藤村 冨美男

(1916-1992、広島県呉出身)

 

とにかく、熱い男でプロ野球選手のショーマンシップに優れた選手であった

藤村冨美男は野球をするために生まれたような人間だった。

 

のちに南海ホークスの監督になる鶴岡一人と同期で、

県内では甲子園目指して競い、藤村の呉港中学が甲子園に出場。

そして、今でも伝説となた選手たちと勝負をし「甲子園の申し子」と言われる活躍をした。

 

中学では投手として大活躍、その時からスター選手であった。

1934(昭和9)年夏の甲子園大会で見事全国制覇。

卒業後は法政大学に進学する予定であった。

しかし、藤村の家族(父親等)が冨美男の意志とは別に

大阪タイガース(現阪神タイガース)と契約してしまい、

1936(昭和11)年に大阪タイガースに入団。

のちに、鶴岡は

法政大学で一緒に野球をやったら、ツル、フジコンビの二遊間、三遊間が

形成されたかもしれない」と残念がった。

 

タイガース入団当初は投手として活躍し

タイガース最初の公式戦の名古屋金鯱戦で初勝利。

それも、1安打完封勝利と実力を発揮。

また、7月の巨人戦でタイガース史上巨人戦初勝利の記録つくり、

規定打席不足ながら2本塁打で初代本塁打王を獲得。

初年度からスターとしての「初物」記録を達成する星を持っている。

 

1937(昭和12)年から二塁手兼任になるが、徐々に内野手としての出場が増える。

しかし、戦前のタイガースは大学出身のスター選手が多く、

堅実に試合は出場していたが、わき役的な役割だった。

1939(昭和14)年から1942(昭和17)年まで徴兵された。

1944(昭和19)年に打点王、1945(昭和20)年の正月大会にも出場した。

 

 

戦後はすぐにプロ野球界へ復帰。

1945(昭和20)年11月23日の戦後初のプロ野球試合

東西対抗戦(明治神宮球場)では西軍の4番としてランニング本塁打を打ち、

これも、戦後初の本塁打として記録された。

 

1946(昭和21)年にリーグ戦が始まり、監督と兼任として出場。

投手としても13勝2敗の安定性で活躍した。

 

1947(昭和22)年から打者として専任し、打点王を獲得優勝に貢献した。

タイガースダイナマイト打線の中核として磨きがかかり

1948(昭和23)年に慶応大学の別当薫が入団し、打線の破壊力が付いたが

ゴルフクラブをヒントに「物干し竿」と言われる

37~38尺(約94センチ)の長いバットで長打力をつけた。

173センチの身長で94センチのバットを、小指をグリップから出して

思い切り打った風景は、ファンを驚かせたことだろう。

 

1949(昭和24)年には46本塁打と当時としては驚異的な数字で

本塁打王を獲得し、藤村はタイガースだけでなく球界を代表するスター選手となった。

その後、1955(昭和30)年まで7年連続20本塁打以上を放った。

 

スランプ期間も短いのも特徴で

「藤村は試合前の練習ですぐに自分のフォームを取り戻した」と

松木謙治郎が語っていた。

 

当時の雑誌を見ても、巻頭特集は藤村冨美男が多くをさいている。

その人気ぶりがわかる。

 

藤村は闘志むき出しのプレーでチームを引っ張り、

ショーマンシップにあふれ、いつも観客を意識し、そして自分の見せ方も考えていた。

当時としては、エンターテイメントとしても進んだ考えだったので、

チーム内では誤解も生んだ。それは、自由に動くスターは故の宿命かもしれない。

 

日本初のサイクル安打(1948年10月2日)、

2試合連続の満塁本塁打(1953年4月2日、3日)など派手な記録もある。

投手として通算成績も素晴らしく

通算34勝11敗、勝率.756の高い勝率、防御率2.35の成績を残した。

 

1955年以降は藤村の衰えとともに、藤村のキャラクターもあり

球団のゴタゴタにも関連していった。

兼任監督時代には、選手たちから排斥運動を起こされ、

今も言われている「阪神お家騒動」の始まりも作ってしまった。

 

引退後、背番号10はタイガースの永久欠番となり、

今も別格の「ミスタータイガース」ととして歴史に残る野球人だ。

 

藤村のプレースタイルは長嶋茂雄も影響を受けたと公言し、

漫画家水島新司の「男どアホウ甲子園」の主人公の名字を藤村としている。

晩年、ドラマ「必殺」シリーズにも出演し驚いた記憶がある。

 

とにかく、戦前はライト打ちの巧さで、1950年代はレフトに引っ張る長打で

プロ野球の人気を支えた。

藤村冨美男の存在は長嶋茂雄以前のスター選手として

最大級の賛辞し、語り続けないといけない野球人です。

 

5月28日は、初代ミスタータイガース 藤村富美男さんの命日(1992年)

 

1974(昭和49)年野球殿堂入り

 

 

藤村冨美男 全成績 (日本プロ野球記録)

 

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