左手に今の自分。

右手に理想の自分。

そっと合わせてこんにちは無気力

サトウヨウコです。


今朝も恒例の朝散歩をしています。

可愛らしい梅の花が咲いていました。






もう15年以上前になりますが、埼玉県の秩父市に蝋梅を父と二人で見に行きました。


当時は今のように暖冬ではなく、芯まで冷え切ってしまうような凍てつく真冬。


分厚い雲に覆われて、視界はグレー。

どんよりと暗い日でした。



あまりにも寒かったので、とにかく暖かいものが飲みたかった私は、目先の露店で『甘酒』の旗を見つけ、立ち寄りました。


「さむい、さむい。

 甘酒買うからおとうさんちょっと待って」


父もあまりの寒さに耐えられなかったのでしょう。

先を急ぐように、中年太りの大きな身体を小さく丸めて、チャカチャカと足を前へ前へ動かしていました。


父は祭りでの屋台や露店は好まなかったようです。

そのことを知っていたので、私自身が確かに、なけなしのお小遣いでその一杯を買ったのだと思います。


手渡された甘酒をそっと舐めると、なんとも美味!!!!ニコニコ


大きな大きな寸胴鍋で、干し柿と一緒にぐるぐる、ぐるぐると煮込まれていました。

見るからに温かそうで、とろりと柔らかそうな白さです。


その風味は、今まで体験した甘酒の感覚と大きく違うものでした。

甘酒って独特のにおいがありますよね。実は私も少し苦手なのですが、あのにおいがほとんどなく、むしろ爽やかな果物の香りがしました。


きっと干し柿の効果だと思います。

味もやわらかく、舌触りがまろやかで、なんとも言えない至福な心地がしました。ホッと一息です。




「一口ちょうだい」



たった一口を含んだだけだったのですが、父が片手を出して催促するので素直に渡しました。



「………」



食い道楽で、普段から味にうるさい人だったので、何か言うかな?と少し様子を伺っていましたが、特に感想は言いそうになかったので、私はすぐに梅に気を取られていきました。



「そろそろ返して」


と、ようやく紙コップを取り返した頃にはなんと、もう中身がほとんどないではありませんか……!!



「甘酒きらいって言ってたじゃん!!」


なけなしのお小遣いで手に入れたご馳走だったので涙目の私。



「…いや?おいしかったね」


半分以上のほとんどを飲んでいるのにどうしてもすっとぼける父。



「おいしかったね、じゃないよー!!

 私、ほとんど飲んでないんだけど!!」


すっかりぬるくなってしまった残りの甘酒を飲み干しながら、私は久しぶりに父に対して悲しい気持ちになりました。


納得し切れない感情を覚えつつも、咲き乱れている蝋梅にはしっかり圧倒されて、繊細な花びらを丁寧に眺めていきました。

カメラで写真を撮りながら、香りを堪能しました。



よく憶えています。








実は、父が亡くなる数ヶ月前にやっと、自宅の住宅ローンを完済していたようでした。


けれど母は「銀行からお金を借りるために自宅を抵当に入れている」と聞かされていたようです。


つまり、住宅ローン返済は終わっていたけれど次は銀行からの借入金を返済しなければ自宅は取られる、と解釈していたのでした。



私はその辺の都合は何が何だかわからなかったので、夫婦間のことだろうと思い、何も口出しできませんでした。



今思えば、仕方のないことだとは思いつつも、もっと父の負債状況を明確にして、専門家に相談するべきだったのだと、後悔ばかりです。



父が亡くなった後日、私は遺言などがないかパソコンを調べていました。


ふと出てきたのが「登記申請書」と書かれたファイルでした。

中身を確認すると『抵当権抹消』のための申請書類だということがわかりました。


「ん……!? どういうこと…!?」となりますよね。

母に確認したところ、単純に住宅ローンの返済が終わったからだ。と言っていました。


「なるほど。じゃあこれは関係ないのか。」



と思いつつも、モヤモヤとするものがあったので、弁護士さんに相談に伺った際に聞いてみました。


「こんなものが見つかったのですが、

 どういうものでしょうか??」


「あー……、これは、んー。

 メールでファイル送ってもらえますか?

 ご自宅が抵当に入っているかどうか確認するので」


抵当権が解除されていれば、自宅はどこの抵当にも入っていないことになります。と。


つまり??????

どこの抵当にも入っていなければ、とられることもなくなる!?!?


調べてすぐに連絡しますと言ってくださいました。



結果的に、自宅の抵当権は解除されていました。


が、あくまて自宅は父の財産であり、父が会社の連帯保証人になっていたため、銀行からの負債がある以上は差し押さえれてしまう、その現実は変わりませんでした。


ただ、生前贈与さえしていれば。

話は違ったかもしれません。



サヤさんに相談したところ、心を砕いてくださり、どうにか現状を打破できないかと知恵を絞ってくださいました。


会社でお世話になっていた社労士の先生と、

『社長は奥様に生前贈与をする意思があったので、その手続きが始まるところで亡くなってしまったということにすれば、、』

などなど。



みんな、どれだけ苦しい状況か理解しながらも、最後まで希望を捨てずに一緒に考えてくださいました。アドバイスもくださいました。



残念ながら、遺言書が見つからなかったことや、父が会社の連帯保証人になっている書類を確認したことで、自宅を母へ贈与することも叶わず、銀行から差し押さえられることになるのですが、、、



もう少し、色んなことが少しずつで良いから、父の生きているときに明白になっていれば、何かが変わったかなぁ、と思わずにはいられませんでした。


悔しいですね。