ヤードラット星からカカロットが帰ってきて
半年以上が過ぎていた。
ベジータは終わりのない修行を続けていた。
未来からきた少年が言うとおりであれば
地球は再度危機を迎える。
超サイヤ人である未来の彼が歯が立たないという人造人間。
そんなものが存在するのであれば戦わねばならない。
それがサイヤ人の王子であるベジータの宿命である。
しかし、いまだに、超サイヤ人への手がかりはつかめないままであった。
ベジータは自分自身に腹を立てていた。

なぜ。
なぜなれないのか?
伝説の超サイヤ人になるのは自分のはずなのだ。

ベジータは修行に明け暮れる。
重力室が壊れてしまうまで。
周囲の景色が変わってしまうまで。
暴れて暴れて暴れまくって
彼は自分を追い詰める。
命の限界まで自らを傷つけて
自分の力を高めていく。
一つ間違えれば死んでしまうのに…。

ベジータには仙豆がない。
地球にはメディカルマシーンもない。
そして彼はそのどちらをも必要としなかった。
まるで
傷つき
苦しむことこそが
生きている実感だとでも
いうように…。

ただベジータは
かわった。
ブルマと二人きりのときだけ
ベジータは
確かに変わった。




それは星のきれいな夜だった。
ベジータが重力室にこもってどのくらい日がたっていたのだろう。
突然大音響がしてすべての機械音が止まってしまったのである。
焦げ臭い匂いが一気に立ち込め
配管からどろどろしたオイルが漏れ出した。
灰色の煙が重力室一杯に立ち込めて室内の視界がさえぎられた。
このことはベジータのパワーが一回り上がった証拠であった。
<つまり、パワーアップするたびに壊してしまうということである>
然し、いいところで修行をきられたベジータは不満ではちきれそうであった。

「ちっ!」

ベジータは思わず壁を蹴った。
何かしないとおさまらなかった。

ドカッ!!!

軽く蹴ったつもりであった。
しかし重力室に大穴があいてしまい
そこから煙がカプセルコーポレーション内に一気に溢れ出した。
煙は各所のセンサーに反応し
あちこちで警報が鳴り響き出した。

そのときブルマは自分の部屋にいた。
なんだか気分の優れないブルマは
ベッドに腰掛けてぼんやり夜空を眺めていたのである。
全身が妙にけだるかった。
この2.3日微熱も断続的に続いていた。
ブルマはシャツのすそから手を差し入れて
そっと自分の胸を触ってみる。
探ると硬いしこりが出来ており
その表面は火の様にほてっている。

…間違いなかった。

ブルマの胸中は複雑であった。
ベジータとの関係が始まったのはついこの間のことだと思う。

一緒にいるようになってブルマは
はじめて知った。
ベジータの優しさに。
ベジータは根っからの悪人じゃない。
そう洗脳され続けていただけなのだ、とブルマは思いたい。
そしてベジータの心はいつもかすかにゆれている。
彼の心の中にはわずかに差し込む光がある。
その光がベジータを苦しめる。
ベジータがしてきた行為を
ベジータの目の前に突きつける。
それを完全に無視できないところに
ベジータの苦痛がある。

でもベジータは目をそらさない。
痛みも苦しみもそのまま受け止める。
逃げない。

そこが不器用だと思う。

優しさってなんだろう。
わかるようでわからない。
でも…。

サイヤ人の力。
ブルマには想像もつかない。
その気になれば
指一本で彼女をつぶせる。
そんな力を秘めた手が
ブルマをそっと支える。
ベジータは力加減を知っている。
ブルマを傷つけないように
ブルマが痛がらないように
細心の注意を図ってくれる。
本当にあなたはベジータなの?
ナメック星で私たちと敵同士だった
あのベジータなの?
地球でヤムチャや天津飯、餃子、ピッコロまで殺し
私を悲しませたあのベジータなの?

ああ。
でも、私にはわかる。
この人は
悪い人じゃない。

ブルマはそっと自分の乳房から手を離す。
ゆっくりと立ち上がり
デスクのある方向に向かった。

ブルマはふっと笑った。
ベジータの行動は本当にわかりやすい。
「またやったわね…」

くわえていたタバコをもみ消す。
デスクの上のモニターを開く。

「やっぱり…」

重力室に赤い点滅。
ブルマはすべての警報をきった。
重力室を壊したのだ、
ベジータがまた。
後始末は誰かがやってくれるだろう。
それはまかせればいい。
でも多分もうすぐくる、
ベジータがここに。
いらいらカリカリしながら。

彼は月のうちの半分ほどは北の高地でひとりで修行している。
そして食料を食べ尽くした頃戻ってきて
今度は重力室で修行する。
重力室が壊れるまで。

規則正しいといえば規則正しい。

重力室を壊してしまったベジータは
ブルマを探しに久しぶりに重力室から出た。
腹が思い切りすいていた。
しかしブルマはキッチンにはいなかった。

「くそっ!」

ベジータの気持ちは不満で一杯だったが
冷蔵庫を開けると、とにかくたべられそうなものをテーブルに広げた。
まずは食欲からなだめなくてはいけない。
サイヤ人の食欲はとにかく想像を絶する。
カカロットの食欲ににベジータが負けるはずがない。
おまけに二人ともけっこう悪食である。
トカゲや恐竜まで美味しく頂いているのだから。
よっぽどひもじいと火の通っていないものでもたべてしまうことがある。
だからベジータが冷蔵庫をいったんあけると
残るのは調味料ぐらいのものであった。
一通り冷蔵庫を荒らしたベジータは思い出したようにブルマを探し出した。
まっすぐ向かった作業場にまたも彼女はいなかった。

「畜生,何処にいきやがった…。」

ベジータはムカムカしながら彼女の姿を求めていた。
ブルマののプライベートルームの方角に向かう。
早速そちらの方へ歩き出すベジータ。
そのときベジータは気づいたのだ。
ブルマの部屋の方から流れ来る空気の色が今日は違うことに。
それはメスの獣の発する香りであった。
ベジータは立ち止まる。
そして気がついた。
彼女の中で何かが変わり始めていたことに。

ブルマの部屋の前についたベジータ。
ブルマはたしかにこの部屋の中にいる。
ベジータはしばらく立ち止まって何か考えていたがいたが
やはり彼女の部屋に入ることにした。

ブルマの部屋。
ロックがかかることはもうない。
ベジータは無言ではいっていく。
窓が開いて夜風が吹き込んでいた。
そこにくわえタバコの彼女の姿があった。
けだるそうに壁にもたれていたブルマは
ゆっくりとベジータのほうを見た。

「又壊したのね。」

かすかに顔色が蒼く見える。

「ああ…」

ベジータは感情の伺えない調子で答えた。

「頼む」
「頼むって…もう少し大事に使って、といいたいけれど…
また強くなったのね、ベジータ。」
「あたりまえだ。」

ベジータはブルマのほうに少しだけ近づいた、
ブルマの香りがベジータを包みこむ。
ベジータは眉をしかめた。

「貴様…何か変わったな?」

ベジータがつぶやいた。
背中を向けて窓際に立っていたブルマ。
ゆっくりと煙を吐く。

「なんでそんなこというの?」

ブルマは顔をそむけた。
ベジータはそっとブルマの背後に近づいた。
そして小さく言葉を発した。

「…匂いが違う」

ブルマは思わず振り向いた。
そしてにっこり笑った。

「まるで動物ね」

ベジータは硬い表情のままだった。

「図星か」

ブルマは答えなかった。
ベジータも黙っていた。
ブルマはベジータにそっと近寄り、体を預けた。

「図星なのだな」

ブルマの腕がベジータの首に回る。
腕に力が入ってベジータの顔はブルマに引き寄せられる。
唇が触れる。
ブルマの唇がベジータを激しくもとめる。

「ベジータ…」

ベジータは軽くブルマの唇を吸った。
やがてベジータはブルマから体を離した。
ブルマの瞳は潤んでいる。
ベジータはそんなブルマの頬をそっと手のひらでなでた。

「赤ちゃんが出来たの」

ベジータはなにもいわない。
二つの心臓の音が重なって体中に響く。
不安げなブルマの顔。
思い切ってベジータの目を見つめる。

「…生んでいいいかな?」

小さい声でブルマがつぶやいた。
静寂。
風の音だけが聞こえる

「なぜ…」

ベジータがいった。

「なぜ俺にそんなことを聞く?」

ブルマは黙り込んでしまった。
ショックを受けたわけではない。
でもやはり言葉が続かなかった。
しばしの沈黙の後ベジータがようやく口を開いた。

「生むのは貴様ではないのか?」

ブルマの開いた襟元のボタンをそっとはずす。

「お前は…」

ベジータはその手でブルマの熱く張ったそれらを丁寧に包む。

「俺にどうしてほしい?」

ゆっくりそうっとその部分をなでさすりながらベジータは続けた。

「俺の子を生めといえばいいのか?」

ブルマはベジータの背中に腕を回す。
普段より敏感になった胸のふくらみが
熱く、熱くなっていく。
ベジータの動きは優しい。
言葉とは裏腹に。
ベジータは続けた。
身を溶かすような愛撫と
つき離すような冷たい言葉を。

「…それとも生むなといえばいいのか?」

「ベジータ、あっ…」

ブルマの体は大きく震えた。
ベジータの動きに耐え切れず、ブルマはベジータの首に腕を回して
上半身を大きくのけぞらせた。

「俺にはわからない」

ベジータのその一言に
ブルマは思わず瞳を閉じた。

私が変わった。

ベジータはそういった。
でもそれ以上何もいわないのね。

普段より一回り大きくはった乳房は熱をもっている。

そうなのだ。
彼女は変わりつつある。
まだ目立たない下腹部の形。
だけど彼女は変わっていく。

いずれこうなることはわかっていた。
私は求めていたのだと思う…。
はっきり認めたくはなかったけれど。

私はほしかったのだ。
あなたと私がこの世に生きていた、という、証が。

ブルマは唇をかみ締めた。

『生むのは貴様ではないのか?』

この言葉はどういう意味なのだろう?
父親になることを拒む、ということではないのだろうか。
それ以外の汲み取りようは考えられなかった。

わかってはいた。
だけどやっぱり寂しさを感じずにはいられなかった。
ブルマの体はこうしている間にも変わっている。
いつもと違う肌のほてり
しこりを持ったはった胸。
触ると少しいたむ。
ブルマはこれから間違いなく変化していく。
これからどんどんおなかが大きくなって
何時か事実を隠すことができなくなる。

まさか、彼から温かい言葉が聞けるとは思っていなかった。

そんなことはわかっていた。
ベジータが父親になれるわけがない。
そんなことははじめからわかりきっていたことなのだ。

ブルマは口を閉ざした。
何度もいうがショックを受けたわけではない。
予想通りの答えだったから。
でも
やっぱり
涙が出た。
意外な自分の反応に彼女自身が驚いていた。

私はこんなに女々しい女だったのだろうか、と。

ベジータはいったいきづいているのだろうか?
彼女の涙に。
それともほんとにわかっていないのだろうか?

ベジータはブルマの体を引き寄せ、
自分の胸にしっかり抱いた。
でも、ただ、それだけだった。

ベジータは北の荒地に修行に出て行った。
何もいわないで。

ベジータ。
あなたがこれを喜んでくれなければ
ほかにだれが喜ぶというの?








それから何日かがたっていた。

快晴のパオズ山。

雲ひとつういていない。

カカロットは大きな木陰に寝そべっていた。
山吹色の胴着を着て黒髪の姿のカカロット。
目を閉じている。

眠っているのだろうか?

頭のあたりでは2匹のリスが落ちている木の実をかじっている。
カカロットの上を数匹の青い蝶が飛んでいく。
太もものあたりをトカゲが横断していく。

カカロット…、いや、孫悟空。
彼自身は自分をこう認識している。
地球育ちの地球人、孫悟空と。
地球に戻ってきて半年以上が過ぎていた。
未来から来たあの少年。
未来のトランクス。
超サイヤ人である彼でさえ歯がたたないという人造人間。

戦いてえなア…。

カカロットはつぶやく。

どんな奴らなんだろうなあ…。

いつからだろう。
新しい敵がこわくなくなったのは。
ピッコロ大魔王と戦い、ラディッツと闘ったあの頃。

あの頃は怖かったなあ。
おらいったん死んだしなあ。
そうだ、あの頃は怖かった…。

その死の恐怖よりも強い奴と戦う喜びのほうが強いと
思い知らされたのは、いつだったか。

そうだ
ベジータと闘った時だ。

ベジータ。
おめえは強かったなあ。
おら、ぼろぼろになっちまったぞ。
あの世で界王様に修行をつけてもらったのに
おら、おめえに歯が立たなかった。
おら、おめえに惚れちまったぜ。
おめえは強い。
惚れ惚れしたぜ。
だから、もう一度戦いたかった。
おらもおめえも
ベストの状態でさぁ。

かっては地球を襲来したベジータ。
ナメック星で永遠の命を求めたが
その願いはかなわず、
一度はその命を失った。
ドラゴンボールに命を救われ
今はカカロットと同じく地球に住む。
この宇宙に生き残ったたった二人の純粋なサイヤ人である。

ベジータ
おらのところに来い。
おらはおめえと戦いたいんだ。
かんげえただけでわくわくするぜ。
おめえとおらが修行するんだ。
おらの相手はおめえしかいねえ。

カカロットはふと目を開いた。
彼の皮膚に感じる波動があった。
なんだかぴりぴりする。
そして体がうずうずする。

「あれ?珍しいこともあるもんだなあ」

カカロットはむっくり上半身を起こす。
口元が思わず緩んだ。

「こりゃ、ベジータの気だ。」

西の都の方角からどんどん近づくエネルギー。
攻撃的で冷たい気。
なのになんだか憎めない気。
それがカカロットの家を目指して飛んできている。

「へへへ」

カカロットは嬉しそうに笑った。
そして彼はべジータの気に精神を集中させた。

「まさか攻撃に来るんじゃねえと思うが…」

そうつぶやきながらも彼は笑いを抑えることができなかった。

「待ってろよべジータ。
今迎えにいってやる。」

青い匂いのする風が彼の頬をなぜていく。
カカロットはベジータの気を求めて出発する。






ベジータはいつもの戦闘服を着た姿であった。
重力室を壊してしまったベジータは
北の荒れた岩山の中で修行をしていた。
途中重力室が修理できているのか気になって戻ってみたのだが
まったく手がつけられていなかった。

「ちっ」

腹が立った。
しかしブルマに文句は言えなかった。
いつものブルマならもう直しているはずなのだ。
しかし
彼女が重力室に入った気配もなかった。

ベジータには心当たりがあった…。
しかしその問題について彼は何の答えも持っていなかった。
ブルマの顔を見ることもなく、ベジータはまた空へと飛び上がった。

彼はカカロットの家を目指していた。
明確な目的があったわけではなかったと思う。
ただこの星で彼が知っている場所は
カプセルコーポレーションと北の荒地、そしてパオズ山だけだったのだ。
上空から見つけたカカロットの自宅。
洗濯物が沢山はためいている。
カカロットの気は感じられなかった。
チチの姿も確認できない。
しかし庭先で悟飯の姿を見ることができた。

悟飯は薪を割っていた。
悟飯はもくもくと薪を割る。
サイヤ人と地球人のミックスである悟飯。
ベジータにとって未知の生物といえる。

ベジータは空中で停止した。

大きくなったな。

ベジータは腕組みをした。
初めて悟飯をみたのは地球を襲来したときだった。
あのときの悟飯はいくつくらいだったのだろう?
まだ幼くて弱かった。
泣いてばかりいたように思う。
あの弱さには反吐が出た。

ベジータはゆっくり高度を下げる。
悟飯の表情が読める高さまで。

地球を襲来したとき
彼は絶対的な力の差を誇っていた。
この地球に彼の戦闘力を上回る生き物はいなかった。
簡単にこの仕事は終わるはずだったのだ。
しかし、ベジータはあの時引き上げざるをえなかった。
それも満身創痍の姿で。

あの時。
殴っても蹴っても起き上がってくる
小さな悟飯がいた。

父親であるカカロットのために何度でも向かってくる幼い悟飯。
血を流し、身を切り裂きながらも立ち上がる悟飯。
スカウターに現れない奴らの強さはなんだったのだろう?
ピッコロが命を捨てて守った悟飯。
そんなに?
値打ちのある生き物なのだろうか?
この子供が。
このよわい生き物が。
俺はあの時殺すつもりだったんだ。
弱い生き物に生きる資格はない。
弱いものには意味がない。
しかし…。


ドアが開きチチの顔がうかがえた。
チチは悟飯の母親である。
そしてカカロットの妻でもある。
弱い何の値打ちもない生き物である。

なぜカカロットはあんな女と暮らしているのだろう?

笑顔のチチに誘われた悟飯はタオルで汗をぬぐい
家の中へと入っていった。

「珍しいなあ、ベジータ」

ベジータの背後から声がした。
聞き覚えのある声。
それは
カカロットであった。

カカロットは超化してはいない。
黒髪が風にゆれている。
その表情に陰りはない。
黒い瞳が笑っている。

こんな目をする奴を見たことがない。

ベジータはいつもそう思う。
なんだかその目にすいこまれそうになる。
何も疑うことを知らないカカロットの笑顔は
まるで赤ん坊のようだ…。
ベジータは思わず目をそらした。
まっすぐな視線に耐えられなかった。

「貴様か…」

「おめえがおらのほうに来るなんてさ」

カカロットはうれしそうに笑う。

「おらうれしくてさ」

ベジータは鼻を鳴らした。

「ふん、瞬間移動か。
まったく目障りな野郎だぜ。
貴様という奴はな」

カカロットは全く気にする様子はない。

「おらに用があるんだろ?」

カカロットはまっすぐベジータを見つめた。

「おらと修行する気になったんだろ?」
「馬鹿やろう」
「へ?」
「ちょっと通りがかっただけだ。」

そういったベジータの頬はうっすら赤くなっている。

「貴様なんかに用はない。」

「何だよーひでぇ言い方だなあ。」

カカロットは唇を尖らせた。

「せっかくきたんだから修行やろうぜ。
なあ、なあ、ベジータァ…」
「しつこいぞ、貴様!
がたがた言うんじゃない!」

ベジータはくるりと背中を向けると
北の方角に飛び去ろうとした。

「あああああああ!」

カカロットが思わず追いかける。
全速力でダッシュするとカカロットはべジータの背中に張り付いた。
太い腕でベジータの体を捕らえる。

「何だよ、帰えんなよ。」
「貴様という奴は…抱きつくんじゃねエッ!」
「修行してくれるまで離さないもんね」
「…ぶっ殺す!!!」
「うわっ!!」

ベジータは突然気を爆発させた。
その激しさにカカロットも思わず手を放してしまうほどであった。

「貴様はとにかく目障りなんだよ!」
 
ベジータがそう叫んで気弾を一発発射した。

「うひょ!やったー!」

カカロットは大喜びである。







「カカロット」

ベジータが言った。
カカロットは流れる汗を拭きもせず寝転んでいた。
カカロットはそのままの姿でベジータのほうを見た。
ベジータは少し離れた場所で仰向けに倒れていた。

「貴様は何で超サイヤ人にならないのだ」
「え?」
「貴様は何時もその姿なんだな」
「ああ…そういう意味か」
「超サイヤ人にはずっとなり続けられるというものではないのか?」
「そうだな」

カカロットは再び目を閉じた。

「修行すれば超サイヤ人のままでいることも可能かもな。
確かにかなりのエネルギーを消費するが
何とかなるかもしんねえ。」
「なぜそれを求めない?」
「さあな。」
「変な奴だ」
「ベジータァ…」

カカロットは上半身を起こすとベジータのほうをむいた。

「おらは」
「…」
「おらは今の姿が気にいってんだ。
この姿が本当のおらの姿だ。」

ベジータはカカロットのほうを見た。

「まったく貴様はくそやろうだ」
「ははは…おめえにかかったらみんなくそやろうだぜ。」
「サイヤ人としての誇りはないのか」

カカロットはベジータの顔を見た。

「わかんねえ」
「は!」

ベジータは目を丸くした。
カカロットも声をあげて笑った。

「ベジータ」

「あ?」
「ヤムチャは出て行ったのか?」
「…さあな」

カカロットは立ち上がってベジータのほうにあるいて行く。
そしてベジータの横に腰を下ろした。

「ブルマはひとりなんだな」
「そんなことわからん」

カカロットはベジータの顔を覗き込んだ。
そしてにっこり笑った。

「帰ってやれよ…」

ベジータは思わずカカロットの瞳を見つめた。
黒い瞳に自分の顔がうつっていた。