今日は、中小企業庁が出している
「中小M&A資格試験」の方針について、少し整理してみたいと思います。

 

 

最近、M&A業界ではルール整備が一気に進んでいますが、
今回の資格試験の話は、その中でも非常に大きな転換点だと感じています。

 

まず、この資格制度が作られる背景について。

 

端的に言うと、「市場の質を高めるため」です。

 

これまで中小M&Aの領域は、
プレイヤーの質にばらつきがあり、

  • トラブルの発生

  • 情報の非対称性

といった課題が一定程度存在していました。

 

そうした状況を踏まえて今回、

  • 知識

  • スキル

  • そして倫理

この3つを一定水準まで引き上げることを目的に、
国主導で資格制度が設計されています。

 

興味深いのは、この試験の設計です。

 

単なる知識試験ではなく、
かなり実務に寄せた内容になっています。

 

科目は大きく4つ。

  • M&A実務

  • 財務・税務

  • 法務

  • 倫理・行動規範

つまり、

「現場で適切に判断し、動ける人材かどうか」

が問われている構造です。

 

その中でも特に印象的だったのが、
倫理の扱いです。

 

今回の試験では「禁忌肢」という考え方が導入されています。

 

これは簡単に言うと、

「絶対にやってはいけない行為を選んだ場合、それだけで不合格となり得る」

というものです。

 

例えば、

  • 利益相反を隠す

  • リスク説明を行わない

  • 反社会的勢力のチェックを軽視する

といった行為です。

 

これは単に知識を問うのではなく、

「支援者としての最低限の倫理観を満たしているか」

を厳しく見ている設計だと感じます。

 

さらに、この制度は試験で終わりではありません。

 

合格後には登録制度があり、

  • 倫理規程の遵守

  • 定期的な講習の受講

  • 違反時の処分(氏名公表や取消)

といった仕組みが用意されています。

 

これはまさに、

「資格」だけでなく「継続的なライセンス管理」まで含めた制度

と言えると思います。

 

 

では、この流れによって何が起きるのか。

 

私は、

M&A業界は「自由競争のフェーズ」から
「品質競争のフェーズ」へ移行していく

と考えています。

 

 

これまでは、

  • 案件を持っていること

  • マッチングができること

これだけでも競争優位になり得ました。

 

しかしこれからは、

  • 説明責任を果たせるか

  • 倫理的に適切な判断ができるか

  • プロセスを正しく進められるか

といった点が、より強く問われるようになります。

 

 

言い換えると、

「誰でも参入できる市場」から
「適切に実務を遂行できる人だけが残る市場」へ

変わっていくということです。

 

 

個人的には、この流れは非常に良い方向だと感じています。

 

M&Aは、

  • 経営者の人生

  • 会社の未来

  • 従業員の生活

そういった重要な要素が交差する意思決定です。

だからこそ、関わる人の質が上がることは、
市場全体にとって大きな価値になるはずです。

 

 

そしてもう一つ重要なのは、
この流れによって「プラットフォームの役割」も変わっていく点です。

 

 

これからは単なるマッチングではなく、

  • 信頼できるプレイヤーの可視化

  • プロセスの標準化

  • リスクの低減

といった機能が、より重要になっていきます。

 

 

M&Aはこれから、

「量の時代」から「質の時代」へ。

その入り口に、今まさに立っていると感じました。