鴨野橋に、突然突き付けられた危機的状況。
しかし、そんなシチュエーションに在っても、鴨野橋の口角はつり上がっていた。
それは、溢れ出んばかりの余裕が、表情に如実に現れた結果だった。
これは、危機的状況に非ず…彼の経験値は、弓を構えた松井を眼前に、この結論を導きだしたのだ。
松井が弓を引き、鴨野橋が余裕の笑みを浮かべる…この間、僅か8秒。
この、遅いとも早いともとれる秒数で、鴨野橋は松井が弓を自らに射るのを、躊躇していると判断した。
その判断は、決して間違ってはいなかった。
普通に考えれば、どれだけの稽古を積んだとしても、人に向かって矢を射る経験をした事などある筈がないし、それをする恐怖心なら、誰より一番自分が知っている。
それを、ただの弓道経験者の一女子高生が、そうやすやすと出来るものでもないし、やすやすやられてたまる訳がない。
ただ、矢がこちらに飛んでくる可能性があるとすれば、ハプニング…すなわち、彼女がパニックに陥り、弓を引いた手を離してしまった時。
当たる確率は低いが、矢が飛んでくる以上危険が無い訳ではない。
気が動転しているのであれば、話し合いなどで解決出来る問題でも無いから、自分が取るべき行動は一つ。
弓から手が離れる前に、距離を詰めて奪い取る。
鴨野橋が、瞬時に頭の中で現状を打破する方法を打ち立てると、行動に移すべく、地面に貼り付けになっていた片足をスッと浮かせる。
するとその瞬間、突然右の肩と胸の間辺りに、凄まじい激痛が走った。
事態が飲み込めない鴨野橋が、痛みの原因を確認しようと、その箇所に目をやる。
そこからは、ステンレス性の棒状の物が、自分の体から長く伸びていた。
まだ事態がよく飲み込めない鴨野橋が、脂汗が滲む顔を松井に向けると、松井はこちらを凛とした表情で見ている。
その手からは、矢が消えていた。
ここでようやく、自分がおかれた状況を理解した。
自分は弓を射られた…しかも、死にはしないが、確実に致命傷になるような場所を的確に。
躊躇っている?
否…松井は微塵も躊躇ってなどいなかった。
気が動転している?
否…松井の思考は冷静そのものだった。
明鏡止水の精神と、非日常に対する対応と心構えを、常日頃から心掛けている松井の危機管理能力は、鴨野橋が言う一女子高生のそれとは、明らかに違っていた。
遅いとも早いともとれる8秒間…この間を、鴨野橋は読み違えた。
そしてこの瞬間、前田達の奇襲は奇跡的確率を打ち出して、見事成功した。
しかし、そんなシチュエーションに在っても、鴨野橋の口角はつり上がっていた。
それは、溢れ出んばかりの余裕が、表情に如実に現れた結果だった。
これは、危機的状況に非ず…彼の経験値は、弓を構えた松井を眼前に、この結論を導きだしたのだ。
松井が弓を引き、鴨野橋が余裕の笑みを浮かべる…この間、僅か8秒。
この、遅いとも早いともとれる秒数で、鴨野橋は松井が弓を自らに射るのを、躊躇していると判断した。
その判断は、決して間違ってはいなかった。
普通に考えれば、どれだけの稽古を積んだとしても、人に向かって矢を射る経験をした事などある筈がないし、それをする恐怖心なら、誰より一番自分が知っている。
それを、ただの弓道経験者の一女子高生が、そうやすやすと出来るものでもないし、やすやすやられてたまる訳がない。
ただ、矢がこちらに飛んでくる可能性があるとすれば、ハプニング…すなわち、彼女がパニックに陥り、弓を引いた手を離してしまった時。
当たる確率は低いが、矢が飛んでくる以上危険が無い訳ではない。
気が動転しているのであれば、話し合いなどで解決出来る問題でも無いから、自分が取るべき行動は一つ。
弓から手が離れる前に、距離を詰めて奪い取る。
鴨野橋が、瞬時に頭の中で現状を打破する方法を打ち立てると、行動に移すべく、地面に貼り付けになっていた片足をスッと浮かせる。
するとその瞬間、突然右の肩と胸の間辺りに、凄まじい激痛が走った。
事態が飲み込めない鴨野橋が、痛みの原因を確認しようと、その箇所に目をやる。
そこからは、ステンレス性の棒状の物が、自分の体から長く伸びていた。
まだ事態がよく飲み込めない鴨野橋が、脂汗が滲む顔を松井に向けると、松井はこちらを凛とした表情で見ている。
その手からは、矢が消えていた。
ここでようやく、自分がおかれた状況を理解した。
自分は弓を射られた…しかも、死にはしないが、確実に致命傷になるような場所を的確に。
躊躇っている?
否…松井は微塵も躊躇ってなどいなかった。
気が動転している?
否…松井の思考は冷静そのものだった。
明鏡止水の精神と、非日常に対する対応と心構えを、常日頃から心掛けている松井の危機管理能力は、鴨野橋が言う一女子高生のそれとは、明らかに違っていた。
遅いとも早いともとれる8秒間…この間を、鴨野橋は読み違えた。
そしてこの瞬間、前田達の奇襲は奇跡的確率を打ち出して、見事成功した。