商店街側の窓を写そうとして失敗しました。
開店10分後、まだどなたもいらっしゃらないので
カウンターからふらふらと撮りに出たところ
シャッター音と同時にドアの開く音が。
お客様ですね‥!?
即、携帯電話をポケットに放り込みました。
(*'ー')いらっしゃいませ
その後もやわやわとお客さんがみえて
みえては、いったん、どなたもいらっしゃらなくなって
またみえて
また、どなたも‥
その繰り返しの日でありました。
声を出してお話しする時間と
なんにも言わない時間が交互にきたわけです。
こういう時って、無言モードがくる度に
自分の中の沈黙海溝が深くなっていきませんか。
私はどんどん潜航していってしまいました。
客席にどなたもいらっしゃらない間
あまりにも静かだったのです。
(今日、どうしたんだろう。)
(お客さんいない時ってこんな感じだったっけ?)
どうもいつもと違う気がする。
それでカウンター内を見渡して、気がつきました。
マスター、ヨシオカさんがほとんど喋っていないということに。
普段手があいている時には
ちょこちょこお話するのです。
2対1くらいの割合で、ヨシオカさんから話しかけてきてくれるし
その日の会話の口火を切るのはたいていヨシオカさんです。
この日はそのスタートの会話らしい会話がなかったので
しばらく誰もなにも喋らずにおりました。
(元気がないですか?)
(不景気のせいですか?)
(体調が悪いですか?)
沈黙の海溝の底から、ヨシオカさんをじーっと見ます。
ヨシオカさんはこちらをあまり気にせず
腕時計の充電(着用して動かないと電池が切れる)を確かめてみたり
本棚を見たりしています。
観察を続けてみましょう。
‥( ФωФ)
機嫌が悪い日も、たまにはありますか( ФωФ)?
もしかして眠いですか( ФωФ)?
なんて無言で見ておりましたが
ふと、ヨシオカさんがこちらを見つけました。
おや?目撃されている( ФωФ)
私はそうは思いつつ、無言で見続けました。
なにしろ今は海溝にいるのです。
「‥どうした?」
明らかに私がじっと見ているので
笑ったものか、真面目に聞いたものか?
という表情でヨシオカさんが言葉を発しました。
しかしこちらは、急に言葉が出てきません。
じっと見るのを続行しました。
どうしたもこうしたも、あなただ(ФωФ)
と、思いながら。
「……」
……(ФωФ)
「こないだ風邪ひいてから、調子悪いんだよ。」
あ、喋った(ФωФ)
というか通じた( ФωФ)b
(ФωФ)「そうでしたか。」
こちらもやっと海溝から浮上して、言葉が出て
普通に会話をしました。
ヨシオカさんは最近、猫のワサビちゃんを洗いました。
のどの調子の悪いのの原因の一つが
猫アレルギーの可能性があると、お医者さんに言われたからです。
猫は洗わなくてもキレイな毛皮を保てるので
あまり洗うものではないイメージがありますが
(うちのぽちも全く洗っておりません。でもきれい。)
洗わないとアレルギー源になる物質が飛散するそうです。
で、洗うと大丈夫らしい。
ということで洗ったそうですが
そうすぐに効果は現れない上に
洗われた日のワサビちゃんは、異様に大人しかったのだとか。
人生、いやニャン生で初めて洗われたワサビちゃん。
「多分ショックだったんだろうな。」
これから寒くもなるし
かわいそうだからしばらく洗わないそうです。
何人かの男性スポーツ選手や、メキシコの田舎の子供たちについて
「かわいい」を連発してきたヨシオカさんですが
動物に関しては1度もかわいいと言ったことがありません。
でも嫌いじゃないのでしょう。
その後お客さんがいらしたり
また空席になったりしている間に、まかないが作られてゆきました。
私の方は冷蔵庫のビールの補充などしていると
「NORAちゃん、メシ。」
という声が聞こえました。
めしー(ФωФ)
と思いながら、またつい無言で見ました。
「‥ごはん。」
言い直されました Σ( ФωФ)
はーい(*'ー')
しまう前の瓶はひとまず置いといて
カウンターの中に戻ります。
まかない、鮭ブーム到来中!
今週も鮭です。
塩と小麦粉をまぶしてオリーブオイルで焼いてあります。
その味だけでもおいしいですが
サラダ用のドレッシングで食べてもおいしかったです。
お味噌汁は、つみれとこんにゃく、ほうれん草、しいたけ、だいこん
などなどひたすら、あった物が放り込まれてて具沢山でありました(*'ー')
いつお客さんがいらしてもいいように
我々は交代で食事をとります。
まずバイトが食べて、ヨシオカさんはその後すぐ食べたり
しばらくしてから食べたり色々です。
私は先に食べ終わってから
洗い物があれば洗い物をして
客席を整えたり、冷蔵庫の物の補充をします。
それらが済んでしまったらカウンター内で
ヨシオカさんのお食事が終わるまでぼーっとするのですが
今回は、数日後に知人と一緒に店に来る予定があって
昼間から打ち合わせのメールのやりとりをしていたものが
中断されていたことを思い出しました。
普段はバイト中にメールを打つことはありませんが
内容が内容で、やることもないので
メールを打つことにしました。
洗い場の前に立ってプチプチ打ちます。
が‥
人が2人いてここまでバラバラはさみしい気がする。
というわけで、カウンターにある2つ目のイスを出動させて
座って食べているヨシオカさんの隣に置いて
背中を向けて座ってメールを書きました。
カウンターは細長いので、足を開いて座るのでなければ
180度で反転する、2方向しか向けないのです。
食事中の人の方を向いて
肉薄しながらメールを打つのも変だから、背にします。
ガタゴトする間、食事中のヨシオカさんは無言。
私も無言です。
なんだか既視感‥(*'ー')
メールを送ってしまって、背を向けてしずかに座りながら
既視感の源泉を探りました。
既視感というか、何か似た状況の話を
ここで私はしたことがある。
…(*'ー')
あれだ(*'ー')
「猫って背中向けて座るよな。」
そんな話をたしか先週しましたっけ。
ああそうか、猫か~(*'ー')。゚
さっき無言の会話が通じたのも
猫を知っている人だからかも知れませんですね。
なんて思ううちに、食事が終わるちょっと前から
ヨシオカさんが喋り始めました。
座り方を反転させて
私も人間の言葉を口にします。
昔の人はきちんとしたお洒落をしていた。
そんな話をしながら、食休みして
片づけやらなにやらして
アルバイト、NORAは帰宅いたしました。