製作年度:2016

製作国:アメリカ

監督:ロバート・ゼメキス

出演:ブラッド・ピット、マリオン・コティヤール、ジャレッド・ハリス、サイモン・マクバーニー

 

 1942年、極秘諜報(ちょうほう)員のマックス(ブラッド・ピット)とフランス軍レジスタンスのマリアンヌ(マリオン・コティヤール)は、ドイツ大使暗殺という重大な任務のためカサブランカで出会う。二人は、敵の裏をかくため夫婦を装い任務の機会をうかがっていた。その後、ロンドンで再会し次第に惹(ひ)かれ合った二人は愛を育んでいくが、マリアンヌは愛するマックスにも打ち明けられない秘密を持っており……。(シネマトゥデイ)

 

 ブラピ主演の映画ですね。そして、「バック・トゥ・ザ・フュー・チャー」や「フォレスト・ガンプ~」辺りで有名な、巨匠ロバート・ゼメキスの作品。見てみた率直な感想は、まあオーソドックスな悲恋ものといった印象を受けましたね。ブラピ演じるマックスと、マリオン・コティヤール演じるマリアンヌは恋に落ちてやがて結婚しまして、娘も授かりますが、このマリアンヌにスパイ容疑がかかるっていう内容ですね。でもまあ、これも結構これまでのサスペンス物とかでは見てきた内容かなとは思いますね。そんなに目新しい題材でも無いかなと笑。しかも、ブラピって確か前妻のアンジェリーナ・ジョリーとも似たような映画やってませんでしたっけ?笑。「Mr&Ms.スミス」でしたっけね、何か夫婦揃ってスパイでした、みたいな笑。まあ、そっちの方は割とアクション寄りの映画でしたけども。今回の「マリアンヌ」はロマンス映画っぽさはありましたね。もうちょっとシリアスって言うか。ブラピは自分は好きな俳優さんなんですけど、彼の微妙な表情とか自分は良かったなと思うんです。「スパイ容疑がかかっています」って話をされてから、そりゃ愛する妻がスパイだなんて信じたくないんだけど、でもそう聞くとどんどん怪しく見えてくるって言う、まあこれ演技としてはやっぱり微妙な心境じゃないですか。でも、結構そう言うの表情で上手く見せますよね。さすがだな、って偉そうですけど思いましたよ笑。また、印象的だったシーンとしては、ブラピが若い兵士に「誰を想う?」って聞くシーンですね。兵士は「母です」って言うんですけど、そこでブラピが「やめろ、父を想え」って言うんですよね。この辺のセリフとか非常に何か印象的でしたね。

 

 このセリフはブラピの揺れ動く気持ちが出ているセリフに感じられました。妻を疑っている自分が嫌で、ある意味自信を付けてほしいからこそ、「父を想え」って言ったようなセリフにも聞こえるし、あるいは妻のことを信じれなくなった為に、自身の妻への苛立ちから「父を想え」って言ったようにも聞こえるし、なかなか意味深にも聞こえたんですね。でも何て言うんでしょう、この一言では言い表せない感情っていうのはあるし、また断定もできない感情じゃないですか。要はブラピのスタンスって、「くそ、あいつ!」って妻のことを思う気持ちもあれば、一方で「でも愛してる」って気持ちもあるしで、これ矛盾する感情を常に含んでるってことなんですよね。これはやっぱり、単純なセリフじゃ表せないと思うんですよね。何でもかんでも相談して打ち明けることができる相手もいなければ、それが許される立場でもありませんしね。でも、その微妙な感情をさりげなく色んなシーンで演出してくるのは、見ていて面白いなと思った点ですね。その辺の感情の機微みたいなのは見所だと思うんです。でも、その割には「ロマンス映画」と序盤で説明しましたが、ロマンス的な描写は割と淡泊なイメージもありましたね笑。例えば、そもそもこの二人が恋に落ちるきっかけってのは、割とあっさり描いている印象を受けます。簡単に言えば、この二人が死の危険性があるような重大任務を共に任されたから、と言う事で、その過程で恋の気持ちが育まれたってことなんだと思いますよ。でも、どうなんでしょうね、今まではじゃあ男女で何かの任務を任されたことは、この二人は無かったんでしょうか。何か、このマリアンヌとマックスそれぞれにある「特別性」みたいな物が見えなかったのが、ちょっと物足りなさでもありますよ。

 

 

 まあ、もちろん、「美男」と「美女」という特別性はありますけど笑。自分だってマリオン・コティヤールを長い事、夫婦役として共に過ごしたら勘違いするでしょうし笑。ってことで、良いんですかね、こんなテキトーな理由でね笑。「ロマンス」を示すなら、何か深味は本来は欲しい所。この二人の愛情が決定的になるのは、砂漠のど真ん中でカーセックスするシーンだと思います。ただ、そこで車の外では砂嵐が発生していると。まあ、この「砂嵐」が今後の二人の波乱を予知させる演出にはなっているわけですよね。でも、一つこれ言うとしたら、非常に「ベタ」な演出ですよね笑。それで、この映画はですね、「ベタ」が良さの映画だと自分は思うんですよ笑。例えば、ブラピの中で本当に妻にスパイ容疑がかかっているのか?っていう疑惑と、もう一つ、「これは自分を試す、軍のテストなのか?」っていう疑惑も浮上する展開があるんですよ。要は奥さんは別にスパイじゃないんだけど、ブラピが如何に軍に忠実で、時に冷酷なミッションもこなせるかってことを試す、まあ残酷なテストかもしれないと。そう言う疑惑ですね。匂わせるわけですよ、それを。となると、見ているこっちは「なるほど、その線もあるか」ってな感じで、また違ったサスペンスが期待できるんですよね。でも、案外その辺で「え?どっち、どっち??」ってこっちをハラハラドキドキさせたり、あるいは推理させるような展開とか演出って、あんまり無かったりする笑。だから、何重ものサスペンス、みたいなサービス精神って意外とないんですよね笑。まあ、しいて言うなら、それこそマリオン・コティヤールが醸し出す、「何を考えているかわからない」っていう表情、雰囲気ですか。ここには頼ってる点はあるかもしれません笑。特にラストは、「何をするつもりなのか…?」ってまあ、読めないんですけど、それは割と彼女の表情一つでしっかり演出できていましたね。

 

 先ほど書いたように、その「話はどう転ぶのか?」ってこっちがスリルを感じる点って言うのは、実はストーリーとかそう言う事よりも、やっぱりこの二人の表情で感じ取るしかないのかもしれないなと。脚本的にはだから、自分はこれベタって言うか、まあこう言ったら失礼かもしれませんけど、平凡かなと思うわけですよ笑。よく言えば、「王道」って奴ですかね笑。個人的には素直には浸れました。そんなに過剰な雑念みたいなのは、見ている最中は浮かびませんでしたけども。でも、逆に言うと、「ひねり」みたいなのは無いんですよね。それこそですね、今時のまあ悲恋ものであるとか、あるいはこう言うスパイ映画とかサスペンス映画ってのは、割と観客の想像をひっくり返すような、劇的な展開って用意されているのが多いって言うか。何か逆説的かもしれませんけど、むしろその劇的な展開が用意されている方が、最近で言えば逆に「ベタ」って言うかね笑。でも、この「マリアンヌ」って映画は、何か良い意味でも悪い意味でも、そこまで観客を驚かせるような展開は無いかなと。自分はまあ今となってはこんな「ベタ」な映画でも需要はあるのかなと思っていて。もちろんまあこれ戦争映画かつ、悲恋が描かれていますので、「めでたし、めでたし」ってな感じの映画には無いわけです。やっぱり、悲しい末路が待っています。でも、それがジャンルとして言えば、「お約束」って奴ですね。だから、語弊はあるかもしれませんが、それは案外観客の「安心」なんですよ。異常に心はかき乱されないと思いますので笑。これは、まあそれこそ巨匠でもありますロバート・ゼメキス監督の、落ち着いた手腕の成せる技ってのもあるかもしれませんがね。これくらいの「ベタ」さもちょっと少し懐かしい香りすら漂いますね。捻りに捻られていて、確かに終わった時、その結末は斬新だったとか、予想外だったと思うかもしれませんが、いざ思い返すと「最初、どんな感じだったっけ?」なんて映画も最近ありますからね笑。まあ、これはシンプルさがまた良さだと思って良いんじゃないでしょうかね。

 

 

 まあ、しいて言うなら、さっきのロマンス部分の淡泊さとか、ツッコミたい部分でもそれはあるんですけど、しかし、仮にそれをもっと重厚にするとなると、この映画はさらに長尺になるかなとも思うんですよね。この映画は題材の割には、2時間くらいでそんなに馬鹿みたいに長い映画じゃないんですよね。やっぱり、尺的にも見易い時間かなと。本当にだから、低カロリーかなって思うんですよね笑。そこまでスタミナを消費しないって言うか笑。まあ、そういう何か古き良き映画みたいなのを、今となって提供してくれるブラピですよ笑。彼はプロデュース業ではむしろ若手の挑戦的な映画とか結構支持していますからね。自分が出る映画くらいは、むしろこう言う何か「老獪」な映画もありなのかなと、ちょっと踏んだのかもしれません笑。

 

 

おすすめ度☆☆☆☆