2018年10月6日。
深く生い茂った草むらの上に立っていた私が腕時計に目をやると、
時刻は午前11時15分過ぎを指していました。
翌日の10月7日は、新潟県で2年に1回開催される「えちご・くびき野100kmマラソン」の大会当日であり、
本来であれば、マラソンを趣味とする我が夫婦はこの大会の100km、ではなく60kmの部に2回目の参戦を果たす、予定でした。
しかし我々は前日までに、上越妙高までの新幹線チケットと現地ホテルのキャンセルを済ませ、
レースに向けての準備も行うことなく、本来ならば新潟へ向かう新幹線の車内であるこの時間、いつも練習の場として利用させて頂いている近所の公園を2人でウォーキングをしておりました。
普段の距離はフルマラソンまで。楽しく走れるからという理由でこの大会だけウルトラマラソンを走る嫁さんは直前に腰を痛め、一方でこれが11回目のウルトラマラソンとなるはずだった私も体調がすぐれず、どちらも完走は難しいだろうという判断により、今回欠場を決めたのであります。
結果としては残念ながら、台風25号の影響により前日の夜に大会そのものが中止となってしまいましたが、実施の可否に関わらず我々は最初から現地に赴くことをあきらめていたわけです。
リハビリを兼ねて公園を1時間ほど歩き、
そろそろ帰って昼ごはんにしようかと、公園の周回道路から外れて階段を降り、
自宅に向かおうとしたその時。
私が無意識に左を向いたその先に、生き物の気配がありました。
……とはいえ、こういう時は「猫」と相場が決まっていますが。
嫁さんを呼び止め、2人で気配の先を見ると、
我々の視線の約10m先にいたのは、
草むらの中から体を起こしてこちらを見つめる1頭の三毛猫でした。
思えば、こういう状況はこれが初めてではありません。
「猫を見つけた」「嫁さんを呼び止めた」までは、これまでにもありました。
でもその後は「猫がどこかへ逃げていく」という流れになるので、
いずれ忘れてしまう小さな出来事でしかないのが通常です。
でも、この日は違いました。
この三毛猫はなぜか、違っていました。
目線を逸らさない。
動じない。
近寄っても、逃げない。
警戒も威嚇もない。
高い鳴き声を発しながら、
しゃがみ込んだ私の足もとにすり寄る三毛猫 ―――――― 。
この日、本来ならこの場所にいるはずではなかった我々の前に、
この日、本来なら決して出会うはずではなかった三毛猫。
……この時、この場所に「運命」がありました。
(プロローグ 2)につづく
※この話はフィクションのように見えて実話です。
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