向精神薬 過剰処方防止対策へ
NHKニュース 9月10日 6時40分  
自殺した人の中に精神疾患の治療で処方された向精神薬を過剰に服用していたケースが多いことから、は、不適切な処方がないか実態調査を行うとともに、薬剤師にも協力を求めて過剰な処方を防ぐ対策に乗り出す方針を決めました。
この方針は、自殺やうつ病の対策を検討する厚生労働省のプロジェクトチームが、9日、明らかにしたものです。それによりますと、自殺した人の中には、精神疾患の治療で医師から多くの種類の向精神薬を処方され、過剰に服用していたケースが少なくないとして、全国およそ30万件のレセプト=診療報酬明細書をチェックして向精神薬の不適切な処方について実態を調査するということです。また、医師が作成した処方せんに従って薬を販売する薬剤師にも協力を求めて、処方された薬が適量かどうかチェックしてもらう仕組みを作り、過剰な処方を防ぐ対策に乗り出すことになりました。ただ、向精神薬の処方を不用意に規制すると患者を精神医療から遠ざけてしまうおそれもあるとして、プロジェクトチームは、処方の規制そのものには慎重な姿勢を示しています。厚生労働省は「日本では外国よりも多くの種類の薬が患者に投与されているという指摘があり、向精神薬の適正な処方を促していきたい」と話しています
大阪新希望の会「抗議文」 1980年02月20日


「大阪新希望の会は、精神障害者をかかえる家族の集まりです。精神病に対する根強い偏見や差別が存在する日本の社会では、患者のもならず家族にのしかかる心理的重圧は大きく、また長引く入院・通院が顕在的負担をも大きくしています。しかし私たちは、患者を阻害した形で家族だけが楽になることを求めるのは間違いだと考えており、直接患者とかかわる家族自身の改革を目指して学習を続ける一方、精神医療を改革し、患者さんたちの主体的活動を支え、社会の差別や偏見を除去するためにも、家族が患者・医療従事者と力を合わせて運動を続けていくことが必要なのだと考えて活動してきました。
 したがって、私たちが精神医療に求めるものは、一口に言えば社会に向かって開かれた医療、すなわち開放的な環境でのきめ細かな治療と一日も早く社会での自立を可能ならしめるための多種多様な創造的活動ということになります。私たちがやむなく患者を精神病院に入院させる場合もそこでの有効な治療を求めているからであって、社会から隔離収容してもらうためでもなければ、ましてや人権を無視した劣悪な処遇の犠牲にするためでは断じてありません。
 にもかかわらず、昨年8月に起こった大和川病院での看護人による患者への暴行致死事件は、鍵と鉄格子に閉ざされた「精神病院」という名の密室で、抵抗することも逃れることも不可能な弱い立場の患者さんを虫けらのように殺して恥じない恐るべき収容所がいまなお存在し続ける事実を物語っています。「寝た箱は規律違反」という理由で、49歳の患者さんが3人の看護人から2時間にもわたってなぐる・けるの暴行を受け、亡くなられたその凄惨な場面を想像するだけでも、患者をかかえる家族として、戦慄と激しい憤りを禁じえません。
 しかし、この事件は、精神病院の実態を考えるとき、むしろ氷山の一角にすぎぬともいえるでしょう。親権に治療に取り組む場であるべき精神病院を、単なる金儲けの具と考え、すでに病いという苦しみを背負っている患者さんをさらに犠牲とするような「病院」の存在を、私たちは到底ゆるすことができません。病院の名に値しないばかりか、精神医療の改革を目指して地道に努力を続ける動きに水を浴びせるようなこの種の収容所は、即刻なくしていかなければならないと考えます。
 と同時に、府下の精神病院を指導監督する立場にありながら、府衛生部がその責任を十分果たさず、従来から劣悪な病院をそのままに放置し続けた怠慢に対して激しい憤りを覚えます。当の大和川病院(旧安田病院)は、44年にも暴行事件を起こして問題となった病院であり、同じような事件が繰り返されたということは、この10年間府の指導が効果をあげていないということになります。言うまでもなく今回の事件では、当該看護人の罪にとどまらず、その背後にある病院の体質そのものが告発されなければなりません。
 府衛生部は、これを契機に、府下の精神病院について改めて調査を行い、病院職員を質・量ともに充実させるのをはじめ、通信・面会の自由の徹底等、患者の人権が十分守られることを前提とした治療が保障されるよう強力に指導すべきであると考えます。また治療の目標は社会での自立にあるのですから、必要以上に入院を長びかせることなく、患者・家族が安心して治療を受けられるよう要望します。 
  
   大阪府知事殿      1980年2月20日  大阪希望の会  代表 高島保次郎」

『精神神経学雑誌』(1981)〔83(7):466〕より引用



*作成:仲 アサヨ

協会誌巻頭言 会長 山崎  學

都立松沢病院解体論
2010/07

東京都世田谷区に都立松沢病院がある。ウィキペディアによると松沢病院は、1872(明治5)年に廃藩置県の混乱によって生まれた浮浪者や行き場のない病人を収容するために本郷に設置された東京府養育院に始まる。その後、紆余曲折があって1919年、現在地の松沢に移転し東京府松沢病院となった。現在、精神科病床1,207床、保護室55床、一般病床90床、計1,352床の巨大自治体立病院となっている。2009年公営企業年鑑によれば医業収益52億円、医業外収益50億円、人件費61億円と、ご多分にもれず補助金漬け大赤字病院になっている。

本来、公的病院は政策医療をするために多額の補助金が支出されているはずであるが、東京都における救急当番の大部分は東京精神科病院協会に委ねられていると聞いている。政策医療で行われるはずの長期治療困難例や、殺人その他犯罪歴のある精神障害者や、治療可能性のない医療観察法がらみの患者の大部分は、民間病院で入院処遇が行われているのが現実である。

こうしたなかで平成22年5月28日、都立松沢病院岡崎祐士院長を座長とする「こころの健康政策構想会議」は、当事者・家族・国民のニーズに添った精神保健医療改革の実現に向けた提言といった趣旨の報告書をまとめた。岡崎院長によると、長妻厚生労働大臣の要請で有志に呼びかけて検討委員会を立ち上げたという。しかし、精神科病棟の90%を占める日本精神科病院協会にはまったく相談はなく、あくまで仲良しグループによる検討会であった。報告書によると「当事者が住む場所や医療と生活支援のサービスを受ける権利を失うことがないように十分な配慮をしつつ、全国の精神科病床を半減することを決め…行政の責任で住居を確保し、生活支援サービスとアウトリーチ医療で支えることで地域生活を支援し、社会的入院を解消していきます(20頁)」とあり、さらに改革の期限と数値目標について、改革は全体として7年計画で行い、2011~2012年度(平成23~24年度)を地域こころの健康推進先行事業の2年間として、全国50エリアについて改革を試行するとし、1年15%ずつの改革を目標とし、7年間で合計80%の実施を目指す(23頁)」としている。

病床削減は、学者が考えるほど簡単なことではない。国の政策で造られた36万床の精神科病床を18万床削減するには、まず削減する病床の受け皿づくりから始めなければならないのが道理である。くわえて、少子高齢化で新たな入院が必要とされる認知症の病床の整備も喫緊の課題である。また、諸外国の例をみても、多職種チーム医療やアウトリーチ医療は入院医療の3倍は費用がかかることを知っておくべきである。

まず、費用対効果の悪い自治体病院の精神科病床を順番に半減してもらおう。その成果をみてから民間精神科病院もこのプロジェクトに参加するかどうかを決めたいと思う。都立松沢病院1,262床を半分にしてみよう。隗より始めよである。