今日は、

僕が支援しているある売り手オーナーさんと、

30分ほど電話で話していました。

 

有名な賞も受賞していて、

地元の人にも、観光客にも長く愛されてきたお蕎麦屋さん。

 

「辞めてほしくない」

そう言ってくれるお客さんがたくさんいるお店です。

 

だからこそ、

オーナーさんの中には

お店をなくしてしまうのは、やっぱりもったいない

という気持ちが強くあります。

 

畳もうと思えば、畳める。

でも、できることなら――

お店の評判も、

お客さんが喜んでくれる場所も、

誰かに引き継いでもらって残していけたら。

 

それができたら、やっぱり嬉しい。

そんな思いを、何度も口にされていました。

 

 

 

実は、今、

とても条件の良い買い手候補の方がいます。

 

都会で飲食店を経営されていて、

麺類の業態で、すでに2店舗を運営してきた方。

飲食の経験も、経営の経験も十分にある。

 

その方は、

今の店舗を畳んで、

このお蕎麦屋さんを引き継ぐために

移住することまで考えてくれていました。

 

条件だけを見れば、

本当に申し分のない候補です。

 

ただ――

その方が、少し病気をされてしまった。

 

前向きな気持ちは変わらないけれど、

すぐに決断できる状態ではなくなってしまった。

 

もしこのまま進めるとしても、

成約までには半年ほどかかるかもしれない。

そんな状況です。

 

 

 

一方で、オーナーさんには

毎月、確実にかかる負担があります。

 

家賃。

数名の従業員の人件費。

 

金額はここでは言えませんが、

これは決して軽いものではありません。

 

だから、僕の立場としては、

簡単に

「もう少し待ってみましょう」

とは言えない。

 

これまでに、

150件ほどのM&Aを支援してきました。

 

その中には、

半年、1年と待った末に、

途中でブレイクしてしまった案件もあります。

 

そうなったときに残るのは、

金銭的な負担だけじゃない。

時間も、気力も、精神的な重さも、

全部オーナーさんが背負うことになる。

 

それを見てきたからこそ、

僕は無責任に

「待ちましょう」とは言えないんです。

 

 

 

最終的に決めるのは、

やっぱりオーナーさん自身。

 

負担をするのも、

責任を引き受けるのも、

オーナーさんだから。

 

僕にできるのは、

代わりに決めることじゃなくて、

一緒に悩むことくらいなんだと思います。

 

半年待って、その先にうまくいけばいい。

でも、M&Aでは

病気や環境の変化みたいな

「まさか」が起こることも少なくありません。

 

 

 

オーナーさんは、

本当にお蕎麦が好きな方です。

 

体が痛くて、もう現場には立てないけれど、

引退したあとも、

趣味のような形で、

新しいことを始めたいと話していました。

 

もしお店を売って、

それが次の楽しみの元手になれば、

それはそれで、すごくいいなと思います。

 

廃業してしまえば、

原状回復やスケルトンの負担もかかる。

でも、引き継いでもらえれば、

次に進むためのお金が残る。

 

同じ「やめる」でも、

意味はまったく違います。

 

いい買い手の方に、

うまく引き継げたらいいな。

心から、そう思っています。

 

今日の30分の電話は、

オーナーさんにとっても、

そして僕にとっても、

とても悩ましい時間でした。

 

答えはまだ出ていないけれど、

こうやって一緒に悩みながら、

最善の形を探していくしかないんだろうなと、

改めて感じた一日でした。