゃってコード進行はさらに自由に発想してもいいかもしれませんね。
メロディや歌詞がAAB形式になっていればトニック、サブドミ、ドミナントといったコードの助けを借りずとも立派なブルースとして成立すると思います。
皆さんも想像を膨らまして面白いブルース進行を考えてくださいね。
先週はブルースのメロディのお話をしました・・・
ブルースの原型と言われている「ワークソング」や「フィールドハラー」には元々コード(和音)はありませんでした。
メロディだけの音楽です。
コードは後で付けたのです(誰かが・・・)
初期のブルースの伴奏はコード(和音)すら無かったと(私は)思います。
ルートだけだったかもしれません・・・
いやリズムだけ、ビートだけ、アクセントだけ、手拍子だけ・・・かも?
大事なことは、南部で生まれた「ワークソング」「フィールドハラー」達は旅をしたと言うことです。
初期のブルースは南部ど真ん中ミシシッピー・デルタで形になっていったそうです。
ギターを使って弾き語りをするおなじみのブルース誕生です〜
デルタ・ブルースの代表選手、Sun Houseの伴奏は完全なに3コードスタイルです。(G Blues)1920年代のブルースは録音が残されていて今も聞く事が出来ます。
デルタ・ブルースの代表的ミュージシャン
Sun House
Charley Patton
Robert Johnson
デルタ・ブルースは旅をしてシカゴにたどり着きます。
そこでパワーアップしたシカゴ・ブルースになったのです。
シカゴ・ブルースの代表的ミュージシャン
Muddy Waters
Howlin' Wolf
Otis Rush
シカゴ・ブルースはイギリスのロックミュージシャン達にも影響を与えました。
シカゴ・ブルースの映画
私の大好きなユニーク・ブルース・ミュージシャンを紹介します。
Blind Blake
ブルースの伴奏という点ではこの人は特筆ものです。
ラグタイム・ブルースの達人です。
元々ピアノの演奏スタイルだったラグタイムをギターでやっちゃった〜ちょっとどうかしてる?人ですが、めちゃくちゃ古いレコーディング(1926)にも関わらず完璧に全部の音が聞き取れます(しかも1音たりともリズムが崩れない・・・)
こちらの曲も3コードから離れて西洋的(ピアノ的)和声感覚でブルースを表現しています。
話が脱線しましたが、メロディしかなかったブルースの原型(ブルース・スケール等)を皆でよってたかってアレンジ&リハモ大会をやりまくった結果?R&B、ゴスペル、ソウル、ファンク、ロケンロール、ロック、果てはポップ&歌謡曲からBTSまで・・・ブルースのファッションショー未だ終わらず・・・いやはや、今更ながらブルースの奥と幅には驚かされるばかりです。
音楽を勉強される方は是非何処かの機会で、ブルースのシャワーを浴びてみるのも良いと思います。
さて・・・
それでは皆さんお待ちかね、
How to Improvise第一回の課題を説明致します。
課題発表は2023/5/20(月)です
ブルースのテーマAAB(1コーラス=12小節)
ブルースの書きソロ(1コーラス=12小節)
合計24小節
を作ってください。
メロディはAAB形式に(なるべく)なる様に。
アドリブは自由に書きソロを作ってください。
キー、テンポは自由です。
楽譜、音源の提出(又は演奏)でお願いします。
私のGoogle Classの中に「ブルース課題」というタイトルの提出箱を作りますのでそこに提出してください。
提出期限は5月19日の23時59分です。
最後に私が作った課題例を載せておきます。
稚拙な例ですが参考にしてくださいませ。