「反省会」という名の、血の流れない公開処刑場
蛍光灯の白々しい光が照らす会議室。
逃げ場のない長机の向こう側で、部下が青ざめた顔で俯いている。
部屋に響くのは、上司であるあなたの、冷たく鋭い尋問の声だけ。
「なんであんなことしたんだ?」
「お前、前も言ったよな?」
「どうしていつもそうなんだ?」
部下は唇を噛み締め、「申し訳ありません」と蚊の鳴くような声で繰り返す。
その姿を見て、あなたは「指導してやった」と満足するかもしれません。
しかし、その空気の重苦しさ、胃が締め付けられるような閉塞感に気づいていないとしたら、あなたは指揮官失格です。
そこで行われているのは、業務の改善会議ではありません。
言葉による暴力で部下の人格を切り刻む、「公開処刑」です。
敵は「部下」ではない、「エラー」だ
私がいた戦闘機やヘリコプターの世界にも、フライト後の「デブリーフィング(振り返り)」があります。
そこでは、階級に関係なく、驚くほど激しい議論が交わされます。
時には、若手の部下がベテランの隊長に向かって「あの旋回は遅すぎました。危険です」と指摘することさえあります。
なぜ、それが許されるのか。
それは、全員が「攻撃すべき対象」を間違えていないからです。
自衛隊のデブリーフィングにおいて、攻撃対象は常に「アクション(行動)」です。
決して「パーソナリティ(人格)」を攻撃しません。
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× 人格攻撃:「お前は(You)判断力が鈍い」
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○ 行動分析:「あの時の操作(It)は、判断が2秒遅かった」
この違いが分かりますか?
多くの企業の会議では、「お前はダメだ」と人格を否定します。
人格を否定された人間は、防衛本能で心を閉ざし、思考停止に陥ります。
結果、改善どころか、「怒られないようにするロボット」が完成するだけです。
操縦桿を握る手を「You」から「It」へ持ち替えろ
部下を殺さず、ミス(エラー)だけを殺す。
そのための「外科手術」のような会話技術を、明日から実践してください。
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主語を「You(あなた)」から「It(こと・もの)」へ
「君は、なんでこんなミスをしたんだ!」と怒鳴りたくなったら、グッとこらえて変換します。
「この工程のどこに、ミスを誘発する穴があったんだ?」
人を責めず、仕組みや事象を主語にするだけで、部下は「一緒に犯人(エラー)を探す探偵」になれます。
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「君らしくない」という麻酔を打つ
厳しい指摘をする前に、必ず枕詞をつけてください。
「いつも正確な君らしくないミスだね。何かあったのか?」
この一言には、「あなたの能力を信頼している」という強烈なメッセージが含まれています。
信頼されていると感じた人間は、その期待に応えようと自ら修正を始めます。
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「すみません」を禁止ワードにする
デブリーフィングで欲しいのは謝罪ではありません。
「次はどうするか」という未来のプランです。
「すみません」と謝り始めたら、「謝罪はいい。次、同じ状況になったらどう操縦桿を動かすか、それだけを教えてくれ」と遮ってください。
傷つけるのではなく、治療せよ
ミスをした部下は、既に自分で自分を責め、傷ついています。
そこに上司が追い打ちをかけて、傷口を広げて何になるのでしょうか。
指揮官の仕事は、傷ついた兵士にトドメを刺すことではありません。
「悪い患部(エラー)」だけを正確に切除し、再び空へ飛ばせてやることです。
「お前はダメだ」という言葉の刃は、今日限り捨ててください。
その代わりに、「その行動を修正しよう」というメスを持ってください。
それが、部下を、そして組織という機体を守る唯一の技術なのです。
以上いかがでしたでしょうか?
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ワラビー社会保険労務士事務所 社会保険労務士 渡辺 忍
