大河ドラマの解説コーナー㊽ #どうする家康 最終回 | わんわん物語

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~異界から目薬~

神の君へとなる回です。

解説コーナーは最終回ですが、もう1回分1年を通しての感想を書く予定です。

 

というか天海!

天海が登場するけどキャストがシークレットってことでネットでざわついてまして、ここはもしかして「麒麟がくる」で光秀だった長谷川博己だったら激熱だと誰もが思っていたのですが、昨年大河で北条義時だった小栗旬に「源頼朝だってどんな人物かわかりゃしねえ」ってセリフを言わせる面白演出をしてくれました。

 

去年はあれだけ頼朝に振り回されてそれでも尊敬して鎌倉幕府存続のためにがんばったのに。

 

でも長谷川さんだったら号泣してたと思う。

 

この演出のために方広寺の鐘銘事件にも関わっていたのに金地院崇伝と林羅山だけ出して天海は隠しておいたのね。

 

南光坊天海、比叡山の高位の僧でいつの間にか徳川家にいて関ケ原前後くらいから家康のブレーンの一人となっていた人です。

 

家康のブレーンになった時は既に高齢で、前半生があまりわかっておらず、謎の人物な雰囲気と不自然な状況証拠から明智光秀と同一人物説があるのです。

 

歴史学者からの支持は少ないけど、最終回後半に出てきた三代将軍家光の乳母の春日局は明智光秀の重臣斎藤利三の娘だし、大坂の陣で豊臣方で参戦した光秀の孫は助命されてるしで、なんか怪しい。

 

詳しくはwikiで「天海=明智光秀説」っていうのを見てもらえれば書いてあるけど、他にも稲葉氏が老中になったり遠山氏が江戸で奉行やってたりの光秀と同じ美濃出身の譜代でも大勢力でもなく徳川に大きな功績があったわけでもないところが幕府の要職にいるのも変な感じ。

 

本能寺の変の時に50代だった光秀がその後から高位の僧になれるわけないだろ、しかも焼き討ちした比叡山の僧なんて、と思うかもしれないけど、家康が快く光秀を迎えたなら経歴なんて偽の作り上げたものだし、むしろ幹部の生き残りがほぼいなくて光秀を知らない比叡山の僧がちょうど良かったりするかもしれない。

 

天海が光秀であれば本能寺の変は家康と光秀の共犯で、秀吉の中国大返しが予想外で天下を獲られてしまったけど光秀逃げ延びて天海となって家康を支えてたっていう熱いストーリーが想像できるのに。

 

まあ、少し年齢が合わなさそうなのと、光秀だったら誰か気付くだろってことなのと、はっきり証拠があるわけじゃないので歴史のロマンの部分ですね。

 

天海は崇伝と家康の神号について権現にするか明神にするかで争って、自分の流派の権現を勝ち取り、家康は東照大権現となったのです。

 

なので、江戸時代の史書に権現とか東照宮とか出てきたら家康のことです。

「徳川実紀」という史書も、家康の部分のタイトルは「東照宮御実紀」なので探す時は気をつけましょう。

 

「麒麟がくる」のラストがね、本能寺の変の後は光秀が死ぬシーンが無く、どこかで生きてるかも知れないのを匂わす終わり方だったから長谷川さん期待したんだけども。

 

「鎌倉殿の13人」ではラストに松潤演じる家康が出てきて、ドラマの部分の鎌倉時代の史書「吾妻鑑」を読んで「おもしれー」というところで終わっていたので、今回のラストでまた吾妻鏡が出てきて、来年大河の源氏物語も出てくる、という、こういう演出は粋で良いですね。

 

ただ、なぜ源氏物語が夕顔の巻だったのか、、、

 

1巻目ならば桐壷だし、物語全体のイメージなら若紫だと思うんだけども、夕顔。。。

 

生霊とか呪いとかの話になるんだろうか。。。

だったら安倍のサンタマリア大活躍じゃんか。

 

ま、来年の話はいいとして、最終回は大阪夏の陣で真田幸村が突撃してくるところからでした。

 

勝利するための唯一の手段は家康の首を獲ること、と言っていましたが、家康が出陣して来なかったらどうするつもりだったんでしょうね。

 

夏の陣はもはや集まった牢人たちが華々しく死ぬための自棄っぱちの戦だったと思うのですが、これはドラマや小説の影響なのかなあ。

 

冬の陣が不完全燃焼すぎたので、負けるならちゃんと討ち死にしたい、という牢人たちの希望ですね。

 

このまま召し放たれたら再び貧困の牢人生活に戻るだけ、しかも今までは再び戦を起こす希望があったけど今度は全く希望の無い牢人生活。

 

ならば名を残すような戦い方をすれば、それでもし生き残れたらどこかの大名が召し抱えてくれるかもしれない、死んでも自分の武勇が伝われば親族が召し抱えられるかもしれない、そんな戦だったイメージです。

 

徳川方の武士たちにとっては、前のブログでも書きましたがこれが初陣という者が多く、しかも最後の戦かもしれないということで、この戦で手柄を立てなければ自身の武勇伝を得る機会がなくなってしまうという意識があったと思います。

 

祖父や父が戦乱の中で幾多もの武勇伝を持っているけど自分には無いために、手柄を欲している。

 

しかも勝ち戦なのは確定だから、勝ち戦では死にたくないわけですよ。

 

負け戦ならば華々しく壮絶な討ち死には後世の語り草になる覚悟もできるけど、勝ち戦じゃね、勝って栄誉を手にしたいわけですよ。

 

そういうところで真田隊の一点集中で捨て身の猛攻の前に本陣が崩れるということになったと思うんだけど、家康を守らず逃げた者たちは戦後に厳しく詮議されることになりました。

 

ドラマではその辺は触れられずに、家康の覚悟のみが描かれたんだけども、その覚悟の部分でなぜ圧倒的に優勢な徳川軍の本陣が崩れることになったのかというところを説明したんじゃないかと。

 

あってはならない事態が起こったわけで、真田幸村が凄すぎて家康の首まであと一歩だったみたいな感じになってるけどよく考えたらというかよく考えなくても不思議な戦だよね。

 

大阪方は隊を分けて行軍して合流という作戦すら上手くできずに各個撃破されてるような連携の悪さなのに。

 

次々と有名武将が討ち取られて、秀頼、淀殿ら主だった者たち最後の30名ほどで山里曲輪というところに追い詰められます。

 

ここで最終的には全員自害したり火薬に引火して爆発したような記述があったり、いろんな人の日記で誤報も交えたたくさんの記録があるのですが、追い詰められてから自害するまでにどんな会話があったのか等は全員死んでしまったのでドラマで描かれているのは創作です。

 

「こんなはずじゃなかった」と後悔して死んだのか、徳川に恨みを残して死んだのか、それとも例え死すとも豊臣の誇りを貫いたと清々しく死んだのか、脚本家演出家の腕の見せどころですね。

 

千姫だけは脱出するのですが、脱出の際にドラマではカットだったエピソードがあります。

 

家康は千姫を救出しようとしていて、ほんとかどうか定かではないけど千姫を救出した者を次の千姫の夫とするというような触れがあって、坂崎直盛(旧名宇喜多詮家、宇喜多秀家の従兄弟)が脱出してくる千姫に遭遇して救出することになるんだけども、坂崎直盛に千姫を与えられることはなく、怒った直盛は千姫を強奪しようとして失敗、直盛は討たれるか切腹かして死んで坂崎家が断絶という、千姫事件です。

 

詳しくは千姫事件か坂崎直盛でググればwikiが出てきます。

 

そして、千姫による秀頼の助命嘆願を断って秀頼を死なせたのは秀忠と伝わっていて、千姫の救出に喜ぶわけでもなく冷酷に処断したと伝わっているけども、ドラマでは熱い展開の演出でした。

 

こうして豊臣は滅んで元号も元和に変わって”元和偃武”と呼ばれる平和が訪れるわけだけども、家康が死ぬのは1年後。

 

死の間際の家康については天ぷらにあたった逸話とかありますが、ドラマでは鯉のエピソードで家康が回想シーンに潜り込んでメインキャラ全員登場の大団円の演出でした。

 

視聴者としてはやっぱ最終回の時にはメインキャラがほとんど死んでしまっている中での再登場は嬉しいわけですが、鯉の話はモデルがあります。

 

時期は回想シーンと同じくらいの時期ですが、鈴木久三郎という家臣が家康が大事にしていた鯉を食べて、家康が激怒し手討ちにしようとしました。

鈴木久三郎は「鯉や鳥獣の命と人の命どちらが大事か」と言い、家康は自分の鷹狩場で鳥獣を狩ったものを処罰する命令を出したのを諌められていると気付き、久三郎に礼を言ったという逸話です。

 

鈴木久三郎は、三方原の時のブログにも書いたかな?

家康の影武者となった家臣の一人で、この人は生還しています。

 

そんな逸話を、メインキャラに置き換えた演出ですね。

 

なお、家康は死後に神となったと思うんだけど、生きてるうちから神だったのかな。

神号は存命のうちに決まっていたかもしれないけど、生きてるうちの呼び名は権現様じゃないと思う。

 

最後は大御所ではなく、大阪の陣の後に太政大臣に任じられてからは唐名呼びの”相国様”と呼ばれていたようで、三河物語でも相国様と書かれています。

 

江戸時代に書かれたものだと、”東照宮”とかあきらかに家康を指す場合は”宮”だけとか、”権現”、”大権現”と書かれているものが多いですね。

 

ともあれ、後半かなりファンタジーで鯉の話の部分は何を見せられているんだろうと思いましたが、素晴らしい最終回だったと思います。

 

大河の最終回って主人公が死ぬ回なので悲しいんだけど、家康は幸せだったのかっていう疑問の答えを描いてくれて温かみのある最終回だったと思います。

 

ちなみに、最終回の話で他の作品の紹介するのもアレなんだけど、いつも引用する隆慶一郎の「影武者徳川家康」でも物語のラストは影武者徳川家康での最愛の側室お梶の方が「幸せでした」と言って終わります。

 

苦しい戦いの中でも信頼できる仲間たちと幸せに生き抜いてきたというのは、見ている側も救われますね。

 

最後に、このブログを書くにあたって参考にした文献です。

 

もっとあるけど。

今見えるとこにある分だけ。

 

名将言行録とか武功夜話の秀吉編とかどこ行ったんだろ。。

 

次回は1年分まとめた感想コーナーです。

 

もう1回分お付き合いくださいませ。