トーキング・モジュレイターなるもの | walkin' on

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アナログレコードのレビューを中心に音楽に関するトピックスを綴っていきます
 歌詞の和訳や、時にはギターの機材についても投稿します

 今回はアナログレコードのレビューをお休みして、ギターのエフェクト(外付け機材)のひとつ、トーキング・モジュレイター(以下TM)についてあれこれ書いてみたいと思います。

 

 先におことわりを。

 ブログを書くにあたり、絵面や見栄えが良くないのでなるべくYouTube動画の貼付をしないようにしているのですが、今回ばかりは音に関する内容なので動画を何点かご紹介する方法をとらせていただきますm(__)m

 

 まず、ジェフ・ベックのファンのみなさまへ。

これですね。

 …ってホースしか見えへんやないかいヾ(~O~;)

 では、全体像はというと

こんな感じだそうです。

 

 リアルタイムでベックを聴いてきた方ならすぐに「あれか!」とおわかりでしょう、そう、"She's A Woman”のアレでございます。

 ギターをより肉声に近づけるべく導入したものの、ある日ピーター・フランプトンが使用しているのをTVで見かけ

パクんなや(#^ω^)

と使用を止めた…というエピソードが知られています。ま、ベックのことですから単に飽きてしまっただけかもしれませんが(^_^;)

 

 

 次に印象深いのはやはり、この曲かと。

イントロの、リッチー・サンボラによるウワウワがTMによるものです。

 この曲におけるTMのウワウワはもはや切ってもきれないものとなり、この曲の続編的な意味合いをもつ"It's My Life”にもしっかりTMをかけたギターが鳴っています。

 

 

 さらに後の年代になりますが、フー・ファイターズの”Generator”でも印象的な、というより一発で分かる使われ方をしています。

 

 

 この、一発であ!とわかる強烈な効果を持ちながら、実はTMというエフェクトはギタリストにあまり普及していません。

 エフェクトのメーカーの数社が常にカタログラインアップに加えてはいるのですが、いつの間にか生産終了していることが多く、定番として長く製造が続くモデルはあまりありません。

 

 理由はいくつかありますが、まず、セッティングが難しいことが挙げられます。

 通常のギター用エフェクトはギターとギター用アンプの間にケーブルでつながれ、効果を加えた音はギター用アンプから鳴らされます。また、エフェクトのオン/オフは演奏中でも切り替えられるよう足踏み式のスイッチで行います。

 

 対して、TMのほとんどはエフェクトの加えられた音をヴォーカル用マイクで拾わなければならず、ギター用アンプからは出力されません。後にはオン/オフの切替スイッチも装備された製品出てきましたが、オンにするとギターアンプから音は出なくなってしまいます。

 これがどれだけ煩わしいか、実際にギターをステージで演奏する機会の無い方には想像しづらいかと思います。

 プロのバンド、しかもスタッフや機材に余裕のあるステージであれば可能なことでも、ほとんどを自前でこなさなければならないアマチュアのギタリストにとっては決してユーザーフレンドリーとはいえないエフェクトなのです。

 

 そんな手間のかかるTMを少しでも使いやすくするべく、かつてデジテック(DIGITECH)社が製造していたトーカー(Talker)という製品はとても優秀でした。

 なんせギターとアンプの間につないで、あとはマイクを用意してトーカーにセットすればTMのかかった音がギター用アンプから鳴るのです。

実演動画はこちらを(英語)

ただ残念なことにこのトーカーは数年で生産終了してしまいました。すでに15年近く前の製品ということもあり現在はなかなか見つからないかもしれません。

 

 また、これは構造上しかたないことでもありますが、TMを通した音は音域がグッと狭くなった、線の細いものです。これは大音量でリスナーを圧倒するロックにとってけっこうな難点でもあり、生々しいギターサウンドからかけ離れた音色はイロモノ的な扱いをされる一因にもなりました。

 

 もっとも、そのイロモノ感を最大限に活用するジョー・ウォルシュのような奇才もいます。

 後のイーグルスのライヴでも定番と化したこの"Rocky Mountain Way”での、中盤のTMソロはハイライトのひとつとなっています。このライヴ動画を見ていただければお分かりのように、スライドプレイ用とTM用の2本のギターを用意し、持ち換えの間にはバンドメンバーに「引っぱって」もらう‐演奏を続けて間を持たせてもらうという手を使っています。

 

 また、意外なところではピンク・フロイドのデイヴィッド・ギルモアが、その名も”Keep Talking”という曲のアウトロ(後奏)でTMを使用しています。

 メガロステージ(超大規模コンサート)の代名詞となったフロイドのライヴだけあってスタッフ、機材共に万全を期しており、通常のギターサウンドからTMへの切り替えもあっという間です。

 

 

 こうして、みんな知っているのにあまり使われないというかなり特殊な立ち位置を確立(?)したTMですが、その強烈な音色にはリスナーの耳と心を捉える魅力があります。

 考えてみれば先に挙げたR・サンボラやフー・ファイターズ(FF)のデイヴ・グロ―ルは温故知新型というか、過去のレジェンドへのリスペクトを持ったギタリストでもあります。

 今後はボン・ジョヴィやFFを聴いて

(久々の登場)

これスゲー!

と夢中になったギターキッズ古いか(^^;)がギタリストとなって果敢にトライし、リスナーを驚かせるようなフレーズを鳴らす‐という連鎖がこれからも起きるのではないかと予想していますし、その点でTMは音楽におけるヘリテイジ(遺産)となりつつある、といえるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 ご意見・ご感想ありましたらお気軽にどうぞ。お待ちしております。