著者:梶井基次郎

 

内容:私は体調の悪いときに美しいものを見る贅沢をしたくなる。しかし最近は馴染みの丸善に行くのも気が重い。ある日檸檬を買った私は、その香りや色に刺激され、丸善の棚に檸檬一つを置いてくる。現実に傷つき病魔と闘いながら、繊細な感受性を表した表題作ほか、「城のある町にて」「雪後」などを収録。(「BOOK」データベースより)

 

 

 大分久々のまたレビューとなります笑。以前のように、ほぼ毎日のような投稿ができず、もはや死に体でしょうか笑。今後もマイペースで細々と、自分の為にただ書き連ねていこうとは思っています笑。さて、こちらはまあ所謂、日本文学の名作と呼ばれた作品の一つですね。自分は今まで読んだ事もありませんでしたし、梶井基次郎作品というのも初めて触れました。前々から気にはなっていました。と言うのも、よく推薦図書なんかで選ばれている印象がありますし、本屋さんなんかに行っても、夏休みのフェアとかで平積みされているのをよく見かけていましたので。まあでも、ああやって「読書感想文にお勧め」みたいな、推薦図書というのは、それこそ学生時代なんていうのは敬遠しがちですよね笑。どうせ小難しい話だろうとか、そもそも教科書に載るような作品を、心底楽しめと言われても、正直難しいのかなと笑。自分もある程度年齢を重ねて、この手の文学作品をアレルギー反応なく読めるようになりましたが、10代や20代前半では気にはなっていても、まあ手に取る優先順位としては低かったですからね笑。まあ、内容紹介にも書かれていますし、かなり有名な所だとは思いますが、文章が瑞々しいというのが、この作品のまず特筆すべき点だそうです。そもそも、内容自体は別に爽やかといった感じではないんですよね。どちらかと言うと、鬱々としたものが多いですし、それこそ病気の登場人物であるとか、「明るい」「爽やか」とか、そんな印象とはかけ離れたものだと思います。

 

 ただ、文章の美しさと言うのか、それによって、暗い話、あるいは暗い状況においても、一点の光が見えるような、そんな作品になっているのだと思います。登場人物が理由のない不安であるとか、無気力を患っている事が多いですけども、これが正に若者を象徴する感情なのでしょうかね。とは言っても、今の10代や20代が本当にそうなのかはわかりませんがね笑。まあ、たくさん若者だっているわけですから、そういう感情を持つ人もいるでしょうし、もっと言えば、別に若い人に限った感情でもなく、いい大人であっても、そういう状況に見舞われる事は十分あるでしょう。それこそ、精神的な病として今の時代であれば、判断される事もあるでしょうし。この表題作の「檸檬」の中では、正にその「檸檬」の存在が、落ち込みがちであった主人公の処方箋となるのですが、これがイマイチ自分はわからない世界観だったのですがね笑。要はその「美しいもの」というその存在が、心の処方箋になりうるという事だとは思います。この小説ではたまたまそれが「檸檬」の形や色であっただけでありまして、音楽や小説や、あるいは美しい景色や、そういうわかり易いものであればもっと伝わり易かったのかもしれませんけども。結局「芸術」のお話に近いのかなと思いましたね。また、作者の梶井さんが若くして亡くなっておりますし、体が弱い方だったそうですから、一種のその命の儚さと言いますか、何と言うか「命」の限界を悟っているような性格だったのかもしれませんし、そういう心情、環境であるからこそ、見える景色というのも多分にあったのかもしれません。一見、普通であったり平凡に思える景色であっても、それが尊いものになる可能性と言いましょうかね。

 

 その一瞬を切り取った短編だと思うんですね。ですからそれこそ、まあ若くして自分で命を絶とうなんて思っている人とか、いるかもしれない。でも、「今日死のう」と思った人が、「檸檬」のような何か何の変哲もないものを見て、生きるきっかけになる可能性もあるのではないかと。まあ、ですから非常に端的に言えば、希望を見出す作品ではあるんですね。ちょっとその、太宰治や夏目漱石などの文豪に近い作風にも自分は感じました。また、三島由紀夫にもかなりこの「檸檬」は絶賛されているみたいですしね。自分の一感想としては、それでも、やはり太宰治や夏目漱石の小説の方が、若干わかり易いかなと思いましたよ笑。まあ、彼らの長編なんかを読んでいますと、確かにまあ、何か常に悩んでいるのですが笑、それが自分としてはユーモアに感じられる瞬間もあるんですよね。この「檸檬」ほか短編に関しては、自分はそこまでハマれる要素が無かったと言いますか。単純に短編が苦手というのもあるのかもしれませんがね笑。この「檸檬」を推薦図書として紹介していますけども、ただ、果たして10代の中学生とか高校生にどれだけ突き刺さるのでしょうかね笑。自分は冷静に考えまして、一種の「下地」みたいなものが無いと、まずこの手の作品の「良さ」を理解するのは難しいような気がするんですよね。もちろん、何も理論的に「ここが良い!」と言う風に評論する必要は無いわけで、感覚的に「何となくよかった」と思えるだけで十分だと思いますが、その余地があるかどうか笑。自分が教師だったら、これは生徒たちに勧めないかなと思います笑。短編だから読み易いというのもあるのかもしれませんが、余韻を感じる前に、次の作品に進んでしまいそうで、結果的に何を読んだのかよくわからない、となってしまいそう笑。それだと何か勿体ないような気もするんですよね笑。自分もこれは反省ですけども、作者の人生や人となりや、そういうのを予備知識として知った上で、こういった所謂「名作」にはチャレンジすべきなのかもしれません笑。

 

 

おすすめ度☆☆