A/D聴き比べ ”WELCOME TO THE REAL WORLD” | walkin' on

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アナログレコードのレビューを中心に音楽に関するトピックスを綴っていきます
 歌詞の和訳や、時にはギターの機材についても投稿します

レコードとCDの両方が揃うことで実現できる贅沢といえば、アナログ(レコード)とデジタル(CD)による同一音源の効き比べ。今回はMr.ミスター(以下MM)の”WELCOME TO THE REAL WORLD”(以下WTTRW)です。


  LPについての投稿はこちらをご覧下さい;

 

 

 

 以前の投稿でウォークマンについて書きましたが、そのウォークマンに入れる音源データとしてCDを買い集める必要が出てきました。

 もちろんストリーミングという手を使えば、わざわざ形に残るCDを入手する必要は無いのですが、それでも、LPを聴いて気に入ったアルバムであればCDも所有していて損はないのではないか、という気になってきたのです。

 

 まして、以前にデジタルリマスター(以下DR)されていない時代のCDにがっかりさせられ、その後LPで聴きなおしてその良さに気づいたというWTTRWであれば、DR済のCDを聴いておくべきではないか‐そんなことを考えながら新宿のタ○ーレ○ードへ足を運びました。

 

 幸い、MMのアルバムは3作見つかりました。そのうちの

このベスト盤を精算していると、レジ係さんがとても申し訳なさそうに、

「こちらのCDは消費税率変更前の価格表示となっておりました。あしからずご了承下さいませ」

 

 

(・_・)

 

 …ええと、10%への引き上げって、たしか2019年だったはず。

  そんなに…

  そんなに売れてへんのかーい(´Д`。)

  いやもう、まるで自分のことのようにヘコみました。

 

 こうして、半泣きで入手したWTTRWのCDと、LPとの聴き比べが実現しました。

CD:SICP 4913(RCA/Sony Music Labels) 2016年製(j国内盤)

 

 

 聴き比べにあたって、いつもはJBL 4307を鳴らしていますが、今回はそれに加えてゼンハイザーのヘッドフォンHD598、しかもリケーブル済(`ー´) ドヤでのリスニングも行いました。

 

 

 今回はあらかじめ予想したとおり、音の明瞭さと迫力においてDR済のCDが圧倒しました。

 このWTTRWはシーケンサーやシンセドラム、シンセサイザーといった機械モノのウェイトが大きく、しかもすでにアナログからデジタルに発音方式が移行した時代の機械モノだけあって、デジタルの録音フォーマットであるCDが有利になるのは当然のことです。

 まして、このCDのDRは2006年に行われたとのこと。DRという手法が成熟(?)を迎えた00年代であれば、現在の音響機器との相性が良いのも全く不思議はないはずです。

 

 一方のLPにも、やや角がとれた太く伸びやかな響きという強みがあります。リヴァーブ(残響)の処理がシビアなぶんどうしても耳当たりが硬めなCDよりも、ヴォーカルメロディが聴き取りやすいLPを選ぶという選択肢も決して的外れではありません。

 

 

 

 

 今回ご紹介するCDは2016年に企画された”AOR CITY 1000”シリーズの盤であり、歌詞、訳詞ともに省かれているものの、東ひさゆき氏による解説がライナーにあります。

 それによると、このアルバムのプロデュースをポール・デヴィリアーズに任せたのはイエス(YES)のコンサートを観に行ったリチャード・ペイジ(ヴォーカル/ベース)が、レコードよりも音の良い音響に感銘を受け、コンサートでのミキサーを務めていたデヴィリアーズにオファーしたのだとか。ほぼ同時期にイエスが、紆余曲折を経てアルバム”BIG GENERATOR”を創りあげたことを考えれば両者の邂逅は決して不思議なことではありません。

 

 また、これは後のアルバム”PULL”のことになりますが、レコード会社RCAがBMGに買収されたことでアーティストのサポート環境が大きく変化してしまい、”GO ON...”のセールスが振るわなかったMMはアルバムの発売を拒否されるという憂き目に遭います。

 1975年のジョン・デンヴァ―以来というUSアルバムチャート首位をもたらした功労者MMであっても、このビッグヒット・ビッグセールスの時代は過酷だった、としかいいようがありません。

 

 

 

 

 ”Kyrie””Broken Wings”の2曲がどうしても目立ってしまいますが、通して聴いているうちに他の曲にも光るところが見つかり、つい繰り返して聴きたくなる、そんな魅力を持ったアルバムです。

 LPを聴けるオーディオ環境がある方はもちろん、DR済のCDを入手してPCのライブラリに加えておき、時間をみてじっくりと、必要に応じてヘッドフォンを使ってでも聴き込んでみる価値は十分にありますので、リアルタイムで聴いた方はもちろん、後追いの若い世代にも聴いてほしいアルバムです。

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